JTBは、パートナーイベント「JTB Group New Year Partnership Meeting 2025」を開催し、山北栄二郎社長が2025年のJTBグループの取り組みを説明した。
JTBは、旅のテーマを「交流」と定義し、交流創造事業として、これまで幅広い事業を展開してきた。今回、改めて、その交流創造事業を「デジタル基盤の上に人の力を生かし、地域や組織の価値を共創し、人流や情報流物流を生み出すことで、人と人、人と地域、人と組織の出会いと共感をサステナブルに作り続けること」と再定義した。
山北氏は、その意義について「単純に交流だけでなく、AIがどんどん進化していく時代の中で、人の価値というものをもう一度見つめ直さなければならない」と説明した。そのうえで、「人だけでなく、地域や組織とつないで、そこにモノを創り出し、目的、課題解決、未来に向けて、さらにそれを何かにつなげていく」方針を示した。
海外旅行「まだこれから」、個人旅行化と多様化に対応
JTBは、2025年の旅行市場について、国内旅行者数が前年比2.7%増の3億500万人、海外旅行者は同8.5%増の1410万人と予測。訪日外国人は4000万人を超えると見込んでいる。
2025年度上期の国内旅行は大阪関西万博に集中する(山北氏)。その後、下期は沖縄、2026年度上期は東北、下期は九州への取り組みを強化する方針だ。
海外旅行については、ヨーロッパキャンペーンを開始する。JTBは昨年11月、ヨーロッパ観光委員会(ETC)と基本合意書(MOU)を締結。2025年4月~2028年3月、サステナブル、オーバーツーリズムをテーマとした新商品開発、渡欧機運醸成イベントなどで協力していく。山北氏は「現地としっかりとタッグを組んで復活させていく」と意欲を示した。
また、今年、新宿東口に海外旅行専門店をオープン。旅のセレクトショップとして、海外旅行需要を底上げしていく。さらに、欧州では、自由にコースを組み合わせられる個人旅行バスツアー「ランドクルーズ」の訴求にも力を入れていく考えだ。
山北氏は、2019年で70%程度の回復にとどまっとている海外旅行市場について、「逆に言うと、まだこれから」との認識を示したうえで、「米国トランプ政権の誕生で、円安傾向は当面続くと見ている。新しい円ドルレートを基準に、ツーリズムを作り直さなければいけない」と話した。
加えて、山北氏は、2025年の旅行トレンドとして、「パーソナライズ」「ウェルビーイング」「小集団化」「ボーターレス」を挙げた。「個人化がますます進み、多様性もさらに高まるとし、健康や生き方への関心も高まる」と説明。また、オーバーツーリズム対策として分散化を進めていく必要性に触れたうえで、「旅行グループも小集団化していく。それに対して、効率よくオペレーションできるかが一つのポイントになる」との考えを示した。
デジタル基盤に人のチカラを、AIがカギ
JTBは、CRM強化に向けたデジタル顧客基盤の整備も進めている。MyJTBの登録者数は累計1500万人を突破。全申し込みに占めるMyJTB登録率は、87%に達しているという。また、JTBアプリのインストール数は累計250万回。JTBホームページ国内販売額のうち13%がアプリ経由になっている。山北氏は、この結果から「アプリなどはまだ改善の余地はあるが、デジタル顧客基盤がしっかりしてきた」と評価した。
デジタル基盤の整備では、山北氏はAIのビジネスへの実装についても言及。「AIによって言葉の壁が取り除かれ、行程の作成から様々なリコメンデーションやマッチングまで、いろんな可能性が生まれる。これをいかに取り込んでいけるかが、今後の一つのカギ」と話したうえで、AIをツールとして、潜在する旅先の魅力と潜在的ニーズを瞬時マッチングさせていくとした。
加えて、人の力の重要性も強調。「言葉が自動翻訳できても、やはり人間のフィジカルなコミュニケーションは必要。共感すること、直感すること、信頼すること、サプライズの演出などにはどうしても人間の力が必要になる」と話した。
人の力の価値を高めていくために、JTBでは「多様性(Diversit))」「公平性(Equity)」「包括性(Inclusion)」「心理的安全性(Belonging)」のDEIBを基本として、人的資本の強化を進めていく方針だ。「DEIBがこれからの企業活力の一番の根っこになる」と山北氏。「旅には、人を満たす力、社会を発展させる力、そして地球を豊にする力がある。交流がなければ、人間は豊な暮らしをおくれない。今後も地球を舞台に交流創造事業を進めていく」と抱負を述べた。