2025年1月20日、米国でドナルド・トランプ大統領は、就任後、早速、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」から離脱する大統領令に署名した。米観光産業ニュース「Skift(スキフト)」が、その影響を旅行・航空会社に取材した。
サウスウエスト航空は、トランプ大統領1期目に米国がパリ協定から離脱した時、脱炭素目標を掲げていなかった点を指摘。しかし、同航空は、2021年に2035年までに炭素排出量を50%削減し、2050年までにCO2排出量実質ゼロを達成するという気候目標を発表した。広報は、「2050年までにCO2排出実質ゼロという業界目標は、2021年にIATA、米国航空会社連合(A4A)および米連邦航空協会(FAA)、2022年に国際民間航空機関(ICAO)によって採択されたもの」との認識を示した。
サウスウエスト航空と同様に、ほとんどの航空会社は、バリ協定ではなく、国際航空運送協会(IATA)が設定した目標に従っているのが実情だ。
Airbnbなど多くの企業に短期宿泊賃貸プラットフォームのソフトウェアを提供しているHostfully広報は「米国がパリ協定に参加するかどうかにかかわらず、Hostfullyの姿勢は変わらない。これは当社の価値観と文化の中核。予算とコスト(および人員)を削減した時期でも、そのコミットメントを維持してきた。当社にとって譲れないものだ」とコメントしている。
「航空会社だけでできるものではない」
世界最大の航空会社であるアメリカン航空は、新政権下でも気候目標を堅持する意向だ。
昨年11月にダラスで開催されたSkift航空フォーラムで、ロバート・アイソムCEOは、気候変動に対するトランプ大統領の姿勢によって、航空会社の気候コミットメントが変化すると予想しているかと尋ねられ、「それはない。環境保護は本当に重要だ」と答えた。
「私たちの考えが変わるとは思えない。業界として私たちは皆、2050年の排出量実質ゼロを目指しているが、やるべきことは山ほどあり、政府と業界からの投資が必要になる。航空会社だけではできない」と強調した。
前回のパリ協定離脱の際は、何が起きた?
米国が2017年にパリ協定から離脱したとき、50以上の気候変動政策が元に戻された。米国は中国に次いで世界で2番目の温室効果ガスを排出国だが、カーボン・アクション・トラッカーの調査では、この後退でも2030年の温室効果ガス排出量はわずか3%という結果がでた。
環境保護庁(EPA)によると、米国の温室効果ガス排出量は年によって変動はあるものの、一般的には年々減少している。2023年の排出量は1.9%減少し、1969年以来の最低水準となった。
ただ、新政権の気候変動に対する考え方は矛盾している。トランプ大統領は昨年11月に気候変動を「大きなデマ」だと呼んだ。一方、トランプ大統領がエネルギー長官に指名したクリス・ライト氏は、米上院での指名承認公聴会で、気候変動は「解決すべき現実的かつ世界的な課題」との認識を示した。
なお、エクスペディアとブッキング・ドットコムからは回答がなかった。
※編集部注:この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(Skift)」から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
オリジナル記事: Trump May Again Pull Out of the Paris Climate Agreement: What Travel Businesses Say
著者:Darin Graham氏