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日本政府観光局(JNTO)は、高付加価値旅行を求める旅行者の誘客に向けた取り組みの一環として、今年も商談会「Japan Luxury Showcase 2025」を開催した。海外の旅行会社などバイヤーは、16カ国40社が参加。昨年の32社を上回った。また、国内のセラーは、宿泊施設、DMC、交通機関など45社が商談に臨んだ。
商談会に先立って、ファムトリップも実施。「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくりモデル観光地」に選定された14地域のうち、日光・八幡平、北陸、松本・高山、伊勢志摩、奈良・和歌山、せとうち、雲仙・阿蘇、沖縄、ゴールデンルートの9コースで行われた。
日本政府観光局の取り組み
訪日外国人旅行者は右肩上がりで増加している一方、着地消費額1人100万円以上の旅行者層は全体の約1%に過ぎず、消費額も全体の約14%にとどまっているという。JNTOでは、訪日市場全体の課題として挙げられている地方への誘客と消費額の拡大に向けて、2023年に「高付加価値旅行推進室」を立ち上げた。
JNTOでは、この市場について、魅力的なコンテンツの発掘と商品造成による「ウリ」、上質なインバウンド宿泊施設の「ヤド」、ガイドを含めた人材の「ヒト」、海外とのコネクションの「コネ」に課題があると認識。そのうち、今回開催された「Japan Luxury Showcase」については、「コネ」の機会と位置付けている。
「コネ」強化としては、日本国内ではサプライヤーからのサービス内容の収集と蓄積を進めるとともに、国内関係者のネットワークを強化。さらに、高付加価値旅行をテーマにした世界的な商談会「ILTM」やラグジュアリーコンソーシアム主催の商談会への出展を継続する。
海外では、高付加価値旅行を提供する旅行会社が加盟するラグジュアリーコンソーシアムへのアプローチを継続。BtoCおよび金融機関、社交クラブ、文化施設など向けたBtoBtoCでの情報発信を強化していく方針だ。
このほか、高付加価値旅行に対応できるガイド研修も実施していく。
JNTO市場横断プロモーション部長の藤内大輔氏は会見で、同じく高付加価値旅行として期待されているアドベンチャートラベル(AT)との違いについて言及。Japan Luxury Showcaseに参加するバイヤー旅行会社は、富裕者層を顧客に持つコンソーシアムVirtuoso、Serandipiansなどの加盟会社が多い一方、アドベンチャートラベルは「アドベンチャー・トラベル・トレード・アソシエーション(ATTA)」加盟会社が中心。そのうえで、「ATはアクティビティに重きを置く。文化体験などで結果的に重なる部分はあるが、マーケットは異なる」との認識を示した。
今年の「Japan Luxury Showcase」は「マンダリンオリエンタル東京」で開催された。
初参加のJR九州「ななつ星」、欧米豪へのアプローチを強化
Japan Luxury Showcase 2025には、交通機関が5社参加。そのうち、JR九州「クルーズトレイン『ななつ星』in 九州」は初めて参加した。
その理由について、同社鉄道事業部クルーズトレイン本部クルーズトレイン事業部チームセールスプロモーション課長代理の田中大士氏は「英語圏での認知拡大のきっかけ作り」と説明する。「ななつ星」に乗車するインバウンド客の8割から9割が台湾から。「欧米豪へのPR機会は、これまで少なかった」ことから、欧米豪市場にはリーチできていないという。
同社クルーズトレイン本部主査の今村美和氏は、商談会で海外バイヤーから「乗務員の英語対応や予約の方法などの質問が多く寄せられた」と明かす。
「ななつ星」は7両編成で客室は10室。このうち、現在は予約状況に応じて2~3室をインバウンド向けとしているという。将来的には、通常運行とは別枠のインバウンド向けチャーター便を設ける可能性もゼロではない。
今後、海外向けのプロモーションでは、通常の運休日に海外旅行会社やメディア向けのファムトリップなどを検討していきたい考えだ。