世界で拡大する「ウェルネス・トラベル」、市場規模は2025年までに年平均21%増、昨今の動向を読み解いてみた【外電】

金銭的な心配はあるものの、消費者の半分は、これからレジャー消費を増やすつもり。この傾向に収入階層による差は見られない―。こんな傾向が、アクセンチュアがこのほど実施した調査で明らかになった。

なかには、ただ出かけるだけでなく、ウェルビーイング(心身の幸福)につながる過ごし方を探している人もいる。高額所得者層では39%の人が2023年初めまでに贅沢な旅やウェルネス(健康志向)リゾートを予約済みで、ミレニアル世代では21%がウェルネス・リゾートを予約済みであると、同調査レポートは報じている。

調査対象は、世界16カ国・1万1000人以上。健康とウェルビーイングは「絶対に欠かせない」との見方が浮き彫りになり、「自分は一年前よりセルフケアに力を入れている」と答えた人は全体の33%を占めた。

消費者の意識が変わりゆく今、「トラベル関連事業者と消費者向け商材を扱う企業が、エコシステムを連携し、商機を拡大するチャンスだ。地域コミュニティも、他にはない体験を差別化して打ち出すべき」と、アクセンチュアで旅行産業担当の責任者を務めるエミリー・ワイス氏は話す。

ワイス氏は、昨今の消費者にとってのウェルビーイングとは「自分へのご褒美というより、これだけは絶対に譲れない、必要不可欠なことと捉えている。だから経済的に厳しい状況でも、妥協すべきでないと考える人が多い」。

昨今のウェルネス・トラベルとは、「旅行者の価値観とライフスタイルの延長戦上にあるもの」と同氏は説明する。

ウェルネスの時代を歓迎

ウェルネス・ツーリズムの市場規模は、2025年までに年平均21%増で成長するとグローバル・ウェルネス研究所(GWI)では予測しており、ウェルネス志向の顧客向けサービスに特化した旅行系スタートアップや滞在施設もどんどん増えている。

観光産業ニュース「フォーカスワイヤ」が選んだ「2022年の注目スタートアップ25社」の一つ、Vacayouは、ウェルネス・リゾートや体験型バケーションと旅行者をつなぐビジネスを展開している。同社のCEO、ムルヤハル・モンテカルボ(Muirgheal Montecalvo)氏によると、オーガニック・トラフィック数は前年比300%増。2022年1月以降、ウェブサイト利用者が増えており、特にメンタルヘルスに有益な旅行先への関心が目立つという。

「旅行を再開すると同時に、以前より健康的な過ごし方を模索するようになった」と同氏は話す。「自分自身のケアや健康に良いことに、もっとお金を使うようになり、同じ傾向が旅行にも出ている」。

モンテカルボ氏がVacayouを創業したのは2019年だったが、パンデミックの影響で、サイトの稼働は2021年6月からになった。2022年10月には、リクエスト予約も開始した。

同氏によると、ウェルネス・トラベルが意味する内容は十人十色、ある人にとっては、ハイキングや自転車の旅、別の人にとっては、週末のスパやヨガ体験となる。また多くの場合「国立公園など、広々とした野外で過ごすこと」を考えていて、「新鮮な空気の中で過ごすバケーションが求められている」。

パンデミック以前は、ウェルネス・トラベル=体重を減らす旅、という誤解を解くのが大変だったというモンテカルボ氏。コロナ禍は「ウェルネスや健康志向の休暇を過ごすことがいかに大切か、関心を高めるのに役立った」という。人々は「もっと身体を動かすようになり、自分自身を大切にするようになった」。

だが、ウェルネスへの関心が高まるなかで、これに便乗した「見せかけだけのウェルネス」がホスピタリティ産業でも横行することに、モンテカルボ氏は警鐘を鳴らす。

「ヨガのクラスを開催しているからウェルネス・ホテル、という訳ではない」と同氏。「我々は、宿泊施設が本当の意味でウェルネス施設であるかを、納得できるまで、厳しくチェックすることが重要だと考えている。特定のホテルチェーンの名前を挙げることはしないが、自称ウェルネス・チェーンを名乗っているが、実際には違うところはある」と指摘する。

空港の乗り継ぎ時間、安らげる場所を探して

ヘルス&ウェルネス志向は、空港での乗り継ぎ客向けサービスでも見られる。

乗り継ぎ便を待つ間、空港で過ごす3~4時間にも「ポジティブな気分転換」を求めるようになった、と話すのは、Sanctifly創業者兼CEOのカール・レウェリン氏だ。

Sanctiflyは2016年に創業した会員制アプリで、ビジネス客や観光客向けに「国際空港の周辺5マイル以内にある、あなたのためになるところ」、例えばジム、プール、スパ施設などを紹介している。利用客の60%は出張者を抱える法人会員、40%は個人会員だ。

2022年8月と9月は、これまでで最も忙しい月となり、前年同期比で500%増、2019年比でも150%だったとレウェリン氏は話す。

「空港ではゆっくり過ごしたい、だからビールとハンバーガーを、ではなく、空港でのリラックスタイムも自分に良いことを、というのが当社の考え方」と同氏。パンデミック以前、空港ではラウンジに行く人が60%を占めていたが、今ではわずか35%だという。

Sanctifyのアプリからの質問は、どこに行くのか?時間はどのぐらいある?何を希望する?など。ユーザー側は、「リラクゼーション、補給、エネルギー活性化、ウェルネス、フィットネス/ジム、サンクチュアリ」の計6項目ある“ムード”の中から一つを選ぶ。

このうち、サンクチュアリという選択肢は、パンデミックをきっかけに登場した。

「『広々としたスペースのある場所は? 混雑しているところは避けたい』という質問が多くなった」ことが理由だ。このアプリは、空港内で「荷物を預けて、ランニングし、戻ってきてシャワーを浴びる」ことが可能な場所を探してくれる。

ちなみに、世界中で最もSanctiflyが利用されているマーケットは米国で、その一因がフライト遅延だとレウェリン氏は見ている。

「旅程に予期せぬ混乱が生じることは、当社にとってはビジネスチャンス」と同氏。「空港で6時間あったら、ぜひ当社を利用してほしい。ロサンゼルス国際空港やJFK、アトランタでどう過ごすのが良いか、我々以上のアドバイスができるところはない」。

「当社の考え方は他とは違う。乗り継ぎ便まで6時間もあるなんて、すごい!ニューヨークでの6時間(もちろん他の都市でも)を最高に充実させましょう、とね」。

ホスピタリティ・ヘイブン

コロナによる渡航規制が解除されたとたん、「旅行者たちは、自分のためになり、健康的で、心身共に豊かになる過ごし方を探し出した」と話すのは、ザ・リトリート・コスタリカ創業者兼オーナーのダイアナ・ストーボ氏だ。「ゲストの多くは、当社プログラムの中でも、より結果を重視した内容(フィットネスや癒しを中心としたもの)を予約している」とし、同様の傾向は、他の宿泊施設でも見られると言う。

リトリート・コスタリカでは、28~35歳の女性からの予約が大幅に増えたほか、男性利用客も伸びている。ウェブサイトへの直接予約がほとんどで、クチコミやオーガニック検索による効果だとストーボ氏。

「パンデミックの間、私たちは皆、クオリティ・オブ・ライフについて考えるようになり、様々なライフスタイルの価値を吟味した。そしてセルフケアや、もっと健康的な暮らし方のメリットに気が付いた人が多い」(同氏)。

もう一つ、ストーボ氏が挙げたことは、瞑想やレイキ(霊気)療法など、非接触型サービスへの需要が高まっていることだ。

「当社のブランド、認知度、ビジネスは順調に伸びている。とはいえ、今の景気動向は要注意だ。状況をよく見極めながら、必要なことには出来る限り対応していくつもりだ」。

一方、ソネバ(Soneva)の共同創業者兼CEOのソヌ・シブダサニ氏は、ウェルネスをより広く解釈した同社のコンセプト「ソネバ・ソウル」について、「ライフスタイルの進化」を提案するものだと説明。「2021年末のスタート以降、非常によい手応えを得ている。これまでとは違う次元で、ゲストがウェルビーイングを重視しているという我々の見方は正しかったと強く感じている」。

パンデミックを契機に、多くの人々が立ち止まり、自分にとって価値のあるもの、優先順位を考えるようになったとシブダサニ氏は話す。

ソネバ・ソウルでは、エクササイズ、休息、人間関係、食習慣などに関するプログラムに加えて、「海外の専門家や医療関係者から、最新の革新的な療法や施術機器」について話を聞く機会も用意している。

モルディブでは、パンデミック中も渡航制限がほとんど課されなかったため、ソネバ・ソウルには過去2年間、多くのゲストが海外からやってきたという。なかでもインドなど近隣諸国からの利用客は爆発的に増加した。

「また、これまでモルディブといえばハネムーン客が中心だったが、ファミリー客層への転換が大きく進んだ」とも同氏は指摘している。

「家族や友達と久しぶりに集まる旅行も、非常に多くなった。ソネバ滞在客も、複数の世代で一緒に旅行する方が目立つようになった」。

2019年に開業したメキシコのラグジュアリー・ウェルネス・リゾート、「パルマイア-ザ・ハウス・オブ・アイア」でも、ウェルネス志向の滞在を求める家族客が増えたと話すのは、同リゾートで米国東地区を担当するシニア・ウェルネス・マネジャー、ケリー・ホワイトヘッド氏だ。

パルマイアでは、特にベジタリアンやヴィーガンの利用客からの利用が多く、植物系食材を使った「グルメ体験」がお目あてだ。そのほか、子供たちをパルマイアのウェルネス・プログラムに参加させたいと考える家族客も多い。

こうした旅行者や家族連れのニーズを満たすためには、「顧客ごとに体験内容をカスタマズしたり、キュレーションしたりする必要があるので、テクノロジーが役に立つ」とホワイトヘッド氏は話した。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:WELLNESS TRAVEL ON RISE AS CONSUMERS PRIORITIZE HEALTH

著者:Kathryn Walson 

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