観光新財源、日本旅行業協会は米国方式の「外国人旅行者への入国手続料」課金を提言、新制度で「需要減退の恐れ」も

日本旅行業協会(JATA)は、国交省が有識者らで議論を開始した観光の新たな財源(いわゆる出国税など)への立場と考え方を発表した。

このほど開催された記者会見でJATA理事長の志村格氏は「JATAとして必ずしも反対ではない」としながらも、消費税と同時に新制度が導入されることになれば特に日本人旅行者の需要減退につながる恐れがあるとして慎重な議論を求めた。JATAとしては、訪日外国人旅行者を課税の対象とした米国のESTA(電子渡航認証システム申請料)方式の採用を望ましいとしている。

この議論は、観光庁が2020年に訪日外国人数を4000万人とした政府目標を達成するために、他国の事例などに学びながら制度設計をおこなっているもの。OECD(経済協力開発機構)が分類した世界各国の観光関係の公租公課のうち3つの類型「出入国」「航空旅行」「宿泊」を提示。先月から有識者や観光関連事業者などによる検討会を開始し、その内容を来年度の税制改正に盛り込むことを目指している。

JATAとしては「必ずしも反対ではない」ものの、需要に対する影響を指摘。現在、1000円程度を前提に議論がすすんでいるものの、「需要への影響は避けられない」とした。特にLCCを活用するなどの2~3万円の料金設定をしている低価格ツアーで若者層への影響が大きいとの考えだ。

対象を訪日外国人と提言

使途はプロモーションより受入れ体制の整備が妥当

一方で、財源が必要であることも理解する立場から使途や導入方法を提言した。会員企業の多くが海外旅行を扱うJATAとしては、日本人需要への影響の観点から訪日外国人旅行者を対象とすることを要望。国際テロの脅威が高まっていることから、セキュリティ対策の強化や出入国手続きの簡素化などを使途として米国のESTA(電子渡航認証システム申請料)と同様の方式の導入が望ましいとしている。

その場合、受益者は訪日外国人という考え方になる。その使い道としては海外での訪日プロモーションよりも日本国内の受け入れ態勢整備や外国人案内所の充実、地域の2次交通の確保などが優先されるべきと指摘。さらに、インバウンド拡大のために国内線での徴収は妥当ではないとした。

また、内外無差別の観点から日本人も対象とする場合は、日本人旅行者にもメリットが受けられるような配慮が必要とした。具体的には、日本人旅行者の安全確保が「一番コンセンサスを得やすい」として、外務省が安全情報を旅行者個人に伝達する「たびレジ」と旅行会社のシステム連携の強化を挙げた。

旅行会社は、過去に各国諸税や燃油サーチャージ、国内空港施設料などの代理徴収が導入されてきた経緯がある。志村理事長は、こうした際に「システム改修にとても負担が大きかった」ことを示し、今回の新財源の徴収作業にかかるコスト増への配慮や導入へのリードタイムを設けることなども求めた。

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