世界の旅行業界の国際会議「フォーカスライト・カンファレンス」で、旅行系スタートアップがそれぞれのサービスやソリューションを競う「フォーカスライト・イノベーション」が開催された。スタートアップが競う「Summit」部門では8社、既存企業が新しいサービスを発表する「Launch」では9社が最終選考に残り、Summit部門の「最優秀イノベーティブ・スタートアップ賞(Most Innovative Startup of the Year Award)」は「youtip」、「視聴者投票賞(People’s Choice Award)」は「RoomPriceGenie」、Launch部門の「視聴者投票賞」は「UpStay」がそれぞれ受賞した。
最優秀賞:キャッシュレスでチップ払い自動化「youtip」
最優秀イノベーティブ・スタートアップ賞を受賞した米国の「youtip」。チップ支払いのデジタル化を可能にするフィンテックソリューションを開発した。さまざまな旅行者との接点でのチップのやり取りをデジタル化する。開発の背景には、決済のキャッシュレス化が進んでことにある。旅行者が現金を持ち歩かなくなったことで、サービス業の従業員の収入が減少。さらに、顧客との関係性も気まずいものになっている。
CEOのダグ・マイルズ氏は、「このソリューションは、どのような場面でも、ブランドに関係なく、さまざまな設定でチップ払いを可能する」と説明。彼自身、以前はフライトで目的に到着する前にチップ用にATMでキャッシュを下ろしていたが、それが必要なくなったという。
Youtipソリューションと企業の給与支払い、雇用管理システム、業務管理システム、出勤管理システムなどとをAPIで統合。チップ支払いの場面では、すべてQRコードのスキャンで対応する。旅行者はGooglePayあるいはApplePayを選択し、チップ額をインプット。サービスに関するレビュー機能も搭載する。一方、従業員は給与と共に銀行振り込みのほか、デビットカードやさまざまなデジタルウォレットでチップを受け取ることができる。
さらに、地域ごと、個人ごと、部門ごとのトランザクションがわかるダッシュボートも提供する。
視聴者投票賞:独立系ホテルの収益拡大を支援「RoomPriceGenie」
スイスのRoomPriceGenieは、2分で誰でも設定可能な宿泊施設向けレベニューマネージメントを開発。大手チェーンホテルではなく、レベニューマネージメントの専門家がいない独立系ホテルをターゲットにする。COO兼共同設立者のマービン・スペ氏は「独立系ホテルは、ダイナミックプライシングに十分対応できていないため、収益機会を損失している」と開発の背景を説明した。同氏によると、世界で6%のホテルしか自動プライシングシステムを導入しておらず、独立系では2%以下。それによる収入損失は年間で3000億ドル(約34.5兆円)にものぼると試算されているという。
「現在のレベニューマネージメントシステムは専門家向けに作られており。非常に複雑で高価」とスペ氏。げつがく定額制のRoomPriceGenieは、PMS(プライス・マネージメント・システム)やチャネルマネージーに接続し、アルゴリズムによって自動的に対象ホテルの市場を分析。最適な価格を提示する。最初の顧客は81歳のホテル経営者。このソリューションを使って19室を管理したところ、年7万ドル(約805万円)の収益アップにつながったという。現在、すでに約15万軒のホテルが同社のソリューションを導入している。
視聴者投票賞:ホテル予約後のアップセルを個別提案する「UpStay」
イスラエルのUpStayは、ホテル予約後のアップセールをサポート。継続的にホテルの在庫、施設、飲食、体験などを分析し、自動的に最適なプランを予約者に提示する。同社ビジネス開発担当VPのマイナ・ピエトロベリ氏は「さまざまなオプションがあるのにもかかわらず、90%の宿泊者は選択が面倒なため、スタンダードルームを選択している。ホテリアはこれまで機会喪失していた」と話す。
UpStayは、AIアルゴリズムによってリアルタイムで在庫管理、さまざまな角度から関連性の高いオプションを決定し、購入行動を予測したうえで、パーソナライズされたアープセール機会を出発前の旅行者に提案する。
このソリューションを導入したギリシャ・ミコノス島のリゾートホテルでは、年間22万ドル(約2530万円)のアップセールを実現。宿泊者一人平均644ドル(約7.4万円)のアップセールに成功したという。
※ドル円換算は1ドル115円でトラベルボイス編集部が算出