日本ユニシスが航空券の新規格「NDC」レベル4を取得した理由を聞いてきた、旅行業界の商材流通サービスの基盤構築へ

ビジネスソリューションを開発・提供する日本ユニシス社が、2020年12月に国際航空運送協会(IATA)が推進する新流通規格NDCでレベル4の認証を取得した。この認証は、航空券流通の航空券と付帯運賃で網羅的な注文・一元管理に対応するもの。認証取得は、日本のITプロバイダーでは日本ユニシスが初めてだ。

同社にNDC認証取得の背景と、観光産業への取り組みの今後を聞いてきた。

「観光×デジタル」の加速で流通に変化

日本ユニシスは、従来から交通事業者や旅行会社など観光事業者向けに基幹システムを開発・提供してきた。そんななか、「ここ5年ほどで、観光×デジタルの流れが強まった」と同社公共第二事業部ビジネス2部企画グループ担当部長兼企画グループマネージャーの櫻井章博氏は振り返る。

同社では、観光産業向けの商材流通サービス基盤「Offer Links」の構築を加速させている。さまざまな観光関連事業者と旅行代理店、航空、鉄道、バスなどの販売事業者とをネットワーク化。ワンストップでシームレスなSaaS型マーケットプレイスを実現しようというものだ。櫻井氏は「観光は、これまでアナログの世界だったが、デジタルの力でユーザビリティが向上し、流通の形も変わってきた」と開発の背景を説明する。

NDCについては、従来から航空会社を顧客として持っていたため、数年前から注目していたという。同社公共第二事業部ビジネス2部企画グループ担当マネージャーの坂本博子氏は「エアラインがリテール化する流れがある。共通化した規格の上でさまざまな付加価値を加えるNDCの概念は時代に合ったもの」と話す。

同社は2019年からIATAの戦略的パートナーとなり、NDCの動きを追いかけてきた。昨年12月には、アイルランドのJR Technologies(JRT)が提供する航空・旅行業界向けプラットフォーム「Aerostream Full Retailing Platform」と接続することで、既存オーダーの再計算や変更、交換発行や払い戻しなどにも対応。これによって、上位規格レベル4を取得した。

今後は、商材流通サービス基盤「Offer Links」に組み込むことで、マーケットプレイスの価値をさらに高めていく計画だ。同社のNDCレベル4取得は、この流れの一環だという。

サプライヤー、セラー、旅行者それぞれにメリット

Offer LinksはBtoBtoCモデル。それぞれにデジタル時代に即したメリットがある。まず、サプライヤーである観光関連事業者は、他社の販売チャネルを活用することで、販売機会が増加。他社商品と合わせることで、これまで以上に顧客ニーズに応えるオファーをすることが可能になる。

販売事業者にとっては、自社商品と同じ導線で他社商品の販売が可能。自社商品を他社チャネルで販売することもできる。また、顧客ニーズに合わせて商品をマーチャンダイジングし、顧客にとって適切なタイミングでオファーすることができるほか、販売履歴から顧客の嗜好データも取得することも可能になる。販売事業者はOffer LinksとAPI連携することで自社のウェブサイト、モバイルアプリ、あるいはリアル店舗で顧客に販売することになる。

さらに、Offer Linksでは、地図、交通検索、天気などの外部サービスのインターフェイスとAPIで一元化。自社、他社の商材を問わず、注文・決済情報を一元的に管理する機能も提供する。

Offer Linksのサービス領域

一方、旅行者にとっては、旅行関連のサービスをワンストップかつシームレスに購入することができ、自分の好みに合った商品やバンドル商品をオファーしてもらえるメリットがある。

坂本氏は、Offer Linksの仕組みを「旅行のMaaSのようなもの」と説明する。旅程全体のマーチャンダイジングを点ではなく面でサポートするのが特徴だ。

日本市場に特化したマーケットプレイスに

日本ユニシスが狙うのは日本の観光業界に特化した流通マーケットプレイスの創出。「まずは日本のサプライヤーと連携し、日本の観光商材を集めていく。それを強みとしていきたい」と坂本氏。また、櫻井氏は「日本の販売事業者が規模拡大を望むのであれば、サポートしていく。日本の事業者を通じて、世界に出ていくこともありうるだろう」と将来を見据える。

現在のところ、さまざまなサプライヤーと販売事業者とをつなげている段階。同社では、このシステムに地域の観光事業者を巻き込むことで、地方創生にも貢献していきたい考えだ。

デジタル・トランスフォーメーション(DX)の必要性が高まっている中、「デジタルに力を入れる企業や地域は増えている。コロナ禍で観光業界は厳しい状況が続いているが、デジタルの力で必ず需要は戻ってくる」と櫻井氏。Offer Linksの正式リリースは今年3月頃の予定だ。

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