日本政府観光局、インバウンド回復へのプロモーション方針発表、市場ごと・段階を踏んで、国内旅行の回復が前提

日本政府観光局(JNTO)は定例の会見でコロナ禍でのインバウンド施策について説明した。今後、BtoC、BtoB双方への継続的な情報発信を続けながら、各国との出入国規制緩和の状況を踏まえて、市場ごとにプロモーションを再開していく方針だ。

説明に立った金子正志理事は、「インバウンドの受入環境を整えるためには、国内旅行の回復が前提。そのなかで、外国人受け入れに対する国内の理解が必要になってくる」と述べ、JNTOとしては、他国の海外旅行再開の状況に左右されず、冷静にプロモーション再開のタイミングを図っていく考えを示した。

また、プロモーション再開の順序としては、感染収束状況や距離的な観点から「当然ながら東アジアが最初になるだろう」とし、その後、東南アジア、欧米豪へと広がっていくと想定。現時点では、日本への関心をつなぎ止めるための情報発信に努め、再開のタイミングを極めながら、地域の感染防止対策の取り組みを発信するとともに、イメージ訴求の広告を打っていく。実質的な誘客プロモーションやメディアなどの招請事業は、その後になるとしたが、具体的な時期については明言を避けた。

金子氏は、withコロナでのトレンドの変化についても言及。感染防止対策やオンライン予約・購入の加速化など今後変化していくものもあるが、日本の観光の魅力は変わらないと強調した。しかし、「感染リスクを前に海外旅行のハードルは上がっている。日本に来てもらうためには、特別な目的やテーマが重要なる」と述べ、訪日市場の回復に向けては、旅行への強い動機づけが求められるとした。

訪日市場回復に向けて、JNTOは地域との連携もさらに強化していく。今年5月下旬に実施した日本国内の地方自治体や事業パートナーへの調査によると、訪日プロモーション再開の時期については、日本政府の入国制限解除後が最も多く55%。ついで国内旅行回復後が30%となった。

また、ターゲットとする市場については、東アジア、東南アジア、欧米豪でほぼ同数の回答を集めたという。金子氏は「この結果はJNTOの方針に沿うもの。今後も一本足打法ではなく、多角的に誘客プロモーションを進めていく」と述べた。

そのうえで、withコロナ時代での観光地域づくりでは、「時代の要請を先取りする対応を今のうちに進めていくことが大切ではないか」と提言。具体的には、需要の平準化やオーバーツーリズムなどによる地域負担の軽減、多様な旅行者の受け入れ態勢強化、環境への配慮などを挙げ、「世界が注目しているSDGsへの取り組みは、将来的に『選ばれる観光地』になるための重要な要素」と指摘した。


このほか、JNTOが任命するMICEアンバサダーを対象とした調査結果をもとに、MICE市場での取り組みについても説明した。調査によると、ほぼ100%が「国際会議の開催形態に変化が生じる」と回答。具体的には、リアルとオンラインとのハイブリット化(75%)、主催者側に感染防止対策が求められる(70%)、感染防止策がある開催地が有利(60%)、大規模会議の細分化(40%)が挙げられたという。

金子氏は「機密防止などの観点から、ハイレベルな会議ほどオンライン化は困難だろう。人的交流が必要なものはリアルの開催に戻る」と発言。JNTOとしては、MICEを「極めて重要な市場」と位置づけていることから、今年6月末をめどに特設ウェブページと日本語フェイスブックアカウントを開設する予定。オンライン会議やハイブリッド会議のノウハウや安心安全な会議運営などの情報を発信し、会議主催者を支援していく考えだ。

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