日本政府観光局(JNTO)が認定する観光案内所とは? インバウンド再開後を見据える三朝温泉観光案内所スタッフに最前線の取り組みを聞いた(PR)

コロナ禍で停滞している訪日インバウンド市場。だが、入国制限の解除後には、静まり返った水面の下で海外旅行に出かけたいと待ちかねていた人々の想いが、強いうねりとなっていくはずだ。今、手にしている静かな時間は、やがてまた押し寄せる波をキャッチし、地域へと呼び込むための「貴重な準備期間」と話すのは、鳥取県・三朝温泉観光協会が運営するJNTO認定外国人観光案内所(以下、認定案内所)の三朝温泉観光案内所で活躍するリエヴェン・アントニー氏。今やっておくべきこと、認定案内所として体制を整えるメリットとは?

逆風下で実現した認定案内所のカテゴリーアップ

コロナ禍の真っただ中にあった6月末、鳥取県・三朝温泉観光協会が運営する認定案内所では、一年前から進めてきたパンフレットやウェブサイト、窓口での案内サービスの多言語化(英語対応スタッフの常勤)などの体制が整い、JNTOによる認定カテゴリーを、それまでの「カテゴリー1」から、一つ上の「カテゴリー2」へとアップした。きっかけとなったのは、フランスのノルマンディー地方から三朝町にやって来て、この歴史ある土地に魅せられ、今では地域の一員として地元の観光振興を支えているリエヴェン・アントニー氏の存在だ。

JNTOでは、訪日旅行者を対象とした認定案内所について、多言語化や年間の開所日数、サービス内容などに基づいて、計4段階のカテゴリーに分けて認定する制度を2012年からスタート。他の業務との兼任が可能な「パートナー施設」と、観光案内の専任スタッフが常駐している「カテゴリー1~3」が設定されている。さらに4年前からは、オンラインでの認定申請を受け付けるなど、運営手法を効率化。2020年9月末時点で日本全国に計1427か所ある。政府は、今年12月末までに認定案内所の1500か所達成を目標に掲げている。

認定カテゴリーが上になるほど、求められる条件の難易度は増す。だがインバウンド対策に力を入れるべく、スタッフを募集していた三朝温泉観光協会では、昨年、フランス語、英語、日本語に堪能で、IT知識もあるアントニー氏を迎え入れると、早速、一つ上の認定カテゴリー取得を目指して動き出した。

例えば、外国語に訳してはあるものの、作成したのが10年以上も前で、内容が古くなっていたパンフレットや散策マップを刷新したり、旅行者対応を多言語化するため、韓国語や中国語に翻訳できる機器、ポケトークを導入。またウェブ制作に精通した人材がいないせいで、リニューアルが進まなかったホームページも、使用する画像やレイアウトのデザインを洗練していった。

三朝町の観光情報を世界に発信するアントニー氏。映像やIT分野に強いことも今の仕事に役立っている。

アントニー氏にとって、三朝町は第二の故郷だ。もともと映画「七人の侍」を観て、日本に関心を持ち1年ほど留学。フランスで大学院を卒業すると、今度は2011年から5年間、JETプログラムの国際交流員となり、その時に派遣されたのが三朝町だった。

「JETプログラム終了後、いったんIT関係の仕事に就くために三朝町を離れたが、ずっと三朝に戻りたかった。2019年に三朝町でインバウンド誘致の情報発信を担当する地域おこし協力隊を募集していると知り、戻ってきた」とアントニー氏。

三朝町は人口6400人ほどの小さな町。訪日旅行者からは、「まるでジブリ映画の世界に入り込んだよう」といったコメントがSNSに投稿される。温泉街が有名だが、訪日旅行者に最も刺さるキラーコンテンツは、三徳山の岩肌に建てられた国宝「投入堂」の絶景。2015年には、日本遺産の第一号に指定されており、訪日旅行者の9割は、「投入堂」を目当てに訪れる。海外のガイドブックでも紹介されているが、インターネット上での情報提供は少なかったため、アントニー氏はまず、三朝温泉観光協会の日本語のホームページで、こうした訪日旅行者が関心を持つコンテンツの拡充に着手。これを軸に、多言語化やSNS展開を進めていった。

訪日旅行者から人気が高いのは、国宝としては「日本一危ない」場所にある「投入堂」。

JNTOの認定案内所になるメリット

外国人観光案内所として、JNTOから認定を得ると、様々なメリットを享受できるようになる。認定のシンボルマークは日本政府のお墨付きの証であり、訪日旅行者からの信用がアップするほか、JNTOが海外向けに展開しているグローバル・サイトや、訪日旅行者向けの観光情報アプリにも、認定案内所として掲載される。

現場で日々、インバウンド対応に携わるアントニー氏にとって、認定の最大のメリットは「JNTOや他の認定案内所から得られる情報」だ。JNTOからは月に2回、メールマガジン「ビジット・ジャパン案内所通信(V通信)」が配信されるほか、認定案内所限定のウェブサイトにアクセスでき、案内業務に役立つ情報が入手できる。

他の認定案内所が実施した案内や取り組み事例、課題を共有できることも、アントニー氏は高く評価している。JNTOでは、認定案内所を対象としたセミナーを、全国レベルでは年1回、地区ブロック別では年に5回ほど開催しており、各地の状況を学んだり、少人数に分かれて、お互いの悩みを話し合ったりできる場を提供している。9月に開催した全国向けのオンライン・セミナーでは、アントニー氏も自身のこれまでの経験について講演。参加した他の認定案内所スタッフからは、「地域のことを想う心がとても強く感じられた」などの感想が寄せられ、大きな反響があった。

コロナ危機でインバウンド市場が逆境下にあるからこそ、認定案内所どうしの横のつながりが、いっそう重要になっている面もある。セミナーを主催したJNTO地域連携部受入対策グループの竹島克恵氏は「コロナ禍でストレスや孤独を感じている認定案内所の方々が、アントニーさんの日々の認定案内所での取り組みを聞いて元気をもらい、モチベーションを取り戻したのではないか」とも感じた。

三朝温泉の認定案内所カウンターにて。

認定案内所にやってくる旅行者の話を直接、聞くことも、貴重な情報収集になっている。旅行者との会話を通じて、三朝町の印象を聞いたり、何か必要なものはないか考えるヒントが得られるからだ。「自ら情報を発信するだけでなく、相手の話を聞くことも、案内所の大切な役割」とアントニー氏は指摘する。

「カテゴリー1~3」の認定案内所は毎月、「パートナー施設」は年1回、JNTOへ活動実績を報告する必要がある。だがこの業務も、アントニー氏にとっては、現在の状況や今後の課題などについて、頭の中を整理するのに役立っている。最近の気づきは、コロナで訪日旅行者はいないが、日本在住の外国人は時々やってくることをレポートに書きながら、「そうだ、日本在住の外国人向けに何かできることはないか?」と考え始めたことだ。

旅行者に響く地域のストーリー作り

コロナ前まで、アントニー氏の日常業務は、認定案内所での旅行者対応が中心だったが、旅行者が減った分、空いた時間を活かし、新しいことにも挑戦している。以前から時間があれば外に出て、訪日旅行者向けに発信する素材を探し歩いていたが、今は三朝町全域をドローン撮影し、四季折々の動画素材を集めて、町のドキュメンタリーを作成中。「映画や映像に興味があるので、つい力が入ってしまって、予定より長編の作品になりそう」と話す表情は、とても充実している。

地域住民を意識して企画した秋のイベント。ポスターのビジュアルは「不思議の国のアリス」をイメージした。

10月末には、国内旅行者や地元の人たち向けのイベントを企画した。約1時間かけて温泉街を中心に散策するコースを巡り、クイズの答えを探しながら、三朝町についてより詳しくなる趣向。実は以前、地元の人から「観光協会のイベントには、地域住民が楽しめるものがない」と言われて気になっていた。地元の人も訪日旅行者も、一緒に楽しめる活動を実現できたら理想的だと考えている。

アントニー氏には、個人的な目標もある。認定案内所の活動が奏功し、三朝町への観光客数が少しでも増えることだ。昨年の宿泊者数は年間30万人と、平成8年の55万人から大幅に減少し、厳しい状況が続いているが、訪日旅行者数は好調で、2018年は過去最高の2万人。コロナ危機を経た今も、町の活性化のカギは、インバウンド振興にあるとアントニー氏は考えている。

「三朝町への旅行者が、国内外から増えるようにすることが、たくさんの素晴らしい経験や思いやりを私にくれた町や地域の人々への恩返しになる。それが三朝町に戻ろうと思った理由の一つでもある。認定案内所での私の仕事が、町への訪問者数を増やすことにつながったり、新しい魅力を知ってもらうのに役立っていると感じることが、私にとってのやりがい」と話した。

「六根清浄と六感治癒の地、三朝には、五感と心を癒すストーリーがたくさんある」とアントニー氏。認定案内所には外国語のパンフレットや資料が充実している。

やがて動き出す訪日旅行客のために

JNTOによると、2019年度は一カ月平均で30件近い認定案内所が新規に登録となり、その数は順調に増えていた。コロナ禍でこうした動きは、以前に比べて鈍化傾向にあるが、「海外からの訪日旅行者は、いずれ間違いなく戻ってくる。その時、訪日旅行者を歓迎できる体制が、受け入れる地域側で整っているだろうか」と竹島氏は危機感を抱く。

訪日旅行者がほぼゼロという中で、観光産業を維持するためには、国内旅行者の誘致に注力する必要があり、自治体にとって、インバウンド対策の優先順位が相対的に低下することはやむをえない。だが「長期的な展望に立てば、今のうちに将来に備え、認定案内所として登録したり、他の認定案内所の取り組みを学ぶなどして、受け入れ体制を整えておくべき。このコロナ禍の時間をどう過ごすかは、今後の日本のインバウンド振興にとって、非常に重要になる」(竹島氏)と訴える。

認定案内所に登録している施設はさまざまだ。三朝町のような自治体や観光協会に加え、空港、鉄道駅、道の駅、ホテル、旅館、旅行会社など。他のビジネスとの兼業が認められている「パートナー施設」では、コンビニエンスストアが認定を受ける例も増えている。今年1月には、インバウンド対策に力を入れる長崎県がセブン-イレブン・ジャパンと『訪日外国人旅行者等の受入環境整備に関する協定』を締結し、同県下のセブン-イレブンが多数、JNTO認定案内所の「パートナー施設」として認定を受けるという画期的な動きもあった。

あらゆる場面で、デジタル対応が必須の時代だが、「訪日旅行者対応では、最終的には人と人との関わりが何より重要」と、アントニー氏も竹島氏も強調する。「笑顔で対応してもらった、地域に歓迎してもらったという体験から、訪日旅行者が地域や日本のファンになり、特定の案内所や地域、そして訪日リピーターになる。最前線に立つ認定案内所の方々は、地域のコンシェルジュであり観光大使のような存在。本当に大切な仕事であり、より多くの方に知ってほしい」(竹島氏)

マーケティングの視点に立てば、認定案内所は、訪日旅行者の「生の声」に触れる貴重な機会とも言える。旅行者の年齢や国籍、旅の目的など、今後の活動に役立つ貴重なデータの宝庫でもある。JNTO地域連携部では、認定案内所で得られるこうしたデータの活用法も、今後、検討していきたいと考えている。

訪日インバウンド市場が再び動き出せば、FIT化がさらに加速し、訪問先がますます広がっていくことは、想像に難くない。一極集中からさまざまな地域へと旅行需要を分散することは、日本側にとっても長年の課題解決になるが、同時に、地方の路線バスの乗り方や、空いた時間の過ごし方など、現地できめ細かく旅行者をサポートする認定案内所は訪日旅行者にますます頼られる存在となっていくだろう。

認定案内所の申請から認定までの手続きでは、万一、申請内容に不備があった場合でも、JNTOの担当スタッフが修正方法などを案内し、無事に認定されるまでサポートしている。認定案内所として登録する準備は、そのままインバウンド受け入れに必要な体制を整えることにもつながる。認定後に受けられる各種の情報提供やセミナー参加などはすべて無料だ。

なお、観光庁は外客受入に係る補助事業において、JNTOの認定案内所が行う設備の設置、施設の整備、改良等に要する経費の一部を支援している。

広告:日本政府観光局(JNTO)

問い合わせ:ukeire@jnto.go.jp  (JNTO地域連携部受入対策グループ)

編集・記事:トラベルボイス企画部

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