トリップアドバイザーはこのほど2020年第2四半期の業績について、概況を明らかにした。需要の底は4月に打ち、その後は少しずつ回復基調にある。旅行マーケットがコロナ危機以前のレベルへ回復するまでの道のりは「まだ予測が難しい」状況だが、「旅行のリバウンドは必ず起きる。それまで、どのようなシナリオになっても対応できる態勢を整えている」(同社)としている。
2020年第一四半期は、売上が前年同期比26%減の2億7800万ドル(約297億5000万円)、純損益は1600万ドル(約17億円)の赤字だったが、コロナ危機が深刻化したのは3月後半からで、以降、検索や予約を含むあらゆる旅行関連の消費行動が減退していった。
トリップアドバイザーの場合、需要の底は4月で、同月のユニーク・ユーザー数は前年同月比で約33%。その後、5月は同45%と少し上向きに転じた。5月のユニーク・ユーザー数は前月比で38%増。続く6月も、5月を上回る勢いで推移している。
売上ベースでは、4~5月の合計額は前年同期の10%ほどだったが、6月は同20%まで回復する見込み。しかし四半期決算では、2020年第2四半期は、同第1四半期をさらに下回る見込みで、調整後のEBITDA(諸費用・税引き前利益)は約8500万ドル(約91億円)の赤字となる見通し。
こうしたなか、今春に発表の通り、全従業員の2割以上に相当する900人の人員削減を始め、当面の需要に見合ったコスト構造への転換を急ぐ。同四半期決算は8月初旬に発表する予定。
ビアターは「質」重視へ、新規掲載に手数料も
一方、トリップアドバイザー傘下のタビナカ予約サイト「ビアター」では、今夏をめどに、数よりもクオリティ重視へと大きく方針を転換する。その一環として、これまではなかった掲載の基準を設けるほか、今年8月以降、新しく掲載する商品には、事前チェックや掲載に向けたサポート業務などの手数料として29ドルを課す。これまでビアターへの掲載は無料で、成約した分にコミッションを徴収する仕組みだった。
ビアターのベン・ドリュー社長は、6月下旬に発表した声明で、ビアター創業から25年たち、掲載プロダクト数が39万5000件に膨れ上がるなか、ユーザーとサプライヤー事業者双方にとって、使い勝手や効率性の良いプラットフォームに改善する必要が生じていたと指摘。従来よりも掲載内容のキュレーションを強化することで、ライバル他社と差別化したタビナカ商品のマーケットプレイスを目指す考えだ。
具体的には、掲載の基準となる「プロダクト・スタンダード」を「エクセレント」と「グッド」の二段階で定め、いずれの条件も満たしていないものは、掲載不可とする。スタンダードの内容は、掲載画像の数やクオリティ、催行キャンセル率、レビューの数など。エクセレントの認定を受けるには、4時間以内の予約確定または予約システムへの接続も必須となる見込みだ。
また常に一定以上の質を保つために、新規掲載の手順を一新する。ビアターの担当者が事前にプロダクトに関する掲載情報を確認し、必要な場合は、商品の打ち出し方などをサポート。これに伴う手数料として29ドルを徴収する。ただし、今年8月1日までは同手数料は免除する。
手数料は事業者ごとではなく、掲載するプロダクト毎に必要となるため、例えば販売するツアーの種類が多く、今夏までにすべて揃えられない場合、負担の増大が懸念される。世界的に旅行需要が厳しいタイミングで、新たな費用負担を求める決定を疑問視する声もある。
ビアターでは、実施スケジュールや内容について、事業者の意見も参考にしながら、これから詳細を決めていくとしている。
※円換算は1ドル107円でトラベルボイスが算出