長野県飯田市、人を起点に滞在交流型の観光地域づくり、関係人口の創出へ、堅調な民泊・農泊をさらに推進

長野県飯田市は、民泊エアビーアンドビー・ジャパン(Airbnb Japan)および南信州観光公社の協力のもと、新たに持続可能な観光地域づくりを目指す「いいだツーリズムビジョン」を策定した。3者は2021年11月に関係人口創出に向けたパートナーシップを締結。今回のツーリズムビジョンを、その取り組みの成果の一つとして位置付ける。

「いいだツーリズムビジョン」では、「誰もが飯田市の自然、伝統、文化、歴史に触れられ、誰もがプレイヤーとして活躍できる地域」をビジョンとして掲げ、人を起点とした観光に取り組んだいく。キャッチフレーズは「いい、あいだ」と設定。もてなす側ともてなされる側、日常と非日常の間で新しい人間関係を作り、交流を通じて移住・定住と観光との間である関係人口を創出していく。

飯田市の佐藤健市長は、発表会見で「観光地とされていない地域で、どのように観光してもらうかが長年の課題だった」としたうえで、3者のパートナーシップについて「この地域が目指すべきツーリズムの姿」と評価。改めて今回ビジョンを策定した背景として、「飯田市の取り組みは世界のツーリズムの潮流と合致している。今後もしっかり進めていくために、その方向性を市民とも共有していくため」と説明した。

具体的には、3者によるパートナーシップの延長として、観光コンテンツの開発、人材育成、飯田市の魅力発信に取り組んでいき、滞在交流型の観光地域づくりを目指す。

(左から)Airbnb Japanの田邊氏、佐藤飯田市長、南信州観光公社の高橋氏増加するUターンや移住、エアビーの宿泊数も2.8倍に

エアビーアンドビー・ジャパン代表取締役の田邉泰之氏は、約3年半の3者による取り組みを説明。そのひとつとして、Z世代が天龍峡地区の活性化についてアイデア出しを行う「天龍峡Z世代会議」について、「(この会議が)Uターンで地域に戻ったり、東京から何度も訪れたりと、関係人口が生まれるきっかけになった」と評価した。

飯田市によると、3者パートナーシップを締結した後、3年間で飯田市全体への移住件数は2.2倍、Uターン件数が1.2倍に増加。天龍峡から15分圏内に限ると、移住件数は2.8倍、Uターン件数は3.5倍となり、飯田市全体を大きく上回ったという。

また、田邊氏は、2024年の飯田市で予約されたAirbnb総宿泊数が2018年比で2.8倍、Airbnbホストによる総収入は7倍に増加したことを報告した。

南信州観光公社社長の高橋充氏は、同公社が取り組んできた農泊による教育旅行について説明。その取り組みを「新しいビジョンのエコツーリズムやサステナブルツーリズムにも共通する理念」と位置付けた。

高橋氏によると、飯田市で農泊を営む農家は、コロナ禍で3分の1近く減少。2023年に再開した時は80軒ほどだったが、2024年は100軒を超えた。この軒数は、南信州の他地域に比べると「非常に多い数字」だという。

また、農泊体験を実施した教育旅行は、2023年度は46校・団体で参加者は約3800人、2024年度は27校・団体で約2500人。2025年度は現段階で37校・団体、4300人の受注があり、インバウンドも含めると、最終的には5000人ほどの利用が見込まれるという。

その経済効果については、地元の旅館・ホテルでの滞在も含めて、消費額は1億5000万円、経済波及効果は3億5000万円から4億円近くにのぼると試算されていると明かした。

高橋氏は、農泊の潜在力は高いとしたうえで、「それを一般化していく手立てをしっかり構築してく。飯田発で旅文化を変えていくという気持ちで、『いいだツーリズムビジョン』を進めていきたい」と話した。

佐藤市長は、今後の取り組みとして、空き家の利活用に向けた活動を支援する「エアビースクール」について言及。関係人口の創出に向けて、さらに充実させていく考えを示した。また、空き家の利活用は全国的な課題になっていることから、「飯田市だけでなく、全国でそうした取り組みを行う人たちのためのスクールとしていきたい」と意欲を示した。

みんなのVOICEこの記事を読んで思った意見や感想を書いてください。

観光産業ニュース「トラベルボイス」編集部から届く

一歩先の未来がみえるメルマガ「今日のヘッドライン」 、もうご登録済みですよね?

もし未だ登録していないなら…