沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)は2020年8月26日開催した定例記者懇談会で、2020年の入域客数は前年比64.5%減の361万人になるとの見通しを発表した。7月29日付の発表では391万人と見込んでいたが、8~9月は「GoToトラベル」キャンペーンが浸透せず、さらに団体旅行のキャンセルも発生していることから当初見通しを下方修正。消費額も前年実績から4940億円減少すると試算した。
定例会見でOCVB会長の下地芳郎氏は、県内事業者の状況について「(稼働は)ホテルは2割、バスは1割にも至っていない」として多くの事業者が雇用調整助成金や金融機関の融資で持ちこたえている実情に触れた。7月には回復の兆しがあったものの、現時点では減少に転じている。OCVBとしては旅行者に自粛を呼びかけるのではなく、withコロナ時代の新たな旅のカタチを示した「旅のエチケット」に添って旅行をしてもらいたい考えだ。
GoToトラベルキャンペーンについては、現在は混乱期であって観光産業にとって「不可欠な事業だと思っている」と強調。「8月の観光ピーク時に効果が得られなかったのは残念」である一方で、「今月、来月で終わる話ではない。観光庁に来年度にも実施してほしいと申し出ている。」ことを明かした。観光事業者のGoTo事業への期待は高く、改めて感染防止を実施したうえ短期的でなく長いスパンで事業継続をしていくことが重要と力を込めた。
状況悪化時は年間消費額減少が5000億円超えに
今後の観光客数の試算で、国内客は8月が前年同月比7割減、9月が65%減、10月が55%減、11、12月が45%と緩やかに回復すると見込むものの、訪日客については、国際線全便運休、クルーズ船の寄港もなしでゼロを想定している。また、沖縄県内での新型コロナウイルスが感染拡大するなど、状況がさらに悪化した場合についても推計。この場合、入域者数は前年比66.8%減の337万人、年間消費額は前年に比べ5110億円減少すると試算している。
那覇空港で抗原検査実施可能に
なお、沖縄県は那覇空港国内線ターミナル1階で「旅行者専用相談センター沖縄(Travelers Access Center Okinawa: TACO)」を運営しているのに加え、8月9日からは那覇空港検疫所支所で抗原検査の実施が可能になった。国内線ターミナル発着口でのサーモグラフィーで発熱が感知された場合、問診を経て必要に応じ唾液検体採取を実施する。
TACOが業務を開始した6月19日から8月24日までの那覇空港における対応件数は、問診が12件、検査機関への案内1件(未受診)、抗原検査実施1件(陰性)、コロナ以外による救急搬送が1件だった。
OCVB下地会長は、今後、新型コロナウイルスが県内に持ち込まれないよう水際対策・検査体制を強化していく方針も示した。全員検査することは現実的でないものの、医療関係者やサービス業関連の一定程度の検査体制は必要との考え。今後の体制拡充の手法が課題とした。
withコロナ時代にIT活用で観光振興
また、県内では8月26日から28日にかけて「JANOG46 Meeting」が開催され、県・OCVBも今年度初となるMICE支援に取り組んでいる。JANOG46 Meetingは、インターネットに関する議論を目的としたボランティアグループで、今回はオンライン会場に加え、沖縄会場を用意。県・OCVBは、開催費用の一部負担に加え、ミス沖縄派遣、かりゆしマスク提供などの支援を行っている。
このほか、9月16日には、観光事業者向けに「ベジタリアン、ヴィーガン、ムスリムなどの多様な食の受入対応オンラインセミナー」を開催。人気スポットの一つでもある旧海軍司令部壕の4K・3Dパノラマ映像をホームページで公開するなど、withコロナ時代でIT技術を活かした観光振興策を進めている。
10月には観光産業の一大イベントであるツーリズムEXPOが開催される予定。withコロナ時代のMICE開催の新しい形を示していく。