ANAホールディングスは、8四半期ぶりに営業黒字に転換し、第3四半期(2021年10月~12月)単独で営業利益1億円の黒字を確保したことを明らかにした。同社では、第2四半期決算時に第4四半期での営業黒字化を目指すとしていたが、その目標を前倒して達成したことになる。
決算発表の記者会見で、同社取締役専務執行役員の福澤一郎氏は、その要因について、緊急事態宣言が解除された10月以降の国内線需要の回復、過去最高の売上を更新した国際線貨物、固定費の削減や生産性の抑制などのコスト削減効果を挙げた。そのうえで、「人が動けば、営業利益が出せる体質になっている」と自信を示した。
第4四半期については、オミクロン株の感染拡大によって足元の旅客需要は落ち込んでいるものの、国際線貨物は引き続き堅調に推移し、第3四半期終了時点で収支レベルで300億円ほど超過していることから、通期の業績見通しの見直しは行っていない。
福澤氏は「オミクロン株によって、上期終了時点での旅客需要の想定は崩れつつある。第4四半期は厳しめに見る必要がある」としつつも、「2月下旬が需要の底になるのではないか。現時点で3月の予約は落ちていない」と見通し、春先にかけての需要回復に期待感を示した。
なお、同社では通期の連結業績を売上高1兆600億円、営業損失1250億円、計上損失1400億円、当期純損失1000億円を予想している。
ビジネス旅客の減少幅が縮小、第3ブランドは2023年度前半までに
第3四半期(10月~12月)の売上高は、前年同期比30.2%増の3069億円。営業費用を同3.3%減の3067億円に抑制したことから、営業利益1億円を計上した。累計では売上高は同39.9%増の7380億円、営業損失は前年同期から2465億円改善し1158億円、経常損失も2324億円改善し1183億円。純損失も前年同期の3095億円から約3分の1縮小し、1028億円となった。
第3四半期(10月~12月)の国内線旅客については、旅客数が「GoToトラベル」があった前年を15.7%上回る605.7万人となり、売上高は前年同期比22.3%増の946億円となった。福澤氏によると、ビジネス需要の回復が顕著で、上期では2019年比60%減だったが、第3四半期では同30%減にまで回復。一方、レジャーについては75%減から60%減に改善したという。
国際線貨物については、自動車部品や半導体・電子機器、ワクチン等の医薬品を積極的に取り込んだことで、同95.6%増の993億円となり、5四半期連続で過去最高の売上高を更新した。
国際線旅客については、海外赴任・帰任を中心とするビジネス需要やアジア発北米行の接続需要が回復したほか、年末年始の一時帰国需要を取り込んだことで、旅客数・収入ともに前年同期を上回まったが、コロナ以前の1割程度の水準にとどまっている。
LCCピーチアビエーションについては、第3四半期(10月~12月)の国内線の旅客数・収入がコロナ以前の水準を上回り、累計で旅客数は同84.6%増の292万人、収入は同59.8%増の245億円となった。
このほか、福澤氏は今後の事業展開についても説明。事業構造改革の中で打ち出した第3ブランドの航空会社については、「2022年度後半から2023年度前半にかけての運航開始を目指して準備している段階」と明かしたほか、スーパーアプリについては2022年度中のローンチを計画していることにも言及した。