【レポート】NHK朝ドラ「花子とアン」、原作者が語るエピソードと旅行商品への期待

2014年3月31日から始まるNHK連続テレビ小説「花子とアン」。この物語は、カナダ・プリンスエドワード島を舞台にしたモンゴメリの小説「赤毛のアン」の翻訳者・村岡花子氏の生涯を描いたドラマだ。ドラマの舞台は日本となるものの、回想シーンなどで現地プリンス・エドワード島の露出が増えることから、関係者の旅行者増への期待は高い。

今回は、「花子とアン」の原作「アンのゆりかご 村岡花子の生涯」の著者・村岡恵理氏が旅行業界向けのセミナーで語った祖母・村岡花子氏のエピソードや来年のプリンス・エドワード島へ旅行商品への期待についてレポートする。


▼戦時中に翻訳された「赤毛のアン」、女性や子供向の文学を

村岡花子氏の孫娘、村岡恵理氏

村岡花子氏は、青春時代に故郷を離れて東京の東洋英和女学院で学んだ。同学院は、1884年カナダ・メソジスト教会(現カナダ合同教会)の婦人宣教師によって創設。当時からキリスト教信仰と、聖書を土台にした教育をしており、ここで教育を受けた村岡花子氏について孫の恵理氏は、「アンのような教育を受けたことが、祖母に影響を与えた」と語っている。

学園で身に着けた英語を活かして翻訳家になった村岡花子氏は、戦時中に「赤毛のアン」の原作にであった。原作に感銘を受けた同氏は、当時、敵国の本として出版の可能性は皆無だったものの翻訳を続行。この理由を村岡恵理氏は、戦時中は女性や子供向けの文学がなく、アンのポジティブな精神を軸に展開される物語を読んでもらいたかったのではないかと語った。


▼花子氏が「赤毛のアン」に込めた思い

グリーン・ゲーブルス/画像提供:プリンス・エドワード島州政府観光局

「赤毛のアン」の主人公アンは、平凡な日常を素晴らしいものに変える言葉を持っており、原作でも頻繁に登場している。また、プリンス・エドワード島の自然や四季の移り変わりの描写も多い。村岡花子氏は、こうしたアンのポジティブな精神や現地の風景を忠実に日本語に翻訳した。

恵理氏によると、こうしたアンの精神とプリンス・エドワード島の美しさを忠実に日本人に伝えた花子氏は、実はプリンス・エドワード島を訪れたことがなかったという。同氏は渡航することをいつも夢見ていたものの、ついには実現しなかった。これについて、恵理氏は花子氏がアンの「想像力」に影響を受けていたのかもしれない、という考えを披露。花子氏も、読者同様に生涯プリンス・エドワード島を想像し続けたようだ。

花子氏は、こうして「アン」の影響を受けつつ、日本人に「アン」の物語を伝え続けた。1巻の「赤毛のアン」を翻訳・出版後、7年で10冊のシリーズを翻訳している。恵理氏は、この原動力を「本の力を信じたい」「この物語を届けたい」という気持ちだったのだろうと考えている。


画像提供:プリンス・エドワード島州政府観光局

▼旅行者の“想像力”を高める旅行商品を

村岡恵理氏は、旅行会社に2014年の同島への商品づくりについていくつかの提案も披露した。まず、「夢をできるだけ壊さないような旅行企画を考えて頂きたい。」として「赤毛のアン」読者も、想像力で同島をイメージしており、想像力を掻き立てる旅行商品づくりを提案した。

また、これまで女性向けのツアーが多かったプリンス・エドワード島に男性旅行者の増加する可能性に言及。ドラマをきっかけに、今まで知られていなかった側面での「赤毛のアン」の魅力が男性読者にも伝わるのではないかと考えている。現地にも、ゴルフ場やワイルドな海岸線などの自然もあり、男性も充分楽しむことができる素材があるという。


▼NHK連続テレビ小説「花子とアン」

山梨の貧しい家に生まれ、東京の女学校で英語を学んだ村岡花子氏の人生をおったドラマ。明治、大正、昭和にわたる激動の時代を背景に展開する。主演の村岡花子役は吉高由里子氏、友人役として仲間由紀恵氏などが出演する。ナレーション美輪明宏氏。

http://www9.nhk.or.jp/dramatopics-blog/1000/167708.html

参考記事>>> 

あまちゃん」効果で観光入込客34.4万人、観光消費額は30.6億円と推計

( トラベルボイス編集部:山岡 薫)


日本人に愛されてきた日本語訳「赤毛のアン」

L.Mモンゴメリ原作「赤毛のアン」は、現在全世界20カ国で翻訳され5000万部が出版されているロングセラー文学。日本語版は、村岡氏の翻訳で1952年に初版、新潮社文庫のみのでも、これまでに約1400部が販売されているという。世界の約4割が日本で読まれている計算となり、日本人にいかに愛されてきたかがわかる数字だ。

2008年には原作出版から100周年、2012年は日本語版出版60周年を迎え、日本各地でもイベントや各種の企画が開催されてきたが、その人気は根強い。2014年のNHKドラマによって、再度ブームが訪れる可能性が高い作品。

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