ルフトハンザ航空グループはこのほど、シンガポールと中国・深圳に「ルフトハンザ・イノベーション・ハブ(LIH)」の新拠点を開設した。ここでは「旅行」と「モビリティ」をテーマに、デジタル時代を意識した革新的なサービスを検討。アジアの旅行市場が巨大で将来性が大きいこと、特に中国などで急速にデジタル変革が進んでいることから、両都市への進出を決めた。本国・独ベルリンの同施設のアジア支部という位置づけとなる。
同社では「アジアは当社の中核ビジネスである旅行産業において、成長が著しいマーケット。さらに、デジタル旅行とモビリティソリューションの分野においても、今や世界の先頭を進んでいる」とアジア進出を決めた理由を説明。「イノベーションハブを置き、実際に様々な変革が起きている中で学び、デジタル分野でのパートナーシップを構築して当社の知見も活かしていきたい。目指すのは、航空会社グループとして、世界最高峰レベルのデジタイゼーション」(カーステン・スポール取締役会長)。
そのほか、アジア市場では旅行やモビリティ関連のスタートアップ動向が活発であることも一因として挙げている。2017年実績では、世界のベンチャーキャピタルによる旅行やモビリティテクノロジーへの投資総額の55%(約140億ドル)が中国向け。高額の資金調達も成立しており、最近ではシンガポールのグラブ(Grab)社が10億ドル、中国のハローバイク(Hellobike)社が3億2100万ドルを獲得した。
LIHシンガポールについては、アジア全体を俯瞰しながら、多様な技術エコシステムに参入する拠点と位置付ける一方、深圳ではダイナミックな旅行イノベーションが進行中の中国市場にフォーカスした開発拠点とする方針。また、いずれの拠点でも、ベルリン同様、実験をベースにローカル市場に適した同社独自のソリューション開発を目指したい考え。
航空券予約用オープンAPIを公開、スタートアップ向け説明サイトも
また、ルフトハンザ航空グループでは、航空券の流通においてもスタートアップとの連携を視野に入れた取り組みを展開。2018年6月末にオープンAPI機能を拡張し、他社サイト経由でルフトハンザの航空券を直接予約できるようにした。まずは英国路線を対象に提供を開始し、順次対象マーケットを拡大していく。
オープンAPIとは「企業が提供するAPI(アプリケーションプログラミング・インターフェース)のうち、他社など第三者でもアクセス可能なAPI」のこと。スタートアップが開発した新しいウェブサイトやアプリケーション向けに、ルフトハンザがオープンAPIを提供し、航空券の検索や予約ができるようにするもので、開発者向けの登録手続きやルフトハンザの基本方針を説明したサイトも用意した。
ルフトハンザがオープンAPIを通じて実現したいのは、予約機能を通じて顧客の旅行計画や手続きをシンプルにすること。例えば、産業見本市やイベントチケット情報、国際会議などのウェブサイトやアプリ経由に航空券の検索・予約機能を組み込むことで、ユーザーは複数のサイトを行き来することなく、イベント参加登録から航空手配までまとめて完了できるようになる。
同社では「スタートアップ各社には、ルフトハンザのオープンAPIを利用して、これまで難しかった取り組みに挑んでほしい。革新的なアイデアや新しい旅行ソリューション開発パートナーの誕生につながることを期待している」(LIHシニア・ベンチャー開発マネジャー兼LHオープンAPIプロジェクト責任者、ラインハルト・ラネガー氏)。
なお、LHでは旅行会社や旅行テクノロジーサービス、法人顧客向けには、今年5月からNDCパートナープログラムを提供開始している。