帝国データバンクが実施した2021年の旅館・ホテル経営の動向調査によると、旅館・ホテル業の倒産件数は70件で前年の118件から40.7%減少となり、2000年以来最大の下げ幅となった。これは、金融機関によるコロナ融資や雇用調整助成金など各種支援策が大きな要因。また、休廃業・解散の件数は174件と前年から43件に増加、過去5年で最多となった。
また、2020年度の旅館・ホテル業者の市場動向(事業者収入高、当期純利益ベース)をみると、2020年度の収入高は、前年度の約5.1兆円から約2.9兆円に大幅に減少。営業段階で赤字となる企業が80%を超え、2020年度は最終で6028億円の赤字。雇用調整助成金などの支援効果も薄く、業界の苦境が鮮明になった。
さらに、月商に対して有利子負債(借入金など)が何倍にあたるのかを示す有利子負債月商倍率は、2019年度は全体平均で12.45倍だったが、2020年度はコロナ融資など借入金増加により、同倍率は21.65倍と大きく増加。また、2021年12月時点では30.13倍と30倍を超えた。
業態別内訳をみると、旅館は30.46倍とビジネスホテル、リゾートホテルなどと比べて過剰債務が顕著。また、規模別では、年商1億円未満企業の有利子負債月商倍率が55.56倍と年商規模が小さい企業ほど過剰債務感を抱えていることも分かった。
地域別では、インバウンド需要が旺盛であった京都府、奈良県が位置する「近畿」が52.85倍とトップ。次いで「九州・沖縄」(32.23倍)、「中国・四国」(29.23倍)と続いた。
帝国データバンクでは、かねてから業界の課題といわれる過剰債務の深刻さがより高まり、倒産件数は減少しているものの、倒産リスクが高まっている現状が明らかになったとしている。