ハワイ州観光局(HTJ)は、日本のメディア向けに現地の新型コロナウイルス関連の最新情報と今後の観光戦略について説明した。新型コロナウイル感染者数が再び増加しているオアフ島では、2020年8月27日(現地時間)から2週間のロックダウンが再度開始される。オアフ島でのロックダウンは3月に続き2回目。小売店、レストラン、ジム、ヘアサロンなどはすべて閉鎖し、住民には自主隔離が求められている。オアフ島以外の隣島は対象外だ。
ハワイ州では、州民の安全を守ることを第一に、徹底的な検査と追跡で感染者数を抑えていくことに重点を置く方針で、観光の再開はそのあとになる見通し。HTJ日本支局長のミツエ・ヴァーレイ氏は、今後のハワイへの日本人観光客数の見通しについて「ハワイと同様に日本でも入国後14日間の自主隔離が解除され、日本の危険情報のレベルが下がらない限り、2021年も大変厳しい年になる」との認識を示した。
そのような現状ながら、ハワイでは海外市場は日本から再開していきたい意向だという。今年5月には日本ハワイ友好議員連盟と日本とハワイとの「トラベルコリドー」について議論を始めた。トラベルコリドーとは、政府間の合意の下、相互の旅行者が厳しい検疫なしで相手の国に旅行できるというもの。社会的、経済的に結びつきの強い国同士での実施が見込まれる考え方だ。
また、マウイ島やカウアイ島では、検査を受けたうえで、リゾート内にとどまることを条件として旅行者の受け入れを認める「リゾートバブル」の構想も出ているという。
毎年12月に開催される「ホノルルマラソン」のエントリー受付も始めるなど、海外旅行者の受け入れ再開に向けた具体的な動きも出ている。ヴァーレイ氏は「開催できるかどうかはまだ分からないが、イベントの再開は観光復興に向けた『光』になる」と強調した。
観光再開後は、コミュニティに貢献する意識の高い旅行者の誘致に注力
観光再開に向けて、HTJでは3フェーズからなるリカバリープランを策定している。
今年4月~7月までをフェーズ1、7月~10月までをフェーズ2、10月~12月までをフェーズ3と定め、全フェーズを通じて、消費者向けには安全・衛生対策やハワイの最新情報を提供していく。9月には新型コロナウイルス関連の情報を集約したマイクロサイトを立ち上げるともに、安全ガイドラインの動画を公開する。また、マーケティングではSNSキャンペーンを展開するとともに、参加型のオンライン体験「おうちでハワイ」を継続的に提供していく。
9月からは、パートナーとのバーチャルコラボレーションも強化。各パートナーの体験PRの配信を支援する。さらに、「ウィズコロナでは、少人数グループやプライベートでのツアー需要が高まると予想される」(ヴァーレイ氏)ことから、アロハプログラム・サテライトオフィスとして認定されているハワイのエイチ・アイ・エスおよびジャルパックと協力し、新しいツアー商品の開発にも乗り出す。
一方、旅行業界向けには、新しい業界サイトを立ち上げるとともに、全フェーズを通じてウェビナーを継続的に開催し、オンラインによる教育を強化。今年12月には、日本でリアルイベントとして人気があったもののコロナの影響で延期になった「Hawaii EXPO」をバーチャルイベントとして開催する予定だ。加えて、メディア向けサイトも10月に立ち上げる。
このほか、ヴァーレイ氏は、HTJの上部組織ハワイ・ツーリズム・オーソリティ(HTA)が策定した「戦略プラン2020-2025」についても紹介。自然資源、ハワイ文化、コミュニティ、ブランドマーケテイングの4つの柱を掲げ、コロナ禍以前から掲げているレスポンシブルツーリズム(責任ある観光)の取り組みを加速させる方針を説明した。
ヴァーレイ氏は、「どの層の観光客であっても、ハワイの自然や文化を楽しんでもらいながら、地元のコミュニティとつながるデスティネーションにしていく。日本人がハワイ旅行を楽しみながら、どのような形でコミュニティへの社会貢献活動に参加できるか。そのきっかけ作りに力を入れていく」と、レスポンシブルツーリズム(責任ある観光)の方向性を示した。
そのうえで、現在、大打撃を受けている企業の報奨旅行(インセンティブ)や教育旅行では、小規模グループにターゲットを定めて、営業活動を進めていく考え。また、年齢によるターゲティングではなく、すべてのマーケットで「意識の高い旅行者をどのように誘致できるか検討を進めていく」方針を強調した。