米運輸保安庁(TSA)は、公共交通機関でのマスク着用義務を2022年4月18日まで延長すると発表した。当初は、3月18日で義務化は解除される予定だった。延長された1ヶ月の間に、米疾病予防管理センター(CDC)は、感染者数に応じた地域ごとの対策を進めるとともに、新しい亜種に対するリスク評価も進めるという。
CDCでは、現在のところ米国の人口の98%が低程度から中程度の感染リスク地域に住んでいることから、屋内でのマスク着用はもはや必要ないとしているが、その中で行われた今回の延長決定に疑問の声も上がっている。
AP通信によるとホワイトハウスのジェン・サキ報道官は3月10日の会見で、「たとえば、あるエリアから別のエリアに移動する行動の場合は、もう少し考える必要があるだろう。CDCは4月18日までにどうするかを決めようとしている」と述べた。
今回の決定に対して、上院通商科学運輸委員会のトップである共和党のロジャー・ウィッカー上院議員は、「科学的根拠に基づいていない」と明らかな失望を表した。ウィッカー氏のほか30人の共和党議員は、バイデン大統領に対して、マスク着用の義務化と米国への出発前検査の要件を終了するように求めている。その考えは、米国航空会社の業界団体であるAirlines for Americaも同じだ。
一方、コロンビア大学の感染症専門家であるスティーブン・モース氏は、延長は適切という考えを示す。規制が一度解除されると、再び感染が拡大した場合に、それを復活させるのは難しいと警告し、「1ヶ月の延長では十分ではないかもしれない」と述べている。
マスクの義務化は、バイデン大統領が就任後の2021年1月に施行され、その後数回にわたって延長されてきた。その前のトランプ大統領は、公共交通機関でのマスク着用義務に反対していたが、航空会社は乗客の安心を確保するために2020年半ばにマスク着用を義務化した。
TSAは昨年9月、公共交通機関でマスク着用を拒んだ乗客に対して、最大1000ドル(約11万6000円)、違反を繰り返す乗客には最大3000ドル(約34万8000円)の罰金を課した。
その罰則が設けられて以降、航空会社は計6000件を超える乗客とのトラブル事案を報告。そのほとんどがマスク着用に関するものだった。そのため、航空会社は、延長期間が終了すると同時に、マスク着用の要請を止めると思われる。
客室乗務員は以前までは乗客のマスク着用を支持していたが、労働組合である客室乗務員協会によると、今回の決定には賛否両論あり、延長に反対する意見も多いという。
※ドル円換算は1ドル116円でトラベルボイス編集部が算出