日本では政府主導で「GoToトラベル事業」が進められ、2020年7月22日から10月31日までの間に約3976万泊が利用されるなど、新型コロナウイルスの影響で低迷する国内旅行の需要喚起に一定の効果を挙げている。では、世界各国ではどうか? トラベルボイスは、独自の調査レポート「旅行の需要喚起策に関する海外事例研究」を発表。その内容をまとめた。
国内旅行の需要喚起策、市場向けとサプライヤー向けで
国内旅行促進に向けた財政的インセンティブは、需要サイドの市場向けと供給サイドのサプライヤー向けに分かれる。
需要サイドでは、日本のGoToトラベルのような代金の割引や割引券の配布などバウチャー型や付加価値税(VAT)の減税など財政的インセンティブのほかに、休日を長期化する取り組みも見られる。
一方、供給サイドでは、観光事業者らに対する財政支援、DMOのプロモーションやマーケティングキャンペーンへの財政支援などがある。
需要サイドの実例を挙げてみると、まずバウチャー型について、イタリアでは所得が4万ユーロ(約500万円)以下の世帯に対して、宿泊施設への支払いの際にクーポン額の80%を割引。残り20%は後日税控除を申し込めば、上限500ユーロ(約6万2000円)まで還付される。2020年12月31日までの施策で、予算総額は24億ユーロ(約2975億円)。
タイでは、18歳以上の国民全員を対象に、国内の宿泊費用の40%(1泊最大3000パーツ(約1万400円))、最大5泊分までを政府が負担する。予算総額は500万泊分で、2021年1月31日まで続けられる。
シンガポールでは、観光施設や現地ツアー、ステイケーション(自宅近くのホテル滞在)に利用できる100シンガポールドル分(約7800円)のデジタルパスを18歳以上の市民に配布。予算総額は32億シンガポールドル(約2480億円)で、期間は2021年6月まで。
財政的インセンティブでは減税も
財政的インセンティブの例を挙げると、トルコでは国内航空便にかかるVATを18%から1% へ減税。宿泊施設や関連サービスにかかるVATを0%にしている。
マレーシアでは、宿泊に課せられるサービス税を6%から0%に減税。宿泊施設内で販売されるタバコやアルコールにも適用される。
そのほか、コスタリカでは、2020年から2021年にかけて、すべての祝日を月曜日に変更する法律を制定。週末を長くすることで、国内旅行の促進を後押ししている。
また、レポートでは日本の「COCOA」のような接触確認アプリの世界の状況もとりまとめた。たとえば、ギリシャはPassenger Locator Form(PLF)を開発し、海外からの旅行者に対してインストールを義務化。QRコードを付与することで、スクリーニング検査や行動の把握などで活用している。
このほか、世界各国の状況を取りまとめたレポートは以下からダウンロードできる。
※ユーロ円換算は1ユーロ124円、バーツ円換算は1バーツ3.4円、シンガポールドル円換算は1シンガポールドル77円でトラベルボイス編集部が算出した。