航空会社や宿泊施設などでは、withコロナに対応した新たなサービスを開始している。各種ガイドラインを基本にしながらも、新しい衛生概念を持った消費者に対応するために生み出した施策やサービスには、各社の創意工夫が見てとれる。現在までに確認できた各事業者の取り組みや傾向をまとめてみた。
航空会社:接触機会を減らす取り組み
withコロナで搭乗体験はどう変わるのか。航空会社の利用者向けサービスでは、乗務員や乗客同士の距離を保ち、ヒトやモノと接触する機会を減らす方向へシフトしている。
チェックインは事前のオンラインチェックインを推奨。自動チェックイン機でも、アプリやバーコードを活用したタッチレス化が推進されている。乗客側にはマスク着用を徹底。荷物は最小限に減らすよう呼びかけ、特に機内持ち込み荷物は頭上ロッカーの出し入れを控えるため、座席下に収納できる量にまとめるように要請をする航空会社もある。
機内では乗客に消毒用シートなどを配布するほか、手指消毒剤、ペットボトルの水、マスク、スナックなどをパックにして提供するサービスも増えている。ドリンクやミールサービスは、政府当局の規制や接触する機会や時間を減らす目的で、制限を設ける航空会社が多い。
また、機内エンターテイメントは、雑誌や新聞、座席ポケット内の冊子の配布を中止。代わりに、航空会社のアプリを通し、搭乗客自身のモバイルデバイスで機内エンターテイメントシステムを楽しむスタイルが増えそうだ。これに加えシンガポール航空ではアプリを通し、運航都市の入国制限措置や入国後の行動制限に関する情報を、乗客の予約に応じて提供することにも取り組んでいくという。
このほか衛生対策では、ユナイテッド航空が全乗客に対し、過去14日間にコロナの症状がないことを確認するチェックシートを導入し、チェックイン時に実施する。エア・カナダではすべての空港で、乗客に対する赤外線放射式の体温測定を行なう。今後は血中酸素濃度測定など検査ツールの使用頻度を増やしていく方針だ。なお、ユナイテッド航空やエア・カナダでは、こうしたチェックにより旅客が旅行を取りやめる場合、別便への変更に対応するという。
こうした衛生対策で各社は積極的に情報を発信。アメリカン航空では、日本語字幕つきで動画も公開している。
宿泊施設:新たなホスピタリティが始動
宿泊施設では各種ガイドラインのもと、新たな衛生・清掃基準での運営が始まった。客室はもちろん、館内各所の清掃・消毒作業を徹底するほか、フィジカルディスタンスを促すサインを掲示したり、ロビー等のパブリックスペースではより空間が保てるよう、家具等の配置を変更するなどの工夫も始まっている。もちろん、スタッフはマスク着用で接客する。
これ以外にも例えば、世界最大のホテルチェーン・マリオットではグループ内3200軒以上のホテルで、希望者にモバイルアプリでの「タッチレスサービス」を提供。従来からある宿泊客のスマホによるチェックインや客室ドアの開錠に加えて、ルームサービスは料理を包装し、客室ドアの目前に届けるという。
また、プリンスホテルでは、清掃済みの客室のドアにシールを貼付する取り組みを開始した。客室に入る宿泊客に、清掃・消毒後に誰も入室していないことを伝えるのが目的だ。また、敷地が広大な軽井沢プリンスホテルでは、コテージの宿泊客を対象に車の中で手続きができる「ドライブスルーチェックイン」も開始した。こうした取り組みは、withコロナ時代に誕生した新たなホスピタリティと言えるだろう。
日本では星野リゾートが比較的早い段階で、コロナによって変わった宿泊客に対応するための「3密回避」のおもてなし対策の必要性を掲げ、各施設での取り組みを開始。3月上旬から食事ではビュッフェ対策や客室へのテイクアウトなどを行なってきた。現在では、一部施設のプールや大浴場の混雑状況を宿泊客のスマートフォンに表示できるシステムも導入している。同リゾートの星野代表は、「3密回避の旅=安心安全の旅」ができることを、宿泊施設が説得力を持って伝える大切さを訴えている。
OTA:各社の感染症対策の表示がサービスに
OTA(オンライン旅行会社)の旅行販売にも変化が生じている。
世界大手のブッキング・ドットコム(Booking.com)では、「宿泊選びの新たな基準になる」とし、各宿泊施設の「健康・安全に関する取り組み」の表示を開始。「セキュリティ」「ソーシャルディスタンス」「清掃」「フード&ドリンクに関する安全対策」の4つのテーマごとに数個のチェック項目を設け、各施設が行なっている対策を表示するというもの。ブッキング・ドットコムでは、旅行が再開される際には、消費者にとって宿泊施設の健康・安全の取り組みは重要であり、不可欠なものと説明。このニーズに対応し、宿泊予約の信頼性を高めるために、今回の表示を行なったとしている。
また、宿泊予約「ゆこゆこ」でも、衛生管理と3密回避を行なう宿泊施設に表示を開始した。6つの基準からなる独自のチェック項目を作成し、同サイトの営業担当者が宿泊施設に直接確認。その結果を、一目で対策内容が分かるアイコンで表示する。掲載を開始した6月9日現在で、953施設のページに感染症対策のアイコンが表示されているという。
トリップ・ドットコム(Trip.com)ではホームページ上で、「新型コロナウイルスから身を守るための海外旅行ガイド」を公開。利用者が入力した旅行先の渡航制限や感染症流行状況などを自動で表示するもので、安全に旅行するための情報を伝えるツールとして提供している。
このほか、タビナカ事業者もこの状況に対応している。タビナカ関連の事業者は中小・個人の経営者も多く、ガイドラインが整備されていなかったり、ガイドラインがあっても施設側が運用するには課題がある場合が多い。
現地オプショナルツアー専門予約サイト「ベルトラ」は、 現地ツアーやアクティビティの催行にあたり、催行会社とユーザーのそれぞれに訪問先の選定に留意する安全基準を策定。健康管理、衛生管理、ソーシャル・ディスタンスの確保、オンラインによるタッチレスソリューションなど、双方向の安全基準を策定することで、旅行者が安心して旅行計画を立てられるようにする。
タビナカ予約「アソビュー」は、サイト上で取り扱うタビナカのレジャーや観光施設を対象に、対策済みの施設の表示を開始。感染予防講習のプログラムも作成している。