旅行自由化からわずか数週間、再び危機に直面する欧州の観光産業、各国の感染者数急増で規制を再強化

(写真:AP通信)

ヨーロッパの観光産業は、国境開放からわずか数週間で、再び大きな困難に直面している。スペインをはじめ多くの国で感染者が再び増加。各国の保健衛生当局は、夏休みから帰国する旅行者がウイルスを持ち帰っていることに懸念を募らせている。

ヨーロッパ各国は6月中旬から国境閉鎖の緩和を進めてきたが、旅行の自由化が逆戻りしかねない状況だ。イギリスは、スペインからの帰国者に対して14日間の自主隔離を義務化。ノルウェーはイベリア半島からの帰国者に10日間の自主隔離を求め、フランスも国民に対してカタルーニャ州への渡航を控えるように呼びかけている。

オーストリアの湖畔のリゾート地セント・ウォルフガングでは、バーの営業時間を短縮。7月27日までに53人の陽性者が確認され、その多くが観光産業従事者だった。

ドイツでは、トルコなど感染リスクの高い国からの帰国者向けに、空港にPCR検査場を設置することを決めた。また、政府は海外からの帰国後3日間以内であれば他の場所でも無料検査を受けられるにするという。

休暇から帰国する旅行者の感染を心配するドイツ・バイエルン州のマーカス・ソエーダー知事は、今年3月に感染のホットスポットとなっていたオーストリアのスキーリゾート、イシュグルになぞって「私が心配しているのは、ひとつの大きなイシュグルができることではない。小さなイシュグルがたくさんできることが心配だ」と話している。

ドイツのジンズ・シュパーン保健相は、「旅行者が帰国後、他人に感染させることを防がなければならない。さもなければ、感染経路不明のケースが増えてしまう」と警告し、リスクの高い国からの帰国者には検査を義務付けると7月27日に発表した。この措置は8月第1週から開始される見込みだとドイツの通信社は伝えている。

ヨーロッパの他の国でも状況は悪化。ベルギーではアントワープで感染者が急増するなど、警戒レベルにまで感染が再拡大。ギリシャ政府は、教会やショッピングモールでのマスクの着用義務期間を延長した。

スペインの観光産業も再び窮地に追い込まれている。260万人の雇用を生み、国内経済活動の12%を占めるが、3月以降週当たり約50億ユーロ(約6190億円)もの観光収入を失っているという。

スペイン政府は、イギリス政府に対して、14日間の自主隔離について、感染者が少ないバレンシア諸島からの帰国者は対象から外すように求めている。実際のところ、バレアレス諸島やカナリー諸島の感染者率はイギリスよりも低い。レジェス・マロト観光大臣は「我々はウイルスとともに生きている。それは、旅行はできないという意味ではないはずだ。十分に気をつければ、旅行はできる」とコメントしている。

イギリス政府が唐突にスペインを安全国リストから除外したことは、イギリス国内でも批判が噴出している。この決定により、多くの旅行者が休暇の計画を変更せざるを得なくなり、復活に向けて動き出した旅行業界のビジネスも再度止めることになるからだ。

ヒースロー空港の幹部は、到着時あるいは数日後の検査で陰性であれば、免除国以外の国からの帰国でも14日間の自主隔離は緩和されるべきだと主張。同空港は、今年上半期には11億ポンド(約1507億円)の税引前損失を計上している。

アフリカやアジア太平洋でも移動の警戒強まる

状況悪化はヨーロッパに限った話ではない。モロッコでは、感染拡大を防ぐために、タンジェ、カサブランカ、マラケシュなど主要都市間の移動が禁止された。

アジア太平洋でも多くの国が、事実上外国人の入国禁止を継続。入国が許可されても、PCR検査と厳しい隔離を求めている。オーストラリアもそうした国のひとつだ。

韓国では、7月27日に確認された感染者25人のうち16人が海外からの帰国者との接触者。数週間前にも、ロシア船籍の貨物船の乗組員から数十人の感染者が発見され、イラクから帰国した数百人の韓国人建設作業員からも感染者が確認された。

世界保健機関(WHO)は、過去6週間で世界の感染者数は倍増しており、パンデミックは加速しているとの見解を示す。WHOのマイケル・ライアン博士は「ウィルスへの警戒は続けるべきだ。一国でもその警戒を緩めれば、感染は再び世界で急増する」と警鐘を鳴らしている。

※ユーロ円換算は1ユーロ123円、ポンド円換算は1ポンド137円でトラベルボイス編集部が算出

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