地方創生プロデュース会社「さとゆめ」とエイチ・アイ・エス(HIS)は、地方創生事業の拡大に向けて資本業務提携を結んだ。両社は、これまで培ってきたノウハウや国内外のネットワークを活かし、「新しい目的地」を創出する「Destination Create Project(DCP)」を始動するともに、「ライフスタイルツーリズム」の拡大を目指す。
発表会見で、HISの矢田素史社長はこれまでの同社による地方創生事業に触れたうえで、「これまでは自前で進めてきたが、自社のリソースを生かしきれなかった。さとゆめとのパートナーシップで、地域の魅力を引き出し、国内外の旅行者を地域に呼び込む」と話し、資本提携の意義を説明した。すでに、HISは2024年7月1日から4人をさとゆめに出向させている。
また、さとゆめの嶋田俊平CEOは、「これまで観光地とされてこなかった新しい目的地を創出しなければ、国の観光目標の達成は難しい。有名観光地でのオーバーツーリズム問題を解消するためにも、新しい目的地は必要」と話した。さとゆめは、これまでJR東日本との協業によるJR青梅線沿線での「沿線まるごとホテル」事業など地域創生事業に取り組んできた。
新たに立ち上げるDCPでは、さとゆめは事業の計画・戦略策定、地域との関係構築、事業の立ち上げを支援。HISは、商品造成、誘客プロモーション、販売、受け入れ体制の構築などを担う。また、両社は計画に必要な資金や人材も提供していく。
具体的には、地域の課題や資源をヒアリングしたうえで、計画・戦略を策定。自治体との包括連携協定を結び、地域活性化起業人などの国の制度も活用しながら、専門人材を派遣する。さらに、計画・戦略の実現に向けて伴走支援。必要に応じて、地域会社の設立や経営参画も視野に入れる。最終的に、宿泊・体験などを商品化するとともに、送客やプロモーションを支援していく。
既存事業での連携も視野
さとゆめは、これまで数千人規模の町や村の創成事業を主に支援してきた。嶋田氏は「このプロジェクトは、人口の少ない地域に限定するものではない」と説明し、全国の自治体やDMOを対象にする考えを示した。
また、嶋田氏は、DCPの目的として、新しい目的地の創出に加えて、「ライフスタイルツーリズム」の訴求も挙げ、「旅を観光の範疇に限定するのではなく、暮らしや人生もある種の『旅』と定義し、『旅、暮らし、人生の目的』をデザインし、社会に提案していく」と意欲を示した。
このほか、嶋田氏は、HISとの協業について、既存事業での連携の可能性にも触れ、「沿線まるごとホテルでの連携も十分に考えられるのではないか」と付け加えた。