中国の経済活動再開が遅れる中、東南アジアの観光市場においてインドが成長市場として重要なポジションを取り始めた。東南アジアの観光市場は過去10年間、中国に依存してきたが、東南アジア4カ国の最新データによると、2023年5月の中国人観光客数は2019年同月比で依然として約60%減で回復が遅れている。
一方、アジア開発銀行は、5月の報告書の中で、インド市場について、国内空港の削減によって接続の利便性は減少しているものの、今後10年間、アウトバウンド旅行の成長では第二の中国になる可能性があると指摘している。
観光が主要産業のタイでは、インド人旅行者の絶対数は、中国人よりも少ないとはいえ、2019年比ではわずか約14%減。タイ国政府観光庁によると、2023年のインドからの旅行者は160万人を見込んでいるという。
シンガポールでは、5月の訪問者数はインド人が中国人を超えた。また、インドネシアを訪れた中国人は6万4000人強だったのに対し、インド人はその数に迫る約6万3000人だった。
インド/東南アジアの航空路線は9割回復
タイ国際航空のチャイ・エムシリCEOは「インド路線は非常に好調だ」とコメント。同航空は現在、中国線を週14便(パンデミック前の約40便から減少)、インド線を週70便運航している。
エアバス機を500機以上新規発注したインドのLCCインディゴは、8月にジャカルタ線を開設し、さらにシンガポール線を増便する予定だ。同社によると、中国と東南アジア間の定期便の座席供給率は、6月時点で新型コロナウイルス感染拡大前の水準を57%下回った一方、インドから東南アジア行きの便は約90%まで回復したという。
東南アジアで45軒のホテルを運営するマイナーホテルズの回復を支えているのはインド人旅行者。同社ディリップ・ラジャカリエCEOは、「インドはトップ市場の一つ。インド全土でマーケティング活動を強化している」と明かした。
インドのオンライン旅行「リアトリップ」によると、2023年1月から6月にかけてインド発バンコク行きの航空券の予約は2019年の同時期と比べて270%急増した。
タイ中央銀行は、2023年のタイへの観光客数は2900万人、2024年は3550万人と予測。2019年の約4000万人には及ばないものの、その回復は全体の経済成長率を2023年で3.6%、2024年で3.8%押し上げると予測している。
そのためにも、タイにとってインド市場は重要になってくる。タイ観光協会副会長のソムソン・サチャピムク氏は「タイの旅行業界は、インド人の食とエンターテイメントの嗜好を理解する必要がある。タイには多くのものを提供できる素材がある。大きなチャンスだ」と述べている。