グーグル、ホテル広告事業で新展開、コロナ禍で宿泊施設にキャンセルリスクない料金体系へ【外電】

グーグルは、先ごろ新たな広告プロダクトの提供を開始した。コストを最小限に抑えつつ、新規予約を獲得したいホテル向けに、低リスクで「グーグルホテルアド」に掲載できるプログラムだ。

すでに2020年4月から世界中のクライアント企業向けに展開を開始した「利用者が滞在した分だけ払う」広告料金体系(旧グーグルホテルアド・コミッション・プログラム)で、すでに数年前から存在はしていたが、これまでは限定的なパイロット版だった。

この新オプションを選択すると、パートナーのホテル各社がグーグルに支払う広告料金は、実際に旅行者が宿泊した分だけになる。予約はしたものの、結局キャンセルした分のコミッション支払いは不要だ。

「周知の通り、コロナ危機で大きく注目を集めたのがキャンセル問題。パートナー企業が負うリスクを我々もシェアし、キャンセル発生に伴うリスク管理を支援したいとの考えから、同プログラムを従来よりも幅広く展開し、強化するべきだと考えた」と、グーグルで旅行広告を担当するグループ商品マネジャー、マイケル・トラウトマンスドルフ氏は話した。

「パートナー企業の事業が成功し、そのユーザーも満足することが、我々グーグルの成功につながる。最終的にリスクマネジメントになるなら、試す価値ありと考えている」(同氏)。

世界各地で、先行き不透明な旅行動向への暗中模索が続いているが、トラウトマンスドルフ氏によると、同社の取引先ホテルの多くが、地域や規模に関係なく、今回の新オプションを利用したグーグルでのマーケティングを開始している。

さらにグーグルでは近い将来、ホテルのキャンセル対策により有効な対応策を打ち出す計画もある。

「こういう状況なので、旅行者の関心が非常に高くなっていることは、お目当ての料金で予約した場合、どのような条件になるのか、(変更やキャンセルに)どこまで柔軟に対応してもらえるのかだ」とトラウトマンスドルフ氏。

「そこで、近々登場予定のサービスでは、すべてのレートについてキャンセルポリシーの説明を充実させる。画面上で常に表示するようにし、フィルタリング機能にも反映させる。もし旅行者が払い戻しや変更ででの柔軟性を重視しているなら、そうした要望に対応しているホテルやレートを選び出せるようになる」(同氏)。

ホテル直販コンサルティング会社Miraiのパブロ・デルガードCEOは、グーグルによる「滞在した分だけ払う」新方式について、「まさに宿泊業界が欲していた内容で、他のメタサーチには例がない。簡単で便利、リスクもなしで、グーグルホテルアドのような成長著しいメタサーチ上に自社ホテルを掲載できる」と評価する。

デルガード氏は自身のブログで、今回の新コミッション方式と、同じくグーグルによるプロパティ・プロモーション・アド(デスティネーションやコンセプト別の検索でホテルがリストの上位に掲載される広告)が揃うことで「ホテルマーケティングにおけるゲームのルールが変わる」と見ている。

「新規需要を開拓するキャンペーンで、宿泊分やコンバージョン分などへのコミッション課金モデルが可能になれば、革命的だ」と話し、以下の理由を挙げた。

  • これまでの「クリック課金(CPC)」方式では不可能だったが、ある程度の利益が確実になる。
  • (宿泊分へのコミッション支払いなら)ホテルのキャッシュフローを好転できる。特に季節による需要変動が大きいホテルにとって重要なポイントだ。
  • CPC方式でのキャンペーン実施につきまとう予算の悩みを解決してくれる。売れた分には一定の利益が保証されているので。売れれば売れるほどよい結果になる。
  • ホテルビジネスでは「滞在分にコミッションを支払う」ことが基本哲学。こうした考えに完璧にマッチしているので、セールスマネジャーや財務担当マネジャーから、キャンペーン実施の許可をとりつける必要がなくなる。ホテルの多くで、コミッションは商品化に必要な経費、CPCはマーケティング経費に区分されているからだ。(この区分方法は間違いだが、現状ではこちらが主流)。

グーグルでは、コロナ危機への対策を念頭に「宿泊分コミッション」方式を世界中で展開するようになったものの、トラウトマンスドルフ氏は「このプログラムをホテル広告商品のスタンダードとして、当面の間、継続することになる」との考えだ。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:Google expands pay-per-stay hotel ad product to quell risk aversion

著者:ミトラ・ソレルズ氏

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