近畿日本ツーリスト、過大請求問題で中間報告、不正請求額は3年間で約16億円に、現時点で86自治体との取引で可能性

近畿日本ツーリストは、2023年4月12日に公表した自治体などからの受託事業における過大請求について、緊急社内点検の進捗状況を説明した。西日本支社関西法人MICE支店による東大阪市の過大請求事案など、精査中の対象も含めて、現時点では86自治体で過大請求の可能性があり、その総額は約16億円にのぼることを明らかにした。これは、3年間の新型コロナ関連受託事業の総額約1300億円の約1.2%に当たる。

同社の髙浦雅彦社長は会見で今回の事案を謝罪するとともに「社長として監督責任を痛感している。調査委員会の調査結果を受けて再発防止策を構築し、信頼回復に努めていく」と話した。同社では、自治体側の精査を経て、過大請求額が確定次第、ゴールデンウィーク明けから返還を実施する。

緊急社内点検の対象となったのは、2020年4月1日から2023年3月31日の期間、同社が取り扱った762自治体などからの受託事業2924件。この中には民間企業や学校なども含まれる。

過大請求額の内訳は、担当者が受託数と差異があることを認識していたものが約5.8億円。このうち関西法人MICE支店による請求額が最も多く計約4億円。静岡支店が約6900万円。その他9自治体の合計が約1.1億円。その他の自治体名については、金額を精査中で自治体側の了解を得ていないことから、公表は控えた。

また、事務処理における誤謬、証憑など不備により同社において一旦過大請求と分類したものを最大約10億円と見積もっている。このうちの7割近くが、コロナ罹患や濃厚接触者の認定で再委託先の要員不足が生じた際、同社社員が代わりに従事したものの、それを合理的に証明する証憑がないことだったという。「一つ一つの差異の付き合わせには時間がかかる」(髙浦社長)ことから、最終的な金額の確定は先になる見通しだ。

緊急社内点検の進捗状況を説明する髙浦社長(中央)

原因は法的知識の不足と、営業目標の達成意識

原因について、髙浦社長は、新型コロナ受託事業契約に対する知識不足と営業目標達成意識を挙げたうえで、法的な知識不足については「通常の旅行の受注型と同じ感覚でBPO事業を考えていたのが一番の理由」と説明した。

このほか、請求額の改ざんについては関西法人MICE支店の東大阪市への事案以外は確認されていないと説明。同支店の支店長は事案を把握後1年に渡って黙認していたが、他の支店については一斉点検のもとで事案を把握・報告したとして、髙浦社長は「組織ぐるみの不正ではない」と強調した。

今回の不正については、親会社のKNT-CTホールディングスが4月17日付で外部専門家らによる「調査委員会」を設置。今後、過大請求の事実認定および同社における点検プロセスの妥当性の評価、発生原因の分析と再発防止策の提言準備を進めていくとしている。

5月8日からは新型コロナが5類に移行し、旅行需要の回復が期待されるタイミングでの不正発覚ついて、髙浦社長は「旅行業界に対しても、起こしてはならないことを起こしてしまった」との認識を示したうえで、「(今回の事案によって)個人旅行、団体旅行の予約や足元のオペレーションにも一部影響が出ている」ことも明らかにした。

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