米国とイランとの緊張が高まっていることから、民間航空会社数社は、不測の事態を回避するため中東上空の飛行ルートを変更している。AP通信が報じている。
カンタス航空は、イランとイラク上空を飛行するパース/ロンドン線のルートを変更。飛行距離が長くなることから、乗客は減ると予想され、さらに飛行時間も通常よりも40分から50分伸びるため追加燃料も必要になるとしている。
また、マレーシア航空は「直近の事態のため」として、イラン上空の飛行を変更。シンガポール航空もヨーロッパ便について、イラン上空の飛行を回避すると発表した。
米連邦航空局(FAA)は、航空会社とパイロットに対して、イラク、イラン、ペルシャ湾上空の飛行を禁止する。アメリカとイランとの緊張が高まる中、民間機が「誤認」される恐れがあるためとした。
こうした規制は、民間機が軍事作戦に関与する機体と間違われないようにするための予防的な措置。FAAも「中東では政治的緊張が高まり、軍事作戦の可能性もあることから、米国の民間航空の運航に不用意なリスクを負わせないために規制を発出した」とコメントしている。
FAAに続き、インドの航空当局も同国の民間機がイラン、イラク、ペルシャ湾上空を飛行しないように勧告した。
このほか、カザフスタンのエア・アスタナとSCATは、176人が死亡したウクライナ国際航空の事故を受けて、イラン上空の飛行を中止あるいはルート変更を検討。この事故については、イラン当局はエンジントラブルが原因としているが、カザフスタン当局によると、同国のフラッグシップとなる航空会社エア・アスタナは現在、飛行ルートを変更するか禁止をするかを話し合っている最中。一方、SCATもロシアのインターファックス通信に語ったところによると、飛行ルート変更を検討しているという。
いずれの緊急飛行規制も、イランが1月7日に米軍が駐留するイラクの2つの基地に対してミサイル攻撃を行ったことへの対応。
一方で、カタール航空は通常通りイラク便を運航しているが、「乗客と従業員の安全は最優先事項。イラクの情勢を注視し続けている」とのコメントを発表した。