日本の新たな高級クルーズ船「三井オーシャンフジ」が就航、40代・50代も呼び込む船内を取材した

商船三井クルーズは2024年12月7日、新クルーズ客船「MITSUI OCEAN FUJI(三井オーシャンフジ)」の就航記念イベントを開催し、船内を公開した。

同客船は高級クルーズを運航する米国のシーボーンクルーズ社から購入した客船を改装。総トン数は約3.2万トン、客室数は229室、乗客数は458名、全客室が海側のスイート仕様で、7タイプある客室のうち上位5タイプにはバトラーをつけ、ラグジュアリークラスの客船として運航する。

代表取締役社長の向井恒道氏は、同客船の最大の特徴を「世界基準の上質な設えと日本の文化・食体験の融合」と説明。4つのダイニングのうち、予約不要のメインダイニング「ザ・レストラン富士」は待つことなく着席できるよう、乗客数とほぼ同じ452席を用意した。また、「北斎FINE DINING」(有料)はスーパーバイザーにフレンチの著名シェフ・三國清三氏を招請。クルーズ初となる三國氏の監修レストランを提供する。

クルーズのダイニングを初めて監修した三國氏。終日航海があり、食材の仕入れや調理機材の環境が異なる中でも、閉店改装中の「オテル・ドゥ・ミクニ」と同じ味を再現することにこだわったという。

さらに向井氏は、同客船らしい場所として共用エリア「ミツイオーシャンスクエア」を紹介。カフェとラウンジ、フロントデスク、寄港地観光デスク、電源付きのワークスペース、ライブラリなどを、同じエリアで干渉しないようなバランスで配置した。「(これまでクルーズで)多目的に憩う場所はありそうでなかった。誰もが目的なく集える場所は貴重。移動しながら仕事や作業ができる場所があり、働く世代にもアピールできる」と話した。

共用エリア「ミツイオーシャンスクエア」。ワークブースの背後の仕切りの向こうにはフロントデスクがある。奥はカフェにつながるラウンジ部分

有給と週末で無理なく乗船できるクルーズに

同社は社名を「商船三井客船」から変更し、クルーズブランド名「MITSUI OCEAN CRUISES(三井オーシャンクルーズ)」を発足。「にっぽん丸」(総トン数約2.2万トン)との2隻体制で運航する。2027年以降はさらに2隻を追加投入する。

一方、日本のクルーズ市場では今後、日本企業による新しいクルーズブランドや客船の就航をはじめ、国内外の様々な客船会社によるクルーズ運航が予定されている。向井氏は「日本人がクルーズを身近に感じ、日本のクルーズ業界が活性化する好機」と歓迎。世界のクルーズ市場が活況で、2027年には全世界で4000万人近くに拡大するというクルーズ業界団体(CLIA)の予測もあるなか、同社では新しい客層、特に40代、50代の現役世代の層を呼び込みたい考えだ。

最上位の客室「MITSUI OCEANスイート」のリビング部分。ベッドルーム、ソラリウム、室内ジェットバスなどがあり、客室だけで82.4平米。バトラーもついて1泊約30万円(クルーズによって異なる)

向井氏は、日本船籍である「にっぽん丸」は、ショートクルーズをはじめ日本各地へ行くクルーズ、バハマ船籍である三井オーシャンフジは海外寄港を含む5~10泊以下を中心とした幅広いクルーズを多数運航していることを紹介。日本では2019年に年間5日の有給取得が義務付けられ、年間有給取得率が8年連続で上昇しているおり「有給休暇と週末の土日の休暇で、現役世代も無理なく乗船できる旅行であることを訴求したい」と意欲を見せた。

さらに、同社は寄港地観光について国土交通省や地方港湾・観光局と連携した、ユニークなツアーの提供に取り組んでいる。

向井氏は「おいしい和食と日本を再発見できるオリジナルの寄港地観光、上質な空間の中で日本の体験を提供するのが、三井オーシャンクルーズ。大型船では入れないユニークな港に寄港し、地域と一緒に日本各地の発展に寄与したい」と話した。

左から)商船三井クルーズ代表取締役社長の向井恒道氏、三井オーシャンフジホテルゼネラルマネージャーの川野惠一郎氏

みんなのVOICEこの記事を読んで思った意見や感想を書いてください。

観光産業ニュース「トラベルボイス」編集部から届く

一歩先の未来がみえるメルマガ「今日のヘッドライン」 、もうご登録済みですよね?

もし未だ登録していないなら…