OECD観光委員会、世界の観光需要は完全回復、新たなリスク対応で優先すべき3つの優先政策を提言

経済協力開発機構(OECD)観光委員会は、OECD加盟国及びパートナー国における最新の観光動向を調査・分析した「OECD諸国の観光動向と政策2024年版」を発行した。観光庁は同委員会の副議長として活動しており、その内容と概要を公表した。

観光需要は順調に回復、新たなリスクへの対応も

OECD諸国における入手可能なデータによれば、観光のGDPへの直接的貢献度は、2022年に3.9%まで回復、2019年の水準を0.5%下回っているものの、その後も回復が続いている。渡航制限解除によって国際観光需要は回復し、2022年のOECD 諸国のサービス輸出における観光のシェアは14.8%に増加。コロナ前を5.6%下回っているものの、2023年には一部のOECD諸国ではコロナ禍前の水準を超えた。

観光需要は2024年末までに世界で完全回復し、需要と供給の不均衡が解消されるにつれて、成長はコロナ禍前の動向に戻ると予想。一方で、働き手不足、物価高、地政学的緊張、異常気象などが観光業に影響を与えているとしたうえで、より多くの機会が創出されるが、より強靱で 持続可能かつ包摂的な未来を支える政策の重要性を強めていると指摘している。

国、地方、地域レベルによる効果的な政策協調を

観光地は、需要及び環境・地域社会への影響を管理すべきという状況に直面している。地域社会が得る利益が負担するコストを上回るよう、観光が地域に与える影響とのバランスを調整し、トレードオフの関係性を理解し、持続可能な観光を実現する必要性を唱えている。

そのうえで、利益と観光客の流れを拡大させる観光商品の多様化、観光活動による環境への負荷を減らすための多額の投資、持続可能な労働力、人材育成は今後も継続して焦点を当てるべき分野と指摘している。

国の観光政策の目標を実現するには、国、地方、地域レベルの十分なリソースに支えられた効果的なガバナンスの実践と協調的な政策的措置が必要とし、特に観光地レベルでの取り組みは、変化の機運醸成の上でますます重要な役割を担っていると指摘した。

重要優先政策3項目を提言

こうした課題解決に向けて、「OECD諸国の観光動向と政策 2024年版」では3項目の重要優先政策を提示している。

まず、将来を見据えた持続可能な観光政策を実現するための協調行動の促進。気候変動対策における観光の役割を強化し、観光政策のプロセスに幅広い利害関係者の参加を促す。また、旅行客の流れの適切な管理、観光商品の多様化、重要なインフラを開発に向けて、観光地レベルを含めた調整と提供の仕組みを強化することを挙げている。

次に、観光分野の労働人材の強化。観光の仕事をより魅力的で実行可能な選択肢にするため、 観光をより広い経済・地域社会の開発戦略に統合する。新しい研修と労働モデルを導入し、観光業の労働条件を改善するとともに、グリーン化およびデジタル化への移行に備えるため、民間部門と教育機関との間の連携を促進するべきとした。

最後に、持続可能な観光政策のためのエビデンス基盤の構築。政策の優先課題をより適切に特定する。また、観光データのギャップを埋め、環境的・社会的優先事項に焦点を当てた取組みを監視・測定し、より持続可能な観光モデルへの移行を加速させる。さらに、すべての階層の意思決定者がデータを活用できるように、指標、ツール、および評価基準を使って目的に応じたツー ルキットを設計することが望ましいと提言している。

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