JTBは、2022年度3月期第2四半期の連結決算の発表会見で、2021年度通期の見通しについて、最終的に黒字化を見込んでいることを明らかにした。具体的な数値予測については、市場の状況を合理的に判断できないとして、発表を見送ったものの、山北栄二郎社長は「国内旅行需要が一定程度回復し、旅行外事業の需要も拡大している。さらにコスト構造改革も進捗していることから最終利益の黒字化は可能」と説明した。
また、構造改革の一環として、2022年度の新卒採用は見送るが、2023年度には再開することも明らかにした。採用人数は今後検討を進めていく(山北氏)。
通期の部門別の収益については、旅行事業全体で2019年度比30~35%を見込む。そのうち、国内旅行については同60~65%。山北氏は、「GoToトラベルが再開され、感染状況がこのまま落ち着けば、期末には2019年度並みに回復するのではないか」との考えを示した。
一方、海外旅行と訪日旅行については、見通しを示していないものの、「国限定のスタートを想定している。年度内にも動き出すと思うが、限定的だろう」との見方だ。
第2四半期、本社ビルの売却などで67億円の黒字に
第2四半期の売上高は前年同期比38.5%増の1798億円(2019年度同期比73.8%減)。営業損失は前年同期の711億円から331億円に、経常損失も前年同期580億円から260億円にそれぞれ大幅に改善した。純損益は、前年同期の782億円の損失から67億円の利益を計上。これは、本社ビルを含めた複数の不動産の売却などで311億円を特別利益として計上したため。
同社では新中期経営計画のなかで、「ツーリズム」「エリアソリューション」「ビジネスソリューション」の3つのビジネスユニットに再編して、成長戦略を進めているが、第2四半期で旅行外事業の売上高が52%(931億円)となり、初めて旅行事業の48%(867億円)を上回った。
そのうち「エリアソリューション」については、観光地整備運営支援事業やふるさと納税事業などが堅調に推移。売上高は2019年度比64.8%の261億円を計上した。
また、「ビジネスソリューション」では、旅行に関わる事業や人の交流に関わる事業は苦戦したが、企業向け課題解決型ソリューションの需要の取り込みに成功。売上高は2019年度比66.6%の318億円となった。山北氏は「下期では、積み上げ要素になってくるだろう」と期待をかけた。
今期末までに構造改革完了予定
山北氏は、第2四半期の黒字化について、不動産の売却が大部分を占めるが、「痛みを伴う構造改革の進捗も大きい」と話したうえで、今期末までに改革が完了する予定であると説明した。
同社では、スリムな経営体制を目指し、国内グループ会社を2019年度から4社削減。今期末までに計11社を削減する。また、販売機能改革では、国内の店舗数を今期末までに115店舗削減。すでに2019年度期首から第2四半期までに93店舗減少した。
このほか、従業員数は年平均要員数で7200人の削減を目標にしていたが、2021年度上半期までにそれを上回る8170人を削減した。これは、海外旅行需要の低迷によって、海外での従業員を削減したため。一方で、山北氏は今後について「需要の回復に応じて、要員補充は考えていく」と話した。