旅行IT国際カンファレンスで沸騰したキーワードは「コンテンツ」と「マルチデバイス」 ーEyeForTravelより

旅行IT(情報技術)専門の国際カンファレンス「ソーシャルメディア&モバイル2015」が2月に香港で開催された。2日間にわたる同カンファレンスでは、ソーシャルメディアが旅行分野にどのような役割を果たしているのか、モバイルは今後どのような効果をもたらすのか、といったことが15のセッションを通して討議された。その中でも議論が沸騰したキーワードをピックアップして解説する。

「ソーシャルメディア&モバイル2015」は、英国の旅行専門調査会社アイ・フォー・トラベル社が主催する国際会議。参加者は合計137名で、香港やシンガポール、インドネシアなどのアジア諸国をはじめ、英米国やフランス、ドイツなどの欧州からも駆けつけた。日本からは楽天など合計9名が参加、登壇者にはグーグルやスカイスキャナー、カヤック、トリップアドバイザーなどビッグネームが名を連ねた。


▼コンテンツが主役の時代に

アジアや絵欧米諸国から137名が参加。

消費者のモバイルへのシフトは世界中で急速に進んでいるなか、コンテンツの変化も議論された。ツイッター社はリアルタイムプラットフォームとして「その瞬間」を伝えるメディアとして発達したが、つい1月には新機能としてツイッター「ビデオ機能」もリリースした。リアルタイムコンテンツは新鮮であることが重要だが、その表現は多様化しはじめていると言えよう。動画をみて旅行先を決定したことがある消費者は54%、というグーグルの調査結果も発表された。

一方でコンテンツを巡っては、自らのビジネス領域を超えた動きも出始めている。ブッキングコムはユーザーによるホテルレビュー(クチコミや評価)を強化してきたが、今後はデスティネーション(旅行目的地)のレビューもおこなうという。最終的な目的は「予約」なので、それに貢献することはどんなこともしたいという。


日本からの登壇者のひとり、ベンチャーリパブリック柴田CEO

またコンテンツの重要性については、日本のベンチャーリパブリック柴田啓CEOの発表が象徴していた。メタサーチサイト「Travel.jp」や「Hotel.jp」を展開する同社では、新たに「たびねす」という日本国内および海外旅行のガイド情報サイトを立ち上げた。このサイトは全国の観光や文化に詳しい専門家をナビゲーターとして集めそれぞれの記事を掲載している。

現在351名の執筆者が書いた記事の数は、すでに6400本を超えた。今でも毎日15~17本を新規公開している。アクセス数は一年前に比べ6.5倍に急増したという。コンテンツ・キュレーション市場はさらに伸び続け、2013年の91億円が2017年には395億円になるといった予測も合わせて紹介された。


価値あるコンテンツを提供することでユーザーに貢献し、結果として売上に結びつける、いわゆる「コンテンツ・マーケティング」がこれからさらに隆盛することの証とも言えよう。



▼コンバージョンの考え方もスマホ普及で変化

スマホの急激な普及により、予約完了、いわゆる「コンバージョン」の考え方が大きく変化していることも討議された。スマホでの予約画面に「問題がある」と回答した消費者は44%、というグーグルの調査結果も発表され、まだまだ発展途上であることが読み取れた。

またスマホは移動中など時間を細切れにした断片的な接触が少なくない。とすると調べて予約および決済まで一気に完結するPCと異なり、細切れに対応した「途中保存」のような機能が今後重要になっていくのではないかといった意見も出された。


その意味では、顧客接触から商品選択、そして購買までのプロセスである「カスタマー・ジャーニー」をスマホの時代に合わせた考え方に変化していく必要性も討議された。


ユーザーは複数のデバイス(端末)に接触する時代に。

また単独のデバイス(端末)だけでなく複数のデバイスに対応していくことの重要性についても議論された。


ユーザーの利用端末はPCかスマホのどちらか一方、というよりも、少なくともPC利用者はスマホなどのモバイル端末を併用しているのが一般的だ。そこで予約と異なるデバイスの関係についてクリテオ社が調査したところ、最初にPCでクリックしたユーザーが、実際の予約は別の端末おこなった割合は3割であったことが明らかになった。内訳はモバイル予約が10%、別のPC予約が20%。さらに最初にモバイルでクリックしたユーザーが別の端末で予約したのは60%と跳ね上がる。内訳はPC50%、別のモバイルが10%であった。

ユーザーは複数のデバイスで接触することが増えてきている。スマホ画面、PC画面、タブレット画面など異なるスクリーン(画面)に、活用シーンに応じて変えている。いわゆる「マルチスクリーン」である。今後はこのユーザーとどのように接点を深めるかがカギを握りそうだ。


▼中国のミレニアルは大市場に

そしてもうひとつ大きな注目を集めたのが中国のミレニアル世代(主に1980年代から1990年代生まれ)と旅行だ。中国ではミレニアム世代の旅行者は2020年にはのべ4億人になるという。これは全アジアのミレニアル世代旅行の27%を占める。この世代をどう理解するかはソーシャル戦略やモバイル戦略を左右するといってもいい。そこで中国のミレニアム世代の特徴についての発表を採録しておきたい。

中国のミレニアル世代の特徴は他の世代と異なる点にスポットライトを当てながら紹介してみよう。まず旅行予約において、より「早い」ことと「便利」であることが「ていねいである」ことよりも価値が高いとしたのが81%に登った。また「旅行を計画する際にソーシャルメディアを利用する」のは42%と、ソーシャルメディアの重要なことがわかる。

またレビュー(クチコミや評価)を積極的にチェックする世代でもあり、また自身の体験をソーシャルメディア上でシェア(共有)することに抵抗はない世代でもある。ちょっと気をつけなければならないのは、ネガティブな体験を拡散する傾向があるというのも特色である。

ブランドへの忠誠心は他の世代に比べて3倍でもある。また価値を感じるポイントも異なる。「ステータス」「ラグジュアリー」「冒険」「エキサイトメント(刺激)」といったことに対しては他のどの世代よりも価値を感じているという。

こういったミレニアル世代に訴求していくには何が必要なのかというと、まず複数端末、つまり前述のマルチデバイスで接触する世代でもあるので、その対応が必要であろう。またネット接続のスピードも重要だ。旅行中、いわゆるタビナカでも彼らはネットとつながっていることは重要な条件でもある。

今後のアイ・フォー・トラベルの主なカンファレンスは次の通り。

(トラベルボイス編集部: 鶴本浩司)


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