米国の国内線が運航停止の大混乱に陥ったのはなぜか? 連邦航空局のシステム誤作動、その顛末と今後の影響【外電】

2023年1月11日(現地時間)、米国の国内線は大混乱に陥った。原因はNOTAM(Notice to Air Missions)と呼ばれる航空安全情報システム。ほとんどの旅行者にとっては初めての言葉で、これほどの障害を引き起こすとは考えもしなかったに違いない。AP通信が報じた、その原因や航空業界の反応などをまとめた。

NOTAMとは?

NOTAMは、パイロットや航空会社の運航管理者などに向けてフライト前の安全情報をまとめたもの。ルート上の悪天候の可能性、空港での滑走路と誘導路の変更、避けるべき空域など詳細な情報が提供される。

このNOTAMを配信する米連邦航空局(FAA)のコンピューターシステムが機能停止したために、全土のフライトが一時的な運航停止に追い込まれた。フライト追跡サイトFlightAwareによると、全米で1300便以上が欠航し、東海岸ではその日の夕方までに9000便以上が遅延した。

NOTAMは、海上での危険性を船長に警告するシステムをモデルとして、航空では1947年に始まった。最近では、その通知は紙からコンピューターに切り替えられているが、現在でもアップデートが進行中だという。パイロットは、情報を確認するまで離陸することは法的に禁止されている。

運航停止の経緯は?

ほとんどの航空会社は、FAAからNOTAMを取得。フライトごとにパッケージ化された情報を受けている。今回のケースは、FAAのシステムが誤作動したために、そのサービスが受けられなくなったことから発生した。

FAAのシステムは東部時間の1月10日午後8時28分に停止。その時間帯は出発便が限られていたため、パイロットは口頭でNOTAM情報を受けて離陸したが、夜が明けても、システムは回復せず、個別での口頭説明が可能な便数をはるかに超えていた。FAAは11日午前5時ごろにメインシステムを再起動したが、全ての情報を検証し、利用可能を確認するまでに時間がかかったため、FAAは全フライトの停止を命じた。

米政府の対応は?

ピート・ブティジェッジ運輸長官は、NOTAMは常時アップデートされているとしながらも、「安全性の懸念は何であれ許されない。我々は原因究明に全力をあげている」と述べた。一方、下院運輸委員長の共和党サム・グレイブス委員長は「NOTAMの誤作動は受け入れ難いこと。運輸省とFAAが航空管制システムを適切に維持・運用できなかった結果だ」と非難した。

アメリカン航空の元航空業務担当上級副社長で現在はミネアポリスのコンサルタントであるティム・キャンベル氏は、「これまでも局所的には問題があったが、今回のケースはかなり深刻なもの」との見解を示したうえで、NOTAMシステムだけでなく、FAAのテクノロジーシステムの老朽化にも問題があると指摘した。

昨年可決された超党派のインフラ法では、空港に250億ドル(約3.3兆円)、航空管制施設に約50億ドル(約6500億円)が充当されることになっている。しかし、ブティジェッジ運輸長官は、NOTAMの改善は、新たなFAAの資金調達法案を待つ必要があるかもしれないとの考えを示している。

今回の事案の責任がFAAにあるとしても、航空会社が払い戻しや補償に応じることになるだろう。米大手航空会社は、11日あるいは12日のフライトの変更手数料を免除した。一方で、政府は利用者に払い戻しを行うための財源を確保すべきだという声もある。

サウスウエスト航空は、クリスマス休暇の期間に、乗務員スケジューリングシステムの混乱によって、12月の最後の10日間で約 1万7000件のフライトがキャンセルされた。議会は、その技術的な問題について究明する予定だったが、今回明らかになったNOTAMの送信システムとバックアップシステムの不具合も、その一連の原因究明に加えられるだろう。

※ドル円換算は1ドル130円でトラベルボイス編集部が算出

みんなのVOICEこの記事を読んで思った意見や感想を書いてください。

観光産業ニュース「トラベルボイス」編集部から届く

一歩先の未来がみえるメルマガ「今日のヘッドライン」 、もうご登録済みですよね?

もし未だ登録していないなら…