ハワイの旅行トレンドを現地商談会で取材した、夏以降の予約は増加傾向、節約はメリハリ、準備は計画的に

ハワイ州観光局(HTJ)は2024年4月下旬、ホノルルで日本の旅行会社などのバイヤーと現地サプライヤーによる商談会「ジャパン・サミット2024」を開催した。海外旅行市場の回復が遅れるなか、その復活に向けた指標となるハワイ。過去最多となる総勢約290人が参加したことからも、早期のハワイ復活にかける旅行業界の意欲が伺えるサミットとなった。

今夏以降の需要回復に期待

2023年のハワイへの日本人旅行者数は、2019年比64%減の57万3000人。ただ、直近の2024年1月と2月の実績を見ると、2019年同期比55%減の10万9000人と、減少率は回復傾向を示している。

日本/ハワイ間の航空路線も、2024年4月は便数が2019年同月比41%減、座席数が同30%減となっているものの、5月は便数が同38%減、座席数が同28%減、6月は便数が同37%減、座席数が同27%減と徐々に回復傾向にある。

HTJ日本支局局長のミツエ・ヴァーレイ氏は「2024年第3、4四半期の予約は上がってきている。今夏以降、2019年のペースに戻るのではないか」との手応えを示す。

ただ、課題もまだある。その一つがライバルデスティネーションとの競合だ。特に価格の面でハワイの優位性が薄まりつつある。HTJによると、2024年4月のパッケージ旅行の平均料金を比較すると、4泊でハワイは39万8600円に対して、グアムは27万7300円、オーストラリアは34万年1900円、バンコクは20万9750円。ハワイの料金は、パリの39万9400円とほぼ同等となっている。

また、流通チャネルも変化している。コロナ前は旅行会社経由が全体の74%だったものが、現在では48%まで減少。代わりにホテルや航空会社への直接予約が19%から44%に拡大している。これは、リピーター率が70%を超える現状にもリンクしている。さらに、ヴァーレイ氏は「予約リードタイムが以前の約60日から約90日に伸びている」ことも特徴として挙げた。

そのうえで、ヴァーレイ氏は「ハワイに旅行する動機づけが大切になってくる」との考えを示し、2023年10月から開始したキャンペーン「旅、はじめるなら やっぱりHAWAI’I」を通じて、即効性のある施策を展開していく考えを示した。

HTJは、ファミリーやカップル向けにエクスペディア、ロマンスマーケットでマイナビ・ウェデイング、ゴルフで楽天GORAと協業しているが、今後も業界パートナーとの関係を強化。今年も9月に開催される「ツーリズムEXPOジャパン」では、メディアイベントや業界向けレセプションを集中させる。

さらに、消費者向けには、カルビーやバスクリンとのコラボレーションのように、異業種との協業でハワイ・ブランドの普及と拡大を進めるほか、「メイド・イン・ハワイ」商品のプロモーションを通じて、ハワイ旅行の訴求を強めていく。

「ハワイに旅行する動機づけが大切になってくる」とHTJヴァーレイ氏。

エクスペディア検索では、ハワイと国内が競合

ジャパン・サミットでは、エクスペディアホールディングスの木村奈津子氏が、同社のトレンドを説明した。木村氏は、2023年の検索ランキングでホノルルは3位に入っているものの、実際の予約では8位と大きなギャップがあることを紹介。「ハワイへの憧れは引き続き強いものの、それがコンバージョンに繋がっていない」と指摘した。

また、他デスティネーションとの比較検索を見ると、検索同日に最も比較検索されたのは韓国で、次が北海道。1週間以内の比較では、シンガポールやタイとともに沖縄も検索されていることから、海外だけでなく、国内もハワイのライバルとして浮上していることが伺える。

木村氏は、旅行スタイルの変化にも言及。エクスペディアでは、ホテル検索の際にキッチンのフィルターが、オーシャンビューやプールを抑えて、最も使われており、「現地の物価高から、朝食くらいは自炊にする傾向が高まっているのではないか」と分析した。

一方で、節約志向にも特徴が表れており、交通、宿泊、アクティビティ、ショッピングではいずれも「節約する」割合が高いものの、食に関しては「出費する」割合が上回った。

「ジャパン・サミット2024」はハワイ・コンベンション・センターで開催された。

マイナビ、ウェディングはリスク回避の傾向強く

マイナビの中西加奈氏は、ウェディングマーケットのトレンドについて説明した。同社の調査によると、7割近く(69.5%)が海外旅行に興味があるが、実際に結婚の記念で海外旅行をした人は19.3%。そのうち、ハワイは6.3%にとどまっている。ただ、旅行先の選択では、7割近くがハワイと決めており、ウェディングマーケットでのハワイの強さが伺える結果となった。

ハワイ旅行をしたカップルのうち、結婚式を挙げたのは58%、フォトウェディングを実施したのは40%、旅行のみが27%。

調査では、ハワイの結婚記念旅行の高額化も浮き彫りになった。ホテル・航空券の一人当たりの費用はハワイ以外では平均37万8000円だったのに対して、ハワイは41万5000円、食事・ショッピング・オプショナルツアーの費用についてはハワイ以外では平均19万9000円だったのに対して、ハワイは26万3000円。

中西氏は、「円安の影響で、『ハワイは高い問題』が起きており、旅行者はどこで何を使うか計画的に考えて準備している」と指摘。そのうえで、結婚記念旅行だからこそお金を使うポイントとして「サービス・ホスピタリティの高いところ」「記憶に残るホテルでの宿泊」「日本語が話せるスタッフがいる点」が高くなっていると紹介した。

また、現代の若者は「事前に確認できないこと」「その場に行かないとわからないこと」をリスクと捉えることから、結婚記念旅行では多少割高でも保証が確実な旅行代理店での予約を選ぶ傾向があると指摘した。

読売広告社、SNSショート動画の有効活用を

読売広告社の山本竜童氏は、需要喚起におけるSNSの活用法のヒントを紹介した。山本氏によると、20代の約8割がSNSがきっかけで旅行に出かけたと回答。最も影響力のある投稿は「絶景スポット・写真映えする場所の風景」(57.7%)で、3泊以上になると「割引などのお得情報」(66.7%)が最も多くなる。

情報接触の入口としては、全体的にショート動画が増えており、旅行関係の投稿や視聴も伸び続けているという。山本氏は「ショート動画は、フォローしていない情報も表示され、接触時間も長いため、ファロワーゼロからでもリーチが取れる」とその効果を説明した。

ショート動画で求められるコンテンツのトップは「観光地のグルメ」。ついで「宿泊施設」「観光プラン」が続く。他メディアと比較して、お得さよりも豊かさが重視される傾向にあるという。また、ショート動画ではコメント欄も重要と指摘。コメント欄でクチコミを確認したのちに、検索する流れになるためだ。

山本氏は、現代は認知から行動、拡散まですべてにSNSが関わる「大SNS時代」と定義したうえで、SNSでの情報検索で掲出されるためには「戦略的なハッシュタグ設計が重要」とするとともに、写真や動画のクオリティが高く、ひと目でどのようなサービスかが分かる投稿を勧めた。

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