日本旅行業協会(JATA)は、2020年3月期の旅行市場動向調査を発表した。JATA会員および中連協会員の調査モニター登録のある旅行637社に対して、四半期ごとに「旅行市場動向調査」を実施しているもの。今回は2020年2月3日~2月21日にインターネットで実施、311社から回答を得た。
新型コロナウイルスの流行以降では初となる今回の調査では、旅行会社の業況感は前回調査(2019年12月期)から大幅に低下。旅行会社は総じて、新型コロナウイルスの影響をコメントした。今後は現況を底に、回復を見込むものの、6か月後も流行前には至らず、影響は長引くと見ているようだ。
訪日旅行
特に下落幅が大きいのが訪日旅行。業況感は3か月前から81ポイント低下の-77ポイントとなり、海外旅行や国内旅行よりも低い数値となった。国・地域別では、中国(-83ポイント)、韓国(-82ポイント)が突出しているほか、その他の国・地域も-40ポイントから-70ポイントに低下。旅行会社からは「中国からのインバウンドが主だが、新型コロナウイルスの影響で全くなくなってしまった」と「中国本土と地方空港路線が運休になり、受入ができない状況」などのコメントが寄せられた。
今後の業況感は、3か月後は現況から9ポイント上昇の-68ポイント、6か月後には現況から45ポイント上昇の-32ポイントと回復を見込む。多くの方面で回復を見込むが、旅行会社からは「新型コロナウイルスの状況が落ち着かない限り、先行きは不透明」「長引くことによる様々な影響を懸念している」と慎重な見方が多い。
海外旅行
海外旅行の業況感は、3か月前から49ポイント低下の-68ポイント。方面別では、中国(-95ポイント)、韓国(-84ポイント)、アジア(-65ポイント)などアジア方面の下落幅が大きいが、ハワイ(-32ポイント)などを含む全方面で低下した。
客層別では、業務渡航を含む団体旅行のみならず個人旅行も-50ポイントから-65ポイントと低下しており、ビジネス需要・レジャー需要ともに大きな影響を受けている。旅行会社からは「海外旅行全体に影響を受けている」「手控えムードが大きく影響している」と、旅行者の動きが止まっていることを示唆するコメントが見られた。
今後の業況感は、3か月後は現況から5ポイント上昇の-63ポイント、6か月後は現況から30ポイント回復の-38ポイント。方面別を見るとハワイや欧州、豪州、ミクロネシアは回復が遅れる見込み。旅行会社からは手控え感を懸念する声のほか、「オリンピックがある関係で7~9月の海外旅行が大幅に減少すると思われる」と新型コロナだけではない影響を見据えた声もあった。
国内旅行
国内旅行の業況感は、3か月前から35ポイント低下の-46ポイント。方面別では北海道が37ポイント低下の-46ポイントとなり、下落幅が大きかった。客層別では個人旅行で、シニア(-42ポイント)がファミリー(-53ポイント)やOL(-57ポイント)、学生(-56ポイント)など他の客層よりも10ポイントほど高かった。
今後の業況感は、3か月後は現況から8ポイント上昇の-38ポイント、6か月後には現況から23ポイント回復の-23ポイントになる見込み。旅行会社からは「終息すれば徐々に回復の軌道に乗ると期待している」との見方があるが、「ゴールデンウィークの日並びの影響で、昨年より予約数は減っている」と、新型コロナに関わらず影響のあった部分を指摘する声もあった。
なお、同調査は質問事項に対して「良い」「普通」「悪い」「取り扱っていない」という評価を求め、「良い」の割合と「悪い」の割合の差分を算出して景気動向指数(DI:ディフュージョン・インデックス)として発表している。DIの範囲は「全て良い」が100、「全て悪い」が-100となる。