アマデウスは、旅行会社の本音を探る匿名・覆面座談会を開催した。コロナ禍を通じて、旅行者の意識が変化し、そのニーズも変容しているなか、旅行会社が目指すべき姿とは?座談会は2回にわたって開催。トラベルボイスも協力した。本記事では「これからの旅行者に求められる旅行会社とは?」をテーマにOTAを含む旅行会社が交わした意見をレポートする。
過去20年間で変化してきた販売方法
まず、各社、過去20年間の販売方法の変化について説明した。
老舗旅行会社は「商品に著作権はないので、簡単に真似される。だから、比較されないもは何か考え、その要素をパッケージに入れた」と明かす。特別感で差をつけると、催行率も上がり、単価も上昇したという。
OTAは、過去20年間での日本社会でもITリテラシーが向上したことについて触れ、「旅行でもデジタル化、モバイル化が進んだ。過去5年くらいでスマホでの予約が増えた」と話した。また、宿泊施設については、稼働率だけでなく、レベニューマネージメントの考え方を啓蒙し、「もっとアップセールに力を入れませんかと話をしている」という。
格安航空券の販売から業務渡航にビジネスモデルを転換した旅行会社は、20年間のテクノロジーの進化のなかで、航空会社の直販やOTAの影響を受けているとしたうえで、「BtoBは、BtoCよりもオンライン化は遅れている。コロナ禍でシステム開発に投資し、デジタルファーストの仕組みに変えているところ」と説明した。
超高齢化社会、旅行会社は何ができるのか
今後、日本は超高齢化社会を迎える。一方で現役世代の年代が上がり、旅行に積極的な世代も上がると予想されている。そのなかで、高齢者マーケットへの取り組みは新たなビジネスチャンスとも言える。
老舗旅行会社の顧客層はそもそも年齢層が高いが、「高齢者の旅行のピークは70~75歳。70代で海外旅行を卒業し、80代から国内旅行に変わる」と話す。同社ではリピーターも多いため、国内旅行も行けなくなった人のために、コンサートなどのイベントも企画。また、生活関連の事業も行い、これまでの顧客との接点を活かし、さまざまな紹介ビジネスも展開していると説明した。
業務渡航系旅行会社は、「会社を定年退職した人は今のところは追わない。旅行に行かなくなった後は、旅行会社だけの戦いではなくなる。新しい価値やコミュニティを作れるエージェントが出てくるのでは」との考えを示した。また、OTAは「高齢者は国内旅行のパイを取っていくため大事な市場」との認識だ。
パッケージツアーはどうなる
日本の旅行市場は、国内も海外も成熟度を増し、個人旅行化が進み、旅行テクノロジーの進化によって、その勢いは加速している。その変化する環境のもとで、募集型企画旅行(いわゆるツアー)は今後どうなっていくのだろうか。
業務渡航系旅行会社は「企画性重視のツアーはなくならない。フリープランは、募集型企画旅行の法的縛りがなくなれば、もっと自由なツアーにできるのではないか」と話す。
OTAは、レガシー旅行会社とはビジネスモデルは異なるが、「ダイナミック・パッケージは強い」と話す。キャンセル率が低く、単価は高く、連泊も多いことから、OTAにとっても、宿泊施設にとっても大きな収益源になっているという。
老舗旅行会社は、「ますます専門特化したものになるだろう。そのなかで、顧客同士を繋げて仲間づくりをしていくことが大切になると思っている。そのためには、顧客データをつなげていくことが必要になる」と話し、旅行もホスピタリティ産業のひとつとして位置付けた。
求められるサステナビリティへの取り組み
最後に、議論は今後の旅行キーワードのひとつであるサステナビリティに移った。社会的要請として、旅行業界でも無視できないテーマ。消費者のSDGsへの意識も高まるなか、旅行会社もさまざまな取り組みを始めている。
業務渡航系旅行会社は「企業の関心も高まっているが、現実的に何かが変わったというところまでは至っていない。現状は、旅行会社にどのような影響が出るのか注視しているところ」と本音を漏らす。
OTAは、特に若い世代の意識が高いとしたうえで、プラットフォーム上でCO2排出量削減の見える化などを展開していると説明。一方で、宿泊施設への啓蒙活動も進めているとした。
老舗旅行会社は「顧客も理解し始めた。自分が支払ったお金がどのような社会貢献に使われているのか、関心は高まっていると思う。それを見える化する取り組みも増えてきた」と明した。
時代の変化に合わせて、旅行会社も変化せざるを得ない。その時代の変化は早く多様だ。旅行者のペルソナも一筋縄では括れず、ターゲティングも難しい時代。旅行会社は今後、どのように進化していくのか。模索は続く。
もうひとつの座談会テーマは、IATA (国際航空運送協会)が推進する航空券流通データの新規格「NDC」。後日、紹介する。