旅行業界データ分析ADARA、旅行者の行動シグナルを読み解く、そのビジネスモデルを聞いてきた

タビマエからタビナカ、タビアトまで、旅行者のカスタマージャーニーにどのようにアクセスするか。デジタルトラベルのマーケティングでは重要な問題だ。

可視化された旅行者の行動を自社のマーケティングや広告に活かし、収益を最大化する。パーソナライズされた情報を提供することで、ロイヤルティーを高め、アップセールを実現する。いずれもベースとなるのは旅行者のプロファイルデータ。ADARA(アダラ)は、そうしたデータを収集、分析し、将来の行動を予測するサービスを提供している。

旅行業界に特化したデータ分析のスペシャリストだ。そのビジネスモデルについて、同社チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)のキャロライン・コーダ氏に聞いてみた。

「ホテルや航空会社など旅行関連事業者は、ひと目で顧客のことが分かるソリューションを求めている。自社が関わっていないときの旅行者の行動も知りたいと思っている」—コーダ氏は昨年のWiT Japanのセッションで、WiT創業者のイェオ・シュウ・フーン氏の質問にそう答えた。消費者の予約から購入までの行動を把握することができれば、ターゲティングが明確になる。

そうなれば、マーケティングや広告戦略をより効率的に展開することが可能になる。当然のことだが、そのデータ分析にはスペシャリストの力が必要になってくる。

ADARAは現在、データプロバイダーとして世界的な旅行ブランド250社以上とトラベルデータコープ(Travel Data Co-op)を構築。月間8.5億人以上の旅行者プロファイルデータから、旅行パータン、トレンド、行動特性などの分析を行っている。データプロバイダーは、ホテル、航空会社、OTA、レンタカー、空港などの旅行関連事業者から機内Wi-Fiプロバイダーやアメリカではチケット販売会社までもが含まれる。

データプロバイダーは、データ分析の購入者でもある。コーダ氏は「たとえば、航空会社はホテル宿泊者のプロファイルを知りたい。旅行者は航空会社で移動し、旅先でホテルに泊まる。その旅行者のデータは、両社にとって貴重なもの」と説明する。トラベルブランドがデータを共有し合い、その価値も共有するということだ。だから、その仕組をCo-op、「協同組合」と位置づける。

コーダ氏は「それぞれの会社が持つデータを交換することで得られる旅行者のシグナル(兆候)はマーケティングにとって非常に価値のあるもの」と話し、ADARAの存在意義を強調する。

徹底したデータ管理で旅行者の行動シグナルを分析

顧客データは各企業にとって貴重で重要なものだ。さらに、世界的にデータ流出への警戒は強まっている。コーダ氏はこの点について、「データ保護については非常に気を使っている。GDPRにも準拠している。そうでなければ、クライアントはデータを提供してくれない。ADARAでは、データマネージメントシステムを長い時間をかけて構築してきた」と自信を示す。

ADARAが提供を受けるデータは、何を予約して、何を購買して、何を検索しているかなどのオンラインでの行動。「取得するデータは、ユーザーのブラウザクッキー情報やデバイスIDで、クレジットカード情報やパスポート情報など個人特定できるデータは含まれない」。あくまでも旅行中の行動や予約に関連するシグナルに関するデータだ。

旅行行動のデータ分析の価値はパーソナライゼーションとして現れる。クライアンにとって、パーソナライゼーションは、的確なターゲティングを可能にし、ロイヤルティーを高め、アップセールの機会にもなり、収益を最大化するチャンスとなる。一方、それは消費者にとっても役に立つことだとコーダ氏は続ける。「いつもスイート・ルームを予約する顧客に、最安値の部屋を紹介するのは非合理。チョイスが多すぎると、消費者のためにならない」。適切な商品の提案や紹介は予約や購買の手間や時間を省く手助けにもなる。

サプライヤーにも消費者にも価値のあるパーソナライズ

行動データだけで、移り気な消費者の心理を掴むのは難しいことだ。ただ、コーダ氏はWiTのセッションで「次にやりたいと思うことと、実際にすることの違いを計測するのは難しいが、効果的な予測はできると思う」との考えを示した。たとえば、アンダーアーマーというスポーツアパレルメーカーは、消費者が運動によってどのような目標を達成したいかをデータ分析することによって、非常に効果的なマーケティングを展開しているという。

「ADARAのビジネスは旅行業界の発展に貢献していると思っている。ADARAのゴールはクライアントがよりよいビジネスを展開すること。そして、最終的には消費者によりよい旅行体験を提供すること」とコーダ氏。サプライヤーが正しいメッセージを旅行者に送れば、旅行者の恩恵にもつながる。スマートファンひとつで検索、予約、購入までを行うデジタルトラベルの世界で、データ分析の重要性はますます高まっている。

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