国際民間航空機関(ICAO)の需要回復タスクフォース(CART)は、新型コロナウイルスの拡大による影響を受けて(1)公衆衛生全般と、(2)空港、機材、乗務員、貨物の4分野別で推奨する対策の詳細を取りまとめている。このガイドラインは今年6月に策定されたもので、日本ではJALが、この指針に沿った予防対策を実施することを発表したところ。その概要をまとめた。
ICAOでは新型コロナによる影響で、世界の定期国際線の供給座席数は2020年末に前年比71%減、同旅客数で15億人減となり、航空会社および空港の年間売上減は、それぞれ3140億ドルと1000億ドルに達する可能性があると試算。この未曾有の危機には、航空産業全体がグローバル規模で取り組む協働のフレームワークが不可欠との考えが背景にある。
CARTがまとめたコロナ対策ガイドラインのうち、公衆衛生に関する部分では、まず国や自治体当局や関係各社が協力し、正確かつ簡潔な情報が迅速に伝わる体制が不可欠であるとしている。
旅客のマスク着用については、「顔(鼻と口)をカバーするもの」を着用するべきだが、それぞれの地域当局による公衆衛生ガイドラインに準ずるものとしている。当該地域における感染リスクやマスクの在庫状況、着用によって生じるリスクを考慮すること、医療用の高機能マスクはまず医療従事者やコロナ感染が疑われる症状の出ている人へ優先的に配分されるべき、との考えを示しつつ、状況に応じた最適なマスクの着脱、使用済みマスクの処理、マスクを触った手の洗浄を求めた。
一方、ガイドラインで取り上げた4分野のうち「空港」対策では、ターミナルビル、チェックイン、セキュリティ検査、ターミナルのエアサイド(搭乗客と空港関係者専用エリア)、ゲート施設、降機から到着エリアまで、バゲージ・エリア、出口周辺とランドサイド(一般客も出入りするエリア)の計8項目について、感染防止に必要なオペレーション手法を示している。
ICAOでは、航空産業がコロナ危機に直面する以前から、デジタル技術を活用し、旅客の認証データ管理システムを大幅に刷新する必要性を訴えてきたが、コロナ禍において更なる活用を推奨している。
例えば、到着旅客向けの入国管理や関税手続きでは、人と人との距離を一定以上に保つために、従来の業務プロセスを一時的に変更することも必要と指摘。ABC(自動入国管理)機器や生体認証データを使ったデジタル認証、入国前に旅客から健康情報を提出してもらう仕組みなどを導入することで、手続き時間や待ち時間を短縮し、列が長くなることを回避し、感染リスク軽減につなげるべきだとしている。
同様に、到着客や荷物用カートで混雑するバゲージ・クレーム・エリアについては、消毒や清掃の強化、紛失が起きた場合に荷物の現在位置がすぐ分かるトラッキング・システムの導入、空港からホテルへの荷物デリバリーサービスなど、スピーディで効率的な流れを実現する業務改革を求めている。
また「機材」対策では、搭乗客と乗務員、機内の空気管理システム、機内4エリア(操縦室、旅客キャビン、貨物室、保守点検)における感染防止策の計6項目を取り上げている。