2021年を迎え、旅行や観光関連企業・組織のトップが年頭所感や新年の挨拶として事業方針や決意を表明している。そこでは、世界経済に未曾有の混乱と影響をもたらしたコロナ禍に揺れた2020年の振り返り、そこから学んだ2021年に活かすべき課題、観光産業の復活を見据えた事業展開に向けた強い想いが読み取れる。
そのなかで、政府が一丸となって感染拡大防止と観光需要回復のための政策を推進する方針(観光庁長官・蒲生篤実氏)やオールジャパン体制で東京五輪開催や国際交流の再開に向けて取り組みたいとする展望(日本政府観光局(JNTO)理事長の清野智氏 )を説明。一方、観光事業者・企業は、独自の構造改革を推進する考えのほか、デジタル化(DX)の加速なども踏まえた「新たな価値の創造や提案」などに対峙する姿勢が多くみられた。
トラベルボイスでは、読者が各社・各組織の今後の活動方針を読み解くことができるように、原文のまま紹介している。以下、1月3日までに公開された年頭所感を整理したもの。それ以降に公開されたものについては、順次追加・更新する。
行政・観光機関
- 観光庁長官 蒲生篤実氏 ― 政府一丸で観光回復へ、5本柱の政策プランで
蒲生長官は年頭所感で、先ごろ策定した「感染拡大防止と観光需要回復のための政策プラン」に言及。GoToトラベル事業の延長やホテル、旅館、観光街等の再生、インバウンドの段階的復活などの5つを柱に、観光回復へ政府一丸で取り組むことを表明した。 - 日本政府観光局(JNTO)理事長 清野智氏 ―感染対策で安心提供が安定的な回復に、五輪に向け総力を
清野氏は、国際交流の再開時に向けて努力をする業界関係者への敬意を表明。22か所の海外拠点を生かしたプロモーション活動に努め、コロナからの復活と東京五輪の開催に向け、オールジャパン体制で取り組む意欲を示した。 - 日本旅館協会会長 浜野浩二氏 ―GoToトラベルはすべての産業・地方のためにある
浜野氏は年頭所感のなかで、2021年を「試練の年」「回復の年」と表現。コロナ後に力強く踏み出すため、目前の解決すべき問題に取り組んでいることを説明し、「人智を尽くして新しい年に立ち向かおう」と呼び掛けている。 - 日本旅行業協会(JATA)坂巻伸昭会長 ―国際交流の再開へ、役割を全う
坂巻会長は、コロナ禍で観光の役割が改めて認識されたとの考えを表明。東京五輪を、国際交流再開のきっかけとすべく取り組み、新しい旅のスタイルを事業者と旅行者が一体となって作り上げていくべきと述べた。 - 日本海外ツアーオペレーター協会(OTOA)大畑貴彦会長 ―観光業の在り方を再検証すべき、真の双方向ツーリズムを
大畑会長は、ツアーオペレーター業界として今後の観光業のあり方を再検証すべき時との考えを提示。日本政府にも、日本人の海外旅行を支えてきた同業界の現状理解と大胆な政策遂行を要望するメッセージを発している。
旅行会社・OTA・テクノロジー企業など
- JTB代表取締役社長 山北栄二郎氏 ―新しい交流時代を切り拓く
JTB社長の山北氏は、コロナ感染拡大に伴う人々の変化を踏まえ、新しい交流時代を切り拓くための新たな取り組みに挑戦していく意欲を示した。 - HISジャパン プレジデント 中森達也氏 ―新しい旅行業を歴史に刻む年、変化をチャンスに
HIS中森氏はコロナによる深刻な状況が継続しているとの実感を述べながらも、危機を乗り越えることが原動力となると言及。様々な変化を受け入れながら、新たな形を形成する年になると展望した。 - KNT-CTホールディングス社長 米田昭正氏 ―構造改革で専門性磨く、唯一無二の存在へ
米田氏は、近畿日本ツーリスト、クラブツーリズム、KNTコーポレートビジネスの各事業会社やコスト構造の抜本的な構造改革を実施。これにより、自らの専門性を磨き、市場の変化に即応できる唯一無二の存在を目指すとしている。 - 日本旅行代表 堀坂明弘氏 ―デジタル化(DX)加速、「人によるサービス」の重要性は不変
堀坂氏は新しい生活様式下で、コロナ以前からの大きな変化が押し寄せていると指摘。2021年は、従来の旅行業の範疇を超えた新たな事業展開などドラスティックな構造改革を進め、未来へ続く企業へと前進する決意を述べた。 - 阪急交通社代表取締役社長 酒井淳氏 ―DXの象徴的な年になる、ウェブ販売の強化へ
阪急交通社社長の酒井氏は年頭所感で、2021年はDXの象徴的な年になると明言。新たな価値提供を行い、安心安全を担保した旅行商品を提供できる環境を整える大事な年であると述べた。 - 楽天 トラベル事業 髙野芳行事業長 ―サイト開設20周年、前向きな取り組みを地道に継続
楽天トラベル事業事業長の髙野氏は、コロナ禍に見舞われた観光産業が一刻も早く回復するよう、宿泊施設や業界パートナーとともに前向きな取り組みを継続していく考えを示した。 - リクルートライフスタイル執行役員 宮本賢一郎氏 ―宿泊施設の業務支援、旅行回数の増加へ取り組み
宮本氏は今年も、感染症の状況を鑑みながら、国内総旅行回数の増加に取り組む意志を強調。旅行の魅力を感じてもらうことで旅行回数を増やし、旅行業界の活性化に貢献するとしている。 - ヤフー執行役員 津留崎耕平氏 ―送客の最大化に邁進、新しい旅の啓発にも尽力
津留崎氏はコロナ禍に感染拡大防止に努めながら日々の業務にあたる宿泊施設への感謝を示し、宿泊施設への送客最大化に邁進すると言及。感染防止策を徹底した新しい旅の啓発や、安全安心な旅のスタイルの普及にも取り組むとしている。 - 「LINEトラベルjp」ベンチャーリパブリック柴田啓社長 ―ピンチをチャンスに、コロナの副産物を収穫する基盤を築く
柴田氏は、パンデミックが市場の混乱だけでなく、大きな利益をもたらしたことも指摘。旅行市場は以前よりも大きな規模で復活するとの展望を述べた。 - エクスペディア・ホールディングス代表取締役 マイケル・ダイクス氏 ―復興とビジネスの成功をテクノロジーで支援
ダイクス氏は未曽有の年となった2020年を振り返り、困難な状況でも今年、そしてその先の旅行業界の未来を考える機会となったと言及。今後も、パートナー施設の復興とビジネスの成功を、強力にサポートするとしている。 - ブッキング・ドットコム、北アジア地区統括ディレクター、ヴィカス・ボーラ氏 ―五輪の今年は未知のステージ、取扱いサービスの拡充へ
ボーラ氏は東京五輪を控える2021年は、未知の世界が広がるステージになる年と展望。日本のユーザーのニーズにあったサービスと、魅力的な旅行体験の提供に鋭意努力するとしている。 - Trip.comグールプCEO ジェーン・スン氏 — グローカル化をさらに推進、アジア太平洋の観光に大きな希望
トリップ・ドットコム・グループCEOのジェーン・スン氏は、引き続き「グローカル化」を進めていくとともに、旅行エコシステムへの一貫した投資の必要性にも言及。また、コロナ危機後もアジアの成長トレンドは加速するとみている。 - Trip.comグループ日本代表 蘇俊達氏 ―アフターコロナは地域・国内観光の振興に貢献
蘇氏は同社が昨年、無料キャンセル補償やフレックス予約の導入など感染拡大予防への対応に最大限努めたことを説明。コロナ収束後には日本のインバウンド回復に向けた観光振興に貢献していく考えを示した。 - ナビタイムジャパン トラベル事業部長 毛塚大輔氏 ―移動や目的地選定に「新たな価値基準」を提案
毛塚氏は、感染症の拡大で人の移動の仕方が変わり、旅行計画時に必要な情報に変化が生じたと指摘。新たな価値基準を提案して旅行者のニーズに対応するとしている。 - ビジョン代表 佐野健一氏 ―新しいサービスの創り手に、安心・便利・効率化に貢献
佐野氏は、海外旅行や出張の再開めどが立たない状況に不安を感じている同社のユーザーや顧客企業に対応し、各国出入国情報などを発信する海外旅行情報サイトを開設。東京五輪では、訪日客向けサービスを万全な体制で提供するとしている。 - テレコムスクエア代表 吉竹雄次氏 ―通信を通した新たな価値の提供に挑戦
吉竹氏はコロナ禍でもビジネス渡航のサポートを強化する方針を説明。一方で、スマホでの通信とアプリを通したサービスも拡充し、旅行の安心安全と楽しさ、魅力を届けることで、誘客と旅行市場の活性化に努めるとしている。 - リンクティビティ代表 孔成龍氏 ―観光回復後の変化に対応、商品流通をサポート
孔氏はコロナ禍でも、サービス展開を迷わず強化したことを説明。多くの事業者との連携が実現したのは、各社の市場復帰への高い期待感と強い信念があったからと、観光事業者の顧客価値最大化をサポートしていく決意を示した。
航空会社と系列旅行会社・GDS
- JAL代表 赤坂祐二氏 ―地域活性化をポストコロナの事業戦略の柱の1つに
赤坂氏は、コロナ禍と訪日外国人旅行者の激減が、いつまでも続くわけではないと言及。感染症の拡大が落ち着いたら日本各地を訪れてもらうべく、地域活性化をポストコロナの事業戦略の柱の1つとして取り組む方針を示した。 - ジャルパック代表 江利川宗光氏 ―ツーリズム史の1ページを飾る希望の1年に
江利川氏は2021年、東京五輪開催にあわせ、安全安心な海外旅行と訪日旅行を業界一丸で実現することに意欲を示した。世界中で国際交流が制限された中、安全安心な旅の実現によって、日本が主体的に「世界の開国」をリードできるとの信念も述べた。 - ANAホールディングス代表 片野坂真哉氏 -危機を乗り切り、再び成長軌道に戻す一年に
片野坂氏はコロナ禍に見舞われた2020年を、「人の力に支えられた年」と回顧。2021年は、「安全」を第一に、再び成長軌道に戻す年にしていく決意を述べている。 - ANAセールス代表取締役社長 高橋誠一氏 ―「現在窮乏、将来有望」、新体制下で新しい価値ある旅づくりに挑戦
高橋氏はANAグループの事業再編を控える今年、グループの「安心と信頼の品質」にさらに磨きをかけ、新しい価値ある旅づくりに挑戦するとしている。 - アメリカン航空 日本・韓国地区営業本部長 矢島 隆彦氏 ―3月末に羽田/LA、ダラス線を再開へ、本格的な需要回復へ努力
矢島氏は、日本路線では運航中の成田/ダラス線に加え、今年3月末の羽田/LA線とダラス線の再開予定を説明。共同事業パートナーの日本航空との連携で、営業体制や運賃・サービス強化を図り、需要回復へ努力すると述べた。 - トラベルポートジャパン日本支社長 岡安美里氏 ―「セルフサービス」とプロの「ヒューマンサービス」を明確化
岡安氏は、ニーズの変化への対応はもはや当然で、その上で他社と差別化したプロダクトやサービスがあって生き残れるとの認識を表明。常に先を見据え、需要動向やニーズに敏感になってアイデアを出していく意欲を示した。 - インフィニトラベルインフォメーション代表 植村公夫氏 ―コロナ禍での新たな課題にSabre社とタッグで対応
植村氏は、コロナ禍で厳しい状況にある海外旅行だが、業界とともに危機を乗り越え、一日も早い日本市場の回復に向け、旅行流通のプラットフォーマーとしてサポートしていく思いを述べた。 - アマデウス・ジャパン代表 竹村章美氏 ―ポストコロナの「非接触型」時代に貢献
竹村氏は、これからの旅行業界は先を見据えた改革者の集団でなければならないとの考えを表明。ポストコロナの非接触時代に貢献できるテクノロジーを提供し、旅行業界と共に試練を乗り越えていくとしている。