ホテル関連データを提供するSTR社と、欧米で活況となっている民泊など「短期レンタル」のデータ分析を行うAirDNAが最新の宿泊業界トレンドを共同レポートとして発表した。それによると、レジャー旅行者獲得をめぐるホテルと、短期レンタル間の競争が激化。両者の価格差が縮まることで、都市部では短期レンタルがホテルに遅れをとる状況になっている。
短期レンタルとは、英語で「Short-term rental」と表記する宿泊・滞在形態のこと。家具付き別荘など、滞在そのものも楽しめる施設が多い。厳密な定義はないものの、おおむね数日から2週間などの複数日数宿泊が一般的で、1ヶ月未満が多い。いわゆるバケーション・レンタルや民泊での滞在も含む。概念で考えると、短期レンタルは「泊まる」というより、「滞在する」というほうがふさわしい形態といえる。
リポートによると、パンデミック中は、米国の短期レンタルは、その利用しやすさから、ホテルよりも早く回復。特に、2020年夏の沿岸部および山岳地域でのバケーションレンタルなど短期レンタルのシェアは、宿泊施設全体の17%を占め、過去最高を記録した。
その後、ホテルは、レジャー客の需要を取り戻すために、都市部に戦略を集中。その結果、大都市では短期レンタルの市場シェアをパンデミック前の水準まで押し戻した。
AirDNAリサーチ担当副社長のジェイミー・レーン氏は「パンデミック中、短期レンタルは、感染対策においてホテルよりも優位性を持っていたが、2022年になるとホテルは価格競争力を高め、ホリデー需要を獲得してきている」と分析する。
大都市でホテルが優位、地方では短期レンタルが成長か
2020年、大都市では短期レンタルは需要が激減したため、その供給は2019年を17%下回るまで下落。特に、規制が厳しいニューヨークやサンフランシスコなどは25%も供給量が減少した。共同リポートによると、大都市では短期レンタルがパンデミック前の供給水準に戻る可能性は低いと指摘している。
一方、ホテルは公的な補助金によって支えられたため、撤退を回避。そのため、2022年に需要が回復し始めると、一気に息を吹き返してきた。
STRの分析担当副社長のアイザック・コラゾ氏は「将来的には、ホテルの供給は都市部と郊外で伸び、沿岸部や地方では、ホテルの参入障壁が高いため、短期レンタルが成長していく可能性が高い」と話す。
STRが1000人以上の旅行者を対象に実施した調査によると、ホテルの宿泊客よりも、短期レンタルの宿泊客の方が費用対効果が重要な要素と考えていることが分かった。
一般的に短期レンタルはホテルよりも割安という考えがあるが、大都市におけるホテルと短期レンタルの価格差は2019年の42.9%から2022年には26.6%にまで縮まった。また、その差が10%ある都市部や沿岸部のリゾート地を除いて、ホテルは短期レンタルよりも低い料金を提供している。