ヨーロッパ各国が3ヶ月に及んだロックダウンを経て国境再開に向けて動き出している。しかし、規制の多くは継続されたまま。AP通信では、今夏、ヨーロッパ人が、本当に旅行に出かけるのかどうかは依然として不透明として現状を伝えている。
ドイツとフランスなどヨーロッパの多くの国が2020年6月15日、EU27カ国、イギリス、そのほかスイスなどを含むシェンゲン協定国からの旅行者の受け入れを始めた。一方、米国、アジア、南米、中東からの旅行者の受け入れはまだ先になる。7月にもヨーロッパ以外の地域からの入国制限を緩和すると言われているが、詳細はまだ不明で、おそらくもっと遅くなると見られている。
フランスのマクロン大統領は、入国制限の緩和について「自由の味を再び味わってほしい」としながらも、「ウイルスが消滅したわけではない。警戒を緩めてはいけない。今年の夏はいつもの夏とは違う」と警告することも忘れていない。
ジョーンズホプキンス大学によると、ヨーロッパでは、世界の感染者数790万人うち200万人を占め、死者は18万2000人に及んでいる。
スペインは、最も深刻な影響を受けた国のひとつだが、当初の計画から10日早めて6月21日に国境閉鎖を解除すると決めた。サンチェス首相は、「パンデミックをコントロールしつつあるが、国境の再開は重い決断だ。ウイルスの脅威はまだそこにある」と警戒を呼びかけている。
スペインやギリシャのように、経済を観光に依存しているような国にとって、観光産業の復興は切実だ。スペインは、正式な国境開放の前に実験的な取り組みとして、6月15日にドイツからの数千人の観光客を、14日間の隔離を免除して、バレアレス諸島に受け入れた。サンチェス首相は、「この実験的な取り組みは、今後の対応に生かされるだろう。スペインは安心安全な観光デスティネーションだと世界に知ってもらう必要がある」と述べている。
入国制限の緩和が進むとはいえ、すべての旅行者がどこにでも行けるというわけではない。依然として入国規制を続けている国もある。たとえば、デンマークとノルウェーは、スウェーデンとの国境は閉鎖したまま。集団免疫の獲得という政策をとってきたスウェーデンでは、人口あたりの死者数が依然として高いためだ。
ドイツとデンマークとの往来は再開されたが、ドイツからデンマークに入国できるのは、デンマークで最低6泊の宿泊施設を予約している旅行者に限られる。
イギリスは6月中旬になって、入国者への14日間の隔離要請を始めた。そのため、フランスは引き続きイギリスからの入国者に対しては同様の措置をとる。また、今回の入国制限緩和ではイギリスを除外する国も多い。
国境開放の動きが加速するものの、航空便の回復は緩やかで、第2波、第3波の懸念も強い。観光地でのソーシャルディスタンスの確保は難しく、なによりも失業や給与カットなどで海外旅行に出かける経済的余裕がない人も多いことから、多くのヨーロッパ人は、ステイホームを継続するか、国内旅行を楽しむことになると見る識者も多い。