HIS連結決算、最終益250億円の赤字、コロナ禍で国内店舗の統廃合は105拠点に、旅館再生や農業など未来に積極投資へ ー2020年10月期

エイチ・アイ・エス(HIS)の2020年10月期(2019年11月1日~2020年10月31日)の連結決算は、新型コロナウイルスの世界的流行による需要減少で大幅な減収減益となり、2002年の上場以降、初の赤字となった。売上高は前年比46.8%減の4302億8400万円、営業損失が311億2900万円、経常損失が312億8300万円、四半期純損失が250億3700万円だった。助成金収入などの特別利益110億円があったが、臨時休業による53億円を含む特別損失128億円を計上した。

感染拡大防止のための行動制限や経済活動の停滞は、旅行事業のみならず、HISが手掛ける各事業にも大きく影響した。旅行需要の消失はもちろん、ハウステンボスなどテーマパーク事業も延べ56日間の休園や時短営業によって、入場者数は45.6%減の139万人に半減。ホテルも国内はもちろん、国際旅行が困難な状況は海外ホテルにも大きな影響となった。エネルギー事業は、小売販売は順調で2桁増となったが、経済活動の停滞による電力使用量の低下がみられたという。

旅行事業は、特に売上高が50.2%減の3596億円、営業損益は211億円の赤字に落ち込んだ。なかでも海外旅行(日本市場)の取扱高は渡航制限や全方面での企画旅行の催行中止により、67.1%減の1323億円と大幅に減少。四半期ごとの推移をみると、第3四半期(4月~6月)は98.7%減の114億円、第4四半期は99.2%減の98億円で、ほぼゼロの状態が続いた。国内旅行はGoToトラベルキャンペーンの開始以降、徐々に戻り始め、10月には前年の8割にまで回復したが、大きな効果は9月以降と限定的で、通期では54.1%減の281億円にとどまった。

代表取締役会長兼社長の澤田秀雄氏はこうした状況を踏まえながらも、「厳しい状況が続くが、2022年度には2019年度並みに回復すると想定している。来期の第4四半期には80~85%の回復を見ている」と述べ、今後の経営方針を説明。早期の黒字化を目指す方針で、「年度後半には黒字にもっていきたい」と意欲を見せた。

HISの業績回復想定シナリオ:HIS決算説明資料より

そのためにも、まずは財務基盤の安定化を図る。すでにコロナ発生以降、資金確保と赤字の縮小に向け、投資計画の見直しと手元流動性の確保、コスト削減の徹底を開始。コストに関しては中間決算時に人件費や店舗賃料、宣伝費等で200億円削減する方針を示していたが、通期で193億円を削減し、目標の年間1000億円規模(前期1265億円から今期1072億円 )への圧縮を実現した。

HIS店舗数に関しては、前期末時点の259店舗から今期末には47店舗減の212店舗に縮小した。さらに来期第1四半期には154店舗とし、前期末から計105店舗を統廃合する。人員(HIS単体)は、「よっぽどではない限り、リストラしない方針」(澤田氏)で、採用計画の見直しと契約社員の期間終了で、今期と来期の2年間で348人減となる1010人の退職を見込んでいる。

さらに、最適な事業ポートフォリオの構築に向け、収益体質の強化とともに新規事業プロジェクトを推進。新規事業は現在、ホテル・旅館再生や農業など様々な事業に取り組んでおり、「まずは小さく生んで、大きく育てる。目が出たら思い切って投資し、このうち3~5つくらいを将来の柱に育てる」(澤田氏)方針。コロナ後の成長軌道への転換に繋げる。例えば、今年9月に開始した飲食事業「満天ノ秀そば」は既存の2店舗と開業予定の2店舗で様子を見て、良い判断が出れば半年~1年以内に一気に100店舗に広げる考えだという。

セグメント別の業績は以下の通り。

  • 旅行事業:売上高3596億円(50.2%減)、営業損益 211億円の赤字(前期:138億円の黒字)

  ※部門別取扱高:海外旅行 1323億円(67.1%減)、国内旅行 281億円(54.1%減)、訪日旅行 68億円(76.9%減)、海外法人インバウンド 1107億円(39.6%減)、海外法人アウトバウンド 1119億円(7.0%減)

  • テーマパーク事業:売上高 137億円(51.3%減)、営業損益 34億円の赤字(前期:51億円の黒字)
  • ホテル事業:売上高 87億円(31.5%減)、営業損益 36億円の赤字(前期:2億円の赤字)
  • 九州産交グループ:売上高 192億円(13.7%減)、営業損益 21億円の赤字(前期:2億円の黒字)
  • エネルギー事業:売上高 264億円(29.0%増)、営業利益 2億円(83.2%減)

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