従来の「パーソナライゼーション」施策が間違っている理由、プリンセス・クルーズ社長が語った効果的なテクノロジー活用マーケティング術

プリンセス・クルーズ社長のジョン・パジェット氏は、ディズニー在籍中に旅行業界初のウェアラブル機器のひとつ「マジックバンド」の開発を主導した。その後、カーニバル社のエクスペリエンス・イノベーション最高責任者に就任すると、同様のウェアラブル機器として「プリンセス・オーシャン・メダリオン」を開発した。

パジェット氏は、2023年11月にフロリダ州で開催されたフォーカスライト・カンファレンスで、その開発の背景を説明した。その内容をレポートする。

誰と旅するかによってペルソナは変わる

彼は「自分が注力しているのは決してテクノロジーではなく、顧客体験を向上させる新しい方法を見つけること。大切なのは、いいギミックを見つけることではなく、ビジネス戦略だ」と強調した。

その戦略で重要になるのがパーソナライゼーション。「パーソナライゼーションについていうと、eメールにメッセージ送る時に、相手の名前を明示することだと考えている人は多いが、それはその人に特有の経験ではない。重要なのは、顧客のニーズややりたいことをリアルタイムに提供すること」とパジェット氏。あくまでも、テクノロジーが生み出す体験にフォーカスすることが求められるとした。

パジェット氏は、クルーズ船を海上に浮かぶ一つの街と表現。飲食、エンタメ、スパ、カジノなどのコンテンツがバーティカルに存在している中で、すべてのゲスト、すべてのクルーを繋げて、データを取得する。しかし、パジェット氏は「大量のデータを取得しても、賢くなるわけではない。重要なのは、そのデータを、AIを活用し、適切なタイミングでアクションに変換していくこと」と話す。

また、パジェット氏はCRM(顧客管理)についても言及。従来のCRMによるパーソナライゼーションが間違っているのは、プロファイルを作成してから、そのプロファイルに合わせてマーケティングを行っていることと指摘し、その行為を「顧客を箱に閉じ込めておきたいだけだ」と表現した。

「旅行では、その時点で誰と一緒に旅行するかに応じて、その人のペルソナは変わる。子供と一緒に旅行しているときと、夫と一緒に旅行しているときでは、異なる人間になる。一人の時と、大学の友達と一緒の時も違う」とパジェット氏。だから、その人個人の好みに合わせたリアルタイム情報を提供することが大切になる。

そのうえで、パジェット氏は「世界、消費者、マーケットは非常にダイナミックに動いている。さらに、テクノロジーは常に変化している。あらゆる面で、ブランド全体として、イノベーションは全く達成されていないと自覚することが必要」と付け加えた。

クルーズによるオーバーツーリズムは「難しい問題」

一ヶ所に大量の乗客を短期間に送り込むクルーズで起こるオーバーツーリズムの問題について、パジェット氏は「難しい課題だ」との認識を示す。しかし、世界にはさまざまなデスティネーションがあるため、対応が別れることも事実とする。「たとえば、南太平洋の島では、クルーズ船寄港による経済効果は、その島のGDPの90%にもなるところもある。クルーズ業界は、両面を見ていく必要がある」と話した。

一方で、サステナビリティに向けた活動に妥協はないようだ。パジェット氏は「クルーズ船で行われている取り組みと同じようなことを実施している自治体があれば、見てみたい」と自身を示す。「我々は、いつもリサイクル、フードロス削減、化学物質の管理などを話し合っている。もちろん、完璧ではないが、できる限りのことはやっている。サステナビリティの観点から言うと、世界はクルーズ業界から学ぶことは多いのではないか」と付け加えた。

最後にパジェット氏は「旅行業界は幸福を追求する業界」と強調。面倒なことを取り除き、ゲストから笑顔のフィードバックを受けること。AIの活用、パーソナライゼーション、ペルソナのリアルタイム認識など、「ゲストが望むものを提供するためには、まだやるべきことはたくさんある」と話し、プリンセス・クルーズでのイノベーションを進めていく考えを示した。

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