観光庁は、訪日外国人旅行者がSNSに投稿した内容を、AIツールで分析する調査を初めて実施した。この調査は、旅行サービスの高度化と、それを通じた地域経済の活性化に向けて、AIツールの導入による効果を検証するモデル事業を実施するもの。
調査対象地域は、訪日外国人旅行者の平均訪問率が低く(1%未満)、延べ宿泊者数が伸び悩んでいる都道府県として、滋賀県を選定。また、調査対象言語は、滋賀県を訪問した者の割合(訪問率)の季節変動が少なくSNSへの投稿数が最も多い言語として中国語(繁体字)を選定するとともに、比較的消費単価の高い欧米諸国の傾向をつかむため英語を選んだ。調査期間は2017年3月23日~2019年6月23日までの27か月。
調査ではまず、認知度(投稿件数)と評価によって観光コンテンツを分析し、認知度が低く評価が高い「隠れた観光コンテンツ」を選定したほか、連携先地域や類似地域との比較において有望と思われる観光コンテンツを選定し、滋賀県の「潜在観光コンテンツ」を抽出した。
英語では「スポーツ」と「美術館・博物館」が近隣府県よりも高い評価
英語における結果では、隠れた観光コンテンツには体験や祭りなど「そこでしか見られない、できない」ことを提供している観光コンテンツが目立つことが分かった。
また、連携先地域(近隣府県)よりも評価が高い滋賀県の観光カテゴリーは、「スポーツ」と「美術館・博物館」の2分野、類似地域において投稿件数が少なく評価が高い観光カテゴリーは、「スポーツ」「名産品」「体験」「祭り」「繁華街・買い物」の5分野であることが分かった。
この分析から、英語での滋賀県の潜在観光コンテンツとして以下の14件を選定した。
このほか、潜在/成熟観光コンテンツの所在地マップも作成。評価が高く投稿数の多い「成熟観光コンテンツ」が大津エリアに集中しているのに対し、評価は高いが投稿数の少ない「潜在観光コンテンツ」は湖東~甲賀エリアに広がっていることが分かった。
中国語では季節性の高いスポーツに関心
次に中国語の結果では、隠れた観光コンテンツには、スキー場が複数挙がってくるなど、季節性の高いスポーツへの関心が高い一方、英語の結果と比較すると祭りの評価はそれほど高くない。
連携先地域よりも評価が高い滋賀県の観光カテゴリーは、「街並み散策」「美術館・博物館」「自然・景勝地」の3分野。類似地域において投稿件数が少なく評価が高い観光カテゴリーは、「スポーツ」「体験」「テーマパーク」「美術館・博物館」「名産品」の5分野となった。
この分析から、中国語での滋賀県の潜在観光コンテンツとして以下の15件を選定した。
また、英語の所在地マップと比較すると、成熟観光コンテンツ、潜在観光コンテンツとも滋賀県の広範なエリアに広がっていることが分かった。
観光庁では、調査結果から、言語によってSNSの投稿傾向に大きな違いが見られるなど、訪日外国人旅行者の中でも関心を持つ観光資源が異なると分析。また、SNSで高い評価を得た観光資源の中には、自治体や旅行業者などの地元関係者が意外に感じる隠れた観光資源がいくつも含まれているとしている。