スペイン、観光産業の雇用維持に7.5兆円を投入、観光長官が語った、消費額トップの日本人旅行者への高い期待

スペインからフェルナンド・バルデス観光長官が、スペイン観光の現状と今後の展望について説明した。バルデス長官は、「ツーリズムEXPOジャパン2022」の開催に合わせて行われた「日西間観光問題についての覚書」の更新署名のために来日したもの。

バルデス長官は、日・スペインの観光協力について、世界観光機関(UNWTO)の原則に基づいた協力を推進していくほか、観光プロモーションやスマート観光地の開発などでも協力していくと説明。「覚書の更新は、スペインが日本を重要な市場と位置付けていることの表れ。協定に則って、両国の観光関係をさらに発展させていく」と話した。

日本市場は量より質、現地消費額で日本人旅行者に期待

バルデス長官は、スペインのインバウンド市場の現状について、今夏の海外からの旅行者数は900万人を超え、2019年同時期の9割まで回復したことを明かした。そのうえで、2022年は最終的に2019年の8割まで回復する見通しを示した。2019年の海外旅行者数は過去最高の約8300万人を記録していた。

欧州からの旅行者数はほぼコロナ前の水準に回復しているという。ユーロ安の影響もあり、米国からの旅行者も急増しているが、日本からの旅行者は2019年比で81%減。日本の水際対策もあったことから回復の兆しはまだ見えていない。

2019年の日本人旅行者数は約68万人で、全体の0.8%と市場規模は大きくないが、バルデス長官は「日本人旅行者の一人当たりの消費額は平均3000ユーロ(約43万円)で全市場でトップ。日本市場については、量ではなく質を重視している」と話した。また、長官によると、2021年~2022年の調査では、日本人旅行者の7割がスペイン旅行に満足していることから、「今後日本の海外旅行が再開されるにあたって、スペインは有利な立場にある」との考えを示した。

スペイン観光の現状を説明するバルデス観光長官2023年はピカソ没後50周年やスポーツを新たに訴求

スペイン政府観光局日本支局のハイメ・アレハンドレ局長は、日本市場での取り組みについて説明。2023年はピカソ没後50周年にあたることから、ピカソの作品を所蔵している日本の美術館などとも協力して、スペインのゆかりの地を訪ねる旅程の訴求を高めていくほか、歴史遺産やグルメに加えて、新たにサッカーやテニスなどのスポーツをフックとした誘致にも力を入れていく。

また、日本人が好む鉄道旅行、高齢者や障害者も楽しめるインクルーシブツーリズム、コロナ禍で広まったワーケーションなどにも焦点を当てていく計画。さらに、新しいデスティネーションとしてカナリア諸島の紹介にも注力していく考えを示した。

このほか、バルデス長官は、イベリア航空が日本路線を2023年にも再開する見込みであることにも触れた。

持続可能な観光へ転換、人材不足問題はなし

スペインの観光政策を担うスペイン観光推進機関(Turespana)のミゲル・サンス・カステド事務局長は、今後の観光政策について説明。2022年までは回復に向けた取り組みを進め、2023年から2024年にかけては、「環境、社会、経済で持続可能な観光への転換を図っていく」とするとともに、まだ知られていないデスティネーションへの誘客も強化していくことを明らかにした。

スペイン政府は、パンデミックのなか、約34億ユーロ(約4800億円)を投じて、文化遺産の改修、観光資源の高度化、流通のデジタル化など観光産業のテコ入れを行ってきたという。さらに、ホテル、レストラン、交通機関など観光関連産業での雇用維持のために526億ユーロ(約7.5兆円)の公的資金も投入。バルデス長官は「このおかげで、需要が急回復する中でも、必要な人材は確保できた」と話し、ヒースロー空港やスキポール空港などでの混乱はスペインでは起きていないと強調した。

※ユーロ円換算は1ユーロ142円でトラベルボイス編集部が算出

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