バケーションレンタル世界大手「ホームアウェイ(HomeAway)」が日本での活動を本格化する。このほど、日本支社長として梅澤亮氏を任命、日本を重点戦略エリアに定めて、サービス拡充を図る方針を発表。規制緩和やルールづくりが進む「民泊」分野で、新たな外資系プレイヤーが存在感を増しそうだ。梅澤氏は、日本では「合法で行っていけるように議論している」として、関係省庁との議論や情報提供も進めながらビジネスを拡大していく考えだ。
バケーションレンタルとは、家主(オーナー)が休暇や出張などで家屋を使用しない期間、物件を第三者(ゲスト)に貸出すもの。家屋を1軒まるごと貸し出す形態が主で、欧米ではすでに一般化している。一戸建ての別荘、ビラ、リゾートマンションなどが代表的なタイプで、キッチンや洗濯機など生活に必要な設備があることから、家族旅行などの需要が高い。
HomeAwayは、2005年に米国テキサス州で創業。現在、世界では193か国120万件の物件登録を誇り、月間のゲスト数は4400万人。予約実績は2015年に160億米ドル(日本円で約1兆8000億円)達した。昨年、米エクスペディアに買収されており、2016年第1四半期決算では、すでにその買収効果を発揮している。
ビジネス戦略発表の記者発表で、同社のJeff Hurst氏が日本を重点戦略エリアとした理由を説明。成長市場であるアジアの中でも、日本を大きく成長させることが世界的な存在感を高めることにつながり、世界の旅行者の目的地として日本が魅力的であることを上げた。そして、インバウンド(訪日外国人向けの物件増加)と日本人の海外旅行での利用を「バランス良く、双方ともに成長させていきたい」としている。
アジアを統括するPrashant Kirtane氏は、日本の民泊(バケーションレンタル)が今後5年で大きく伸び、「世界的にも大きな市場になる」と見込む。日本を訪れる旅行者が増え続ける中、ホテル稼働率が高く、宿泊価格が高騰している日本で、商機を狙う。日本は、アジア圏の旅行者に人気のバンコク、台湾に並ぶ旅行目的地。家族連れ、グループ、ビジネス旅行者に日本人と日本を訪れる外国人に対して「まるごと貸切ることができる物件」を増やすために営業チームを拡大するという。
別荘レンタルを「合法で」、日本のルールに沿って事業構築へ
日本支社長に就任した梅澤氏は、これまでタクシーのシェアリングサービス「Hailo」の日本代表などをつとめてきた人物。梅澤氏は、今後の日本での展開は “別荘”にフォーカスし、“バケーションレンタル”をキーワードとして積極的にアピールしていくことで、先行する民泊仲介のAirbnbなどと差別化を図る考えだ。また、民泊の規制緩和やルール作りの結論に沿って日本の事業を構築するすべく「合法で行っていけるよう議論している(梅澤氏)」。今後は、日本の民泊で動向に注視しながら日本法人の設立も検討するという。
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グループ企業となるエクスペディア・ジャパンとの連携は「これから検討していく」。梅澤氏は、「グループ企業であることを最大限に生かしていく」方針だ。昨年の買収時の段階では、HomeAwayの民泊をエクスペディアのサイト内で販売する予定はなく、エクスペディアのノウハウを運営に活かしていく形をとる方向性が発表されていた。今後、グループとしての動きに注目したい。
なお、HomeAwayは、拡大とグローバル化で各地域の同種企業の買収で成長してきた企業。現在、日本語で展開する「HomeAway.jp」は、アジアを中心に展開していたtravelmobを2015年に買収したもの。2016年5月23日現在、日本の物件は東京を中心に4377軒(トラベルボイス調べ)掲載されている。
トラベルボイス編集部 山岡薫