環境省が推進する「国立公園満喫プロジェクト」、体験価値の向上で世界水準の観光地を目指す取り組みと6つの先進事例とは?(PR)

「国立公園満喫プロジェクト」で国立公園を観光コンテンツに(写真は上信越高原国立公園内にある志賀高原、四十八池湿原)

日本の国立公園を世界の旅行者が長期滞在したいと憧れる世界水準の旅行目的地に――。こうした目的を掲げ、環境省が2016年度から取り組んでいるのが「国立公園満喫プロジェクト」だ。国立公園のポテンシャルを十分に引き出し、インバウンド誘客力の強化を目指して、全国で展開されている。

訪日客に日本の魅力を伝えるコンテンツとして期待される、国立公園の魅力を生かした取り組みの概要と事例を紹介する。

「自然環境の保護と利用の好循環」で高付加価値の滞在体験を提供

日本の国立公園は、優れた自然に加え、その自然に育まれた伝統文化や食など、地元特有の人の暮らしに触れられるのが特徴だ。インバウンドに訴求する要素を充分に備えていながら、そのポテンシャルが十分に生かされていないことが以前から指摘されていた。

課題は、日本の観光に関する情報、発信が文化中心で、自然の魅力の発信不足であること。また、外国人目線の施設整備の不足、登山道の荒廃や遊歩道の老朽化、アクティビティやガイドの不足で来訪者の滞在時間が短いことなどが挙げられる。

国立公園満喫プロジェクトは、こうした課題を解決し、プロジェクトのゴールを各公園の観光地域における地域経済の活性化と定めて2016年度からスタートした。地域経済の活性化のために、そのエリア固有の上質な体験価値を求めて来訪する高単価層をターゲットとし、地域全体の魅力を訴求するマーケティングを行っている。

この取り組みに、全国34国立公園の中から選ばれたのが、阿寒摩周、十和田八幡平、日光、伊勢志摩、大山隠岐、阿蘇くじゅう、霧島錦江湾、慶良間諸島だ。これら8公園は、2016年度に「ステップアッププログラム 2020」を策定し、2020年を目標に具体的な取り組みを開始した。のちに、外国人利用者数が上位を占める3公園(支笏洞爺、富士箱根伊豆、中部山岳)が加えられ、11公園に拡大。今後はこれら11公園の取り組みを、全国の国立公園で水平展開することを目指している。

代表的な6つの国立公園の取り組みは以下だ。

事例1:富士箱根伊豆国立公園

富士山を擁する3県連携でラグジュアリーコンテンツを開発

富士箱根伊豆国立公園では、2020年に富士山を擁する静岡、山梨、神奈川の3県が連携し、各県の地元金融機関がバックアップする「富士山ラグジュアリーツーリズムコンソーシアム(通称:Best of the Fujiコンソーシアム)」を設立。ヨーロッパでアルプスを擁する地域が国を超えて参加する観光広域連携「Best of the Alps」を手本に、インバウンド富裕層をターゲットとしたコンテンツ開発に取り組んでいる。

コンテンツはお茶や海産物などの食や、富士山の芸術・宗教的な価値など欧米の富裕層にアピールする文化的な内容を網羅。現地調査やモニターツアーを経て、富士山周辺3県のモデルコース5本を開発した。

2022年度を目途に、県境を超えた富士山エリア全体でのブランド発信、国内外のラグジュアリー層に向けたデスティネーション・マーケティングを行うDMC設立を目指している。

事例2:上信越高原国立公園

雪質を強みに世界的なバックカントリーの聖地へ

上信越高原国立公園内の志賀高原エリアにある宿泊事業者は、これまで主に修学旅行やスキー学校による集客を行なってきた。今後は、パウダースノーの雪質で世界的なバックカントリーの聖地を目指し、長期滞在型のインバウンド客をターゲットにする考えだ。

このため、志賀高原観光協会を中心にデジタル化の推進を行なっている。具体的にはインバウンド向けのウェブサイトを新たに公開し、宿泊予約から決済まで行えるシステム導入を行なった。観光協会が宿泊事業者の在庫を預かり、一括販売を行う形で、観光協会を中心としたデジタルDMO設立の準備も進めている。


事例3:支笏洞爺国立公園

「支笏湖ルール」に基づき環境保全に配慮したプログラムを展開

支笏洞爺国立公園内の支笏湖エリアでは、4年前から国立公園支笏湖運営協議会を中心とした地域の団体によるプロジェクトを立ち上げ、地域全体のまちづくり・観光客誘致を行っている。国立公園満喫プロジェクトとしては、宿泊及びアクティビティ事業者と自治体が連携し、地域全体で個人旅行者をターゲットとしたインバウンド対応に取り組んだ。

具体的には、インバウンド顧客向けのコンセプトワード「Dive into Deep Shikotsu」を打ち出し、環境保全に配慮した支笏湖ルールに基づくアクティビティプログラムを開発。地域の観光コンテンツを統合的に海外発信するプラットフォームの構築や、アフターコロナのターゲットとなる台湾での情報発信などを行なっている。


事例4:阿寒摩周国立公園

屈斜路湖畔にワーケーションもできるグランピングサイトを開設

国立公園満喫プロジェクトによりナショナルパークとしてのブランド化が推進される中、摩周湖と屈斜路湖を擁する阿寒摩周国立公園総面積の約56%を占める弟子屈町は「自然との共存」による観光振興により「選ばれる観光地」を目指し、コンテンツ造成や磨き上げを行なっている。 

「弟子屈ならでは」のコンテンツ造成や磨き上げを行い、2020年8~11月、屈斜路湖のほとりに建つ屈斜路プリンスホテルの敷地に期間限定のグランピングサイトを設置。カヌーやトレッキングなどのアクティビティメニューやワーケーション設備を整え、国内の誘客を図った。


事例5:日光国立公園

奥日光の旧大使館別荘をユニークベニューとして活用

日光国立公園内では、中禅寺湖畔に建つ英国とイタリアの旧大使館別荘を復元整備し、一般公開している。2022年度をめどに、フォトウェディングや貸切パーティーなどが行えるよう改修し、ユニークベニューとしての活用を目指している。

あわせて、奥日光の自然資源を活かし、インバウンド富裕層をターゲットとした自然体験コンテンツの開発を行なっている。2020年に開業した中禅寺湖畔のホテル「ザ・リッツ・カールトン日光」や長い歴史をもつ「中禅寺金谷ホテル」などのラグジュアリーホテルの宿泊者向けに滞在型ツアープランの造成販売を目指す。また、2020年に改組されたDMO日光との連携で、滞在型のインバウンド顧客を獲得したい考えだ。


事例6:霧島錦江湾国立公園

屋久島、奄美群島の3国立公園がタッグ、周遊を促進

鹿児島県で、先行取り組み先として選ばれた日本初の国立公園である霧島錦江湾国立公園に加え、同じ県内で世界自然遺産地域を有する屋久島国立公園と世界自然遺産への登録を目指す奄美群島国立公園の3公園では、自然体験を求める欧米豪の富裕層をターゲットに、それぞれ地域コンテンツの開発や既存コンテンツの磨き上げを行った。

また、これら3つの国立公園を周遊する周遊型旅行商品を造成。販売ツールの制作や海外の旅行会社向けのウェビナーを行い、アフターコロナ時に販売できる環境を構築した。


現在、残念ながら、新型コロナウィルス感染症の世界的大流行でプロジェクト開始時に想定したような外国人観光客の誘客はできていない。しかし、コロナ後に世界で観光が再開されたとき、日本の国立公園が選ばれる観光の目的地となるために継続した取り組みが続いている。

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