第2回となる「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に関する関係省庁対策」の会合が2023年9月29日に開催された。
観光庁が事務局、観光庁長官が議長を務め、構成員として内閣官房、警察庁、デジタル庁、文化庁、環境省、国交省から鉄道局長、自動車局長、海事局長、港湾局長、航空局長らが省庁横断で多角的な視点から議論をすすめているもの。今回の会議には、オーバーツーリズムが顕在化する3つの地域(京都市、美瑛町、鎌倉市)の関係者から地域の実情についてヒヤリングを実施した。今回参加した3地域は、これまでも課題に対応してきたものの、解決には至っていない。
北海道・美瑛町では、美しい畑の風景が撮影スポットとなり、観光客が集中。農地や私有地への無断立ち入りが問題となっており、マナー啓発を進めている。神奈川県・鎌倉市では、江ノ電をはじめとする交通混雑、アニメの聖地として知られるスポットでの写真撮影による混雑・マナー違反が頻発している。江ノ電では、住民に対する優先改札の実施しているがホーム延長などの改修ができない中、抜本的な解決には至っていない。
京都市では、有名スポットへの観光客の集中が続いており、マナーを周知する「京都モラル」や市民に対する観光啓蒙など継続している。
会議では、観光庁から施策の整理と具体例、各関係省庁からは施策案が提示され、意見交換を行った。観光庁によると、会議で示された施策の複数組み合せや、新たなアイデアを出していくことで、さらなる打ち手となる可能性や認識が共有された。今後、検討を継続し、今秋にも実効性の高い対策をとりまとめる予定だ。
観光庁が施策を整理、3つの柱と具体例
観光庁は、オーバーツーリズム抑制に関する施策を3つの類型に整理、その具体例を示した。観光地の実情に応じて、地域の関係者が取り組むことで、持続可能な観光地域づくりにつながることに期待する。
1つ目の柱は「マナー違反行為の防止」。旅行者に対するマナー啓発の具体策として、ピクトグラムによる周知や看板の整備、違反行為(文化財の破損や立入禁止区域への侵入など)への対処で条例に基づく罰則にも言及した。
2つ目は「混雑の抑制・緩和」。対策を受け入れ環境の整備・増強、需要の管理、需要の分散・平準化に分類し、具体策として観光客向け相乗りタクシーの検討、バスや鉄道の運賃を地域住民と観光客でのすみ分け、入域制限の導入やガイド同伴の義務化なども提示した。
3つ目は「地域住民と協同した観光振興」。住民との協働や理解醸成の推進をあげ、具体的には地域の関係者の協議による計画策定、観光事業者が地域住民と協働を提示した。