日本政府観光局(JNTO)は、新型コロナウイルス収束を見据え、インバウンド需要の変化を確認する目的で、「訪日旅行市場における新型コロナ感染症の影響と需要回復局面の旅行者ニーズと志向に関する調査」をオンラインで実施した。主要21市場のうち台湾、香港、英国、豪州の過去3年間(5年間)に海外旅行を実施した者を対象に、需要回復をリードする旅行者層や需要回復の契機、旅行者の志向の変化、旅行に求められる情報の内容などをまとめた。
需要回復のスピードについては、調査結果から、海外旅行の再開意欲は感染収束状況とは無関係であることが分かった。また、コロナに対する危険性認識が高い市場は、海外旅行の再開に慎重。台湾と香港では、台湾の方が危険性認識が高く調査時点における海外旅行検討中の比率は低く、豪州と英国では、豪州の方が危険性認識が強く海外旅行検討中の比率は低い結果となった。
訪日旅行再開に関しては、台湾と香港では5割以上が2021年中の訪日旅行を希望しているのに対し、英国と豪州では5割近くが2022年以降と回答するなど、短距離の方が旅行回復のほうが早いとみられるとしている。
訪日リピーターの多い市場で頻度低下の恐れ
需要回復をリードする層については、いずれの市場においても旅行中における新型コロナ感染に対する危険性の認識と海外旅行の再開時期との間にはっきりした相関関係が見られる結果となった。一方、年代別と収入別では、各市場とも相関は見られなかった。
また、各市場とも訪日経験者の方が未経験者より積極的だが、訪日経験者の比率が高い市場ではリピーターの訪日頻度が低下する恐れがあることも分かった。たとえば、台湾では「今までよりも減る」が51.9%、香港でも28.2%にのぼった。
需要回復の契機については、いずれの市場でも「治療薬の発見」「治療法の向上」「ワクチン接種」が上位で、入国時や帰国時の隔離措置の解除よりも多い回答となった。
旅行トレンドの変化については、ウィズコロナでも海外旅行に対する訴求コンテンツに大きな変化は見られなかった。求める情報では、いずれの市場においても必要とされる情報の上位は感染症対策の状況や感染者数の統計情報でいる一方、現地情報も必要とされていることから、旅行中の様々な懸念に対応した情報がセッ トで求められていることが分かった。
また、情報源については、コロナ前の上位は「知人・友人などの情報」「トリップアドバイザーなどの口コミサイト」などだったが、コロナ禍では「旅行先・居住国政府のホームページ」が上位を占める結果となった。