トリップアドバイザーは、同社のデータや利用者へのアンケートをもとに訪日外国人の動向を調査した「インバウンドレポート2019」を発表した。これまではテーマごとにレポートをリリースしていたが、今回はじめて市場全体の動向をまとめた。
レポートによると、トリップアドバイザーで日本の情報へのアクセス数は増加を続けており、2013年からの年平均増加率は24%。最近の傾向としては、インド、イタリア、ニュージーランドなどでアジア以外からのアクセス数が増加しており、レポートの内容を説明した同社シニアリサーチマネージャーの櫻井泰斗氏は「これから攻めるべき市場」との認識を示した。
また、利用者の「検索した日からチェックインの日付までの期間」もマーケットごとに調査。それによると、欧米豪の国はほとんど来日の80日以上前にホテルを検索する一方、近隣アジアでは1ヶ月半ほど前から検索する傾向が明らかになったことから、櫻井氏は「宿泊施設のプロモーションのタイミングで参考なるのでは」とデータの活用を呼びかけた。
タビナカで人気が急上昇する「その土地を知るツアー」
クチコミデータから読み解く訪日客の特長では、各観光施設のランキングを掲載。ホテルの最新傾向としては、オールインクルーシブのホテルと中長期滞在のアパート型ホテルの人気が高まっている。レストランでは肉料理の人気が高く、観光スポットでは引き続き寺社仏閣が上位にランクイン。さらに、昨今注目が集まるタビナカでは、トップ30に初登場した17の体験ツアーのうち12がその土地を知るシティーツアーとなった。
レポートには、9カ国のトリップアドバイザー会員2万1820人へのアンケート調査の結果も掲載されている。それによると、訪日旅行を決める前に際に影響されるモノやコトでは、アジアと欧米豪では違いが表れた。アジアでは花見や紅葉などの季節のイベントがトップだったのに対し、欧米豪では伝統文化が圧倒的なシェアを占めた。個別市場での特長としては、中国はポップカルチャーへの関心が伝統文化よりも高く、他市場との比較でも突出して高い結果となった。
このほか、このレポートではツアー・体験の項目を設けているのも特長。櫻井氏は「モノ消費からコト消費に移行しているなかで、日本の課題としてタビナカの消費を伸ばしていくことが重要」と指摘した。トリップアドバイザーとしても、タビナカにも力を入れているところだ。
2018年にトリップアドバイザー上で予約購入された日本のアクティビティツアーやチケットを見ると、伸び率トップは文化、テーマ別ツアーで前年比132%増。このほか、プライベートツアー、観光チケットとバスなどが上位になっており、櫻井氏は「訪日客にとって日本の文化、食、街歩きなどの興味は高く、今後もこうしたツアーには高い需要が見込まれる」との見方を示した。
外国人に人気の寺社仏閣の登録に期待
ツアーやチケットについては、トリップアドバイザーにサプライヤー登録をしている事業者による販売可能。現在のところ、訪日客に人気の寺社仏閣の入場券や拝観券などは取り扱われていない。
ただ、同社代表取締役の牧野友衛氏は、昨年末からサプライヤー登録に日本語が加わったことから、「寺社仏閣の登録にも期待をしている」とコメント。人気の寺社仏閣ではチケット売り場に長い行列ができることも散見されることら、「販売だけでなく決済も含めて電子化できれば、オーバーツーリズムの課題解決にもつながるのではないか」との見解を示した。
なお、「インバウンドレポート2019」は一般公開されており、下記からダウンロードすることが可能だ。
インバウンドレポート2019