最新の「変なホテル」はロボット勤務の医療クリニック併設、澤田氏「次の目標は完全無人化のホテル」【画像】

エイチ・アイ・エス(HIS)のホテル事業会社H.I.S.ホテルホールディングス(HHH)は、2018年4月27日に、「変なホテル東京 浜松町」をオープンした。それに先立ち4月25日には、記者会見と内覧会を開催した。

都内3軒目となる同ホテルは、「快眠・健康・近未来」がコンセプト。ロボットを活用した医療クリニックを併設するほか、世界のトップアスリートにボディケア商品を提供するファイテン社とコラボした空間ごと心身を癒すフロアを設けるなど、変なホテルとして初の要素を多く盛り込む。

HHH代表取締役会長兼社長の澤田秀雄氏は、「出張などビジネス目的で宿泊し、仕事をしながら健康チェック・健康相談ができる便利なホテル。変なホテルは世界一生産性の高いホテルとして日々改善しているが、医療分野でも生産性を高めることができないか」と語り、変なホテルのコンセプトとの親和性を強調。全体での相互シナジー効果に期待を示した。

右)HHH会長兼社長の澤田氏、左)HHH副社長の岩間氏

また、ファイテン社とのコラボによる「ファイテンルームフロア」では、心身をリラックスさせる効果が証明されている同社開発の水溶化メタル「アクアチタン」を、客室や廊下すべてにコーティングし、健康空間のホテルを作る目的で設置した。これも世界初の試みだ。このほか、レイコップ社の布団コンディショナー「Futocon(フトコン)」をホテルで初導入した客室(1室)や、抗菌・消臭効果のある「光触媒グリーン」、消臭・除湿効果のある「珪藻土(天井クロス)」などを採用した。

ホテル館内のロボットは、フロント2台の人型ロボットと、コンシェルジュ的な役割を担うコミュニケーションロボットの「Unibo」、クリーナーの4台。また今回は新たに、館内の案内やタクシー予約、周辺の飲食・観光情報などを、スマホをかざすだけで配信し、予約や決済に対応するサービス「スマートプレート」も導入し、テクノロジー活用による利便性向上も追求する。

客層は、ビジネス客をメインに、インバウンドを含むクリニック利用者の宿泊や観光客も取り込む。全118の客室は8割がシングルとセミダブルの設定で料金は12000円~。当初は8~10人程度で運営をはじめ、他の変なホテル同様に6人程度の稼働を目指す。

ロボットが出迎えるクリニック

医道メディカル代表の陰山氏

2階に開業する医道クリニックは、医道メディカル社がプロデュースする「AI(アイ)ロボクリニック」。診療科目は内科、皮膚科、歯科で、遺伝子や腸内フローラの検査によるオーダーメイドの予防医療や治療を行なう。

ロボットの導入は受付部分で、案内役のPepper(ペッパー)2台と個別ブースのロボホン4台が稼働。通常2人必要なスタッフ数を1人へ省力化し、アプリからの事前予約制によって診察の待ち時間を減らしつつ、キャンセル対策を含むシステムとした。待ち時間にはロボットが健康相談に対応し、健康増進の情報も提供。今後は来院者の医療相談に応じた医師のマッチングや、海外などの医師との遠隔相談なども考えているという。

現在、医療におけるロボットやAI(人工知能)の活用は診断ができるというレベルではなく、受付の省力化につながる予約管理、健康指導サポート、簡易スタッフ教育が主な機能となる。しかし、医道メディカル代表取締役の陰山康成氏は、「女性の働き手が多く、結婚・出産での退職も多い。また、事前予約ではノーショーもある」と医療現場も観光産業と同様の課題があることを示し、ロボットやテクノロジー活用のメリットを説明。受付で症状を告げるのが恥ずかしい来院者の対応や、何度も同じ話をする必要のある治療後の健康指導などでは間違えずに伝えることができるなど、現状でも適する部分が多いという。

陰山氏は、電子カルテやレセプト、在庫管理、経理・会計などを含め、ロボットだけで24時間の受付機能ができる機能の構築を目指しているとも語った。

次の目標は完全無人化ホテル

変なホテルは今回のオープンで計6軒となった。7月には赤坂と浅草橋、10月には羽田と東京圏内で広げ、さらに2018年に大阪に2軒と福岡、2019年に京都など、その他エリアを拡大。台湾やタイ、ベトナムなど海外展開も進めていく。3~5年以内には当初からの目標である、計100店舗にする計画だ。

今後もロボット活用を継続する方針で、澤田氏は生産性を高める効果により、「年間の利益は少なく見積もっても1軒あたり2億円前後。100軒では経常利益ベースで200億円が見込めるが、それより良いと思う」と経営の良好さをアピール。

許認可の問題があるので一概には言えないとしながらも、「次の目標は完全無人化のホテル。関東で作ってみたい。何か発生した場合に30分以内に人が駆け付けて対応する。全てロボットとシステムで対応し、防犯設備もしっかりさせれば実現できる」と意欲を見せた。許認可などがクリアすれば、3~5年以内に達成させる100軒の中に、完全無人化のホテルが実現することも可能だという。

なお、変なホテルではプロパティとリピーターの増加に伴い、2018年3月にポイント制度「変な会員」をスタート。公式サイトからの予約に対し、宿泊料金に応じてポイントを還元し、1ポイント1円で次の宿泊料金に充当できる。

また、シェアサイクルの「コギコギ」とも提携し、サイクルポートとしても展開。今回開業した「変なホテル浜松町」をはじめに、今後すべの変なホテルで同サービスを提供する。


内覧会で見た「変なホテル東京 浜松町」の画像は以下の通り。

▼フロントには人型ロボット2体。男性型は変なホテルで初登場。館内はシンプルなデザインで、シルバーを基調に「近未来」な雰囲気。

▼フロントにはユニロボット社のコミュニケーションロボット「Unibo」を初導入。独自の日常会話エンジンを搭載し、会話を学習する。今回は変なホテル用に、館内案内や周辺店舗の案内などの対応も用意。

▼変なホテルで最上カテゴリの客室、タワービューデラックスツインルーム。高層階では東京タワーが見える。1室2万円~。ベッドに布団を快眠温度33度前後に保つレイコップ社の「futocom」を試せる客室も1室ある。

▼ファイテンルームフロアは、写真の液体「水溶化メタル」を、3階の廊下や壁などフロア全ての建材に含浸させている。青色がチタン、赤色が金を水溶化したもの。

▼「ググらせない」がキーワードのスマートプレート。スマホをかざすだけで画面に該当の情報を配信。今回は館内案内のほか、HISのガイドマッチングTravee、Japan Taxiなどを用意し、予約したサービスの決済にも対応。

▼AIクリニックは近未来をテーマにしたアトラクションのようなデザイン。標榜科は歯科、内科、皮膚科で、医師が健康チェックなどの予防医学的な診療がメイン。公的医療保険適用外の自由診療となる。

▼案内ロボットのペッパーで受付後、各ブースでロボホンが対応。診察の待ち時間の間に、簡易な健康チェックも。電子カルテ、レセプト、決済の対応もロボットがメインで行なう。

▼1階にはオープンスペース付きレストラン「MUGI」を設置。朝はホットドック、昼はテイクアウト可能なフードドラックのランチ、夜は200種以上の世界のビールを提供。ビジネス街である地域の需要も見込む

▼ホテルは14階建て。JR浜松町駅から徒歩2分の同駅から一番近いホテルという好立地。

取材:山田紀子

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