米国トランプ政権は、イスラム圏など6か国を対象とする入国規制を限定ながら一部復活する見通しだ。AP通信によると、この一部再開は米国時間2017年6月29日の予定。ただし、混乱を回避するための追加措置などは不明瞭な状態だ。米政府の法律専門家らは6月27日、渡航規制に関するガイドライン策定作業に入ったとしている。
この入国規制は、2017年1月に「テロリスト対策」目的で統領令として発出されたもの。その後、米最高裁によって差し止め処分を受け、今年10月にその正当性が最終判断されることになっていた。しかしそれに先立ち、最高裁が6月26日に差し止め処分を部分的に解除することを発表。今回の規制は、シリア、スーダン、ソマリア、リビア、イラン、イエメンからの訪米旅行者を対象とするほか、米国内の団体や組織、あるいは米国人と「嘘偽りのない誠実な(bona fide)関係にある」ことが証明できれば、入国は認めるとしている。
「誠実な関係」の定義が不明瞭、困惑は入国管理業務職員にも
例えば仕事や講演の依頼、親戚関係などであれば、入国が認められる模様だが、最高裁が示したガイドラインはあいまいで、具体的な証明方法などはまだ明示されていない。
今年1月、就任して間もないトランプ大統領が同6か国およびイラクを対象に入国規制を導入した際は、法的に有効な滞在ビザを持った人でも米入国を拒否。また、海外の空港で予定していた米国便への搭乗を拒否されるなど、世界各地で大混乱が起きた。イスラム教徒に対して差別的な内容であるとの反発も拡がった。
さらに、実際に入国管理業務を担当する現場にも困惑が広がっている。「誠実な関係」の解釈について、例えば、米国内のホテルやレンタカーを予約していることも広義では「関係性」と言える。一方で、血縁関係はない親戚や親しい相手など、人間関係についても解釈の幅は広い。詳しいルールがどこまで策定されるのか、あるいは個々の担当者の裁量に任されるのかも不透明だ。
入国管理・国境警備に従事する職員が加盟する労働組合からは、1月に起きたカオスを繰り返す事態を避けるため、政府当局に詳細なガイドラインの提供を求めるとの要望が出ている。連邦政府の職員が加盟する国家公務員労働組合、NTEUのトニー・リアドン代表は「1月の発令時も、当局はもっと早い段階から万全な準備をしておくべきだった。今回は、あのときのような大混乱にならないようにと我々も願っている」とコメントしている。